映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年06月20日

『Kerouac −ケルアックに何が起こったのか?−』と『ポール・ボウルズの告白 シェルタリング・スカイを書いた男』

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WHAT HAPPENED TO KERUAC?

ビートジェネレーションであり『路上』の作者であるジャック・ケルアックについて当時の仲間たちから語ってもらう、というドキュメンタリー。
私の目的は『Kill Your Darlings』でビートニクのミューズ的存在だったというルシアン・カーについて少しでも語られることがないだろうか、というものだったのだが、残念ながら彼についての言及はなかった。ただ途中で朗読されるケルアックの詩の一節に「ルシアンのテーマ」というのがあって、前後に関連するものもないのだがルシアン・カーのことを言ったのだろうか。

さて本作はケルアックについて語ったものであるが、写真を観ても判るが何と言っても若くてハンサムな天才ということで物凄い人気者であり、ファンの女性は皆彼と寝たがりその希望はかなり叶えられるものだったらしいが一方ではそんな彼に対し激しい批判があったということだが彼の生き様や小説の内容からは当然そうなってしまう運命だったのだろう。だがそういったことが(急激な人気と恐ろしいバッシング)が彼をアルコール依存症にしてしまい、精神を歪めてしまったようだ。
無論この映像の中にはコロンビア大学で彼に惚れこんでしまったアレン・ギンズバーグ(『バロウズの妻』で観た彼に酷似していたのは面白かった。ここでも彼が一番まともで知性と人間性があるように思える)や彼らの大先輩であるW・バロウズ御大が登場してケルアックを思い出す。
ケルアックと衝撃的な出会いをして友人となり『路上』の主人公ディーン・モリアーティのモデルともいうべきニール・キャサディの映像もある。彼ら二人は何故かとても似ているのだが、ケルアックはニールの破天荒さに憧れ、ニールはケルアックの育ちのよさや学歴に憧れていたらしい。

ビート作家のギンズバーグやバロウズはゲイでありその周りには同性愛者が多かったのだがケルアックは彼らの仲間であるがゲイではなかった。
また自由な生き方をしたと思えるケルアックだがカソリックの家庭で生まれ育ったために考え方は結構厳格であったらしい。
晩年(と言っても47歳没での晩年)の映像の彼はかなりエキセントリックで危険な感じに思えて痛々しい気もする。
私は昔『路上』をとりあえず読んだものだが、広大な大陸を何度も横断するという行為に日本では体験できない恐ろしい何かを感じはしたが物語自体に心酔するということはなく終わってしまった。
バロウズもまたしかりでゲイであり、麻薬に溺れ放浪する、という生き方にある憧れのようなものは抱いても作品そのものに惚れこむことはなかったのだった。
それでも彼らに奇妙な思慕、自分もそんな仲間であってみたいという気持ちだけはあったのだから変ものだと思う。

仏教が彼らの間では非常に流行っていたらしい。

監督:リチャード・ラーナー ルイス・マクアダムス
1985年 / アメリカ

もう一つは『ポール・ボウルズの告白』
あの『シェルタリングスカイ』の作者で音楽家でもありタンジールに住み続けた人なのだが、この方のことは最近まで名前もよく覚えてなかったのだった。
ビート作家というわけではないがゲイであったこともあり麻薬や買春(男性の)を謳歌できた(?)タンジールに居を構えていたことで(という話であって今どうなのかは知らないが)バロウズやギンズバーグ、カポーティやテネシー・ウィリアムズも訪れていたらしい。なんともゲイの世界。
こちらではまあギンズバーグのコメントを少し聞いたくらい。アメリカでは手に入らない麻薬を楽しめたが買春のほうは上手くいかなかった(と言っていた)

というわけでルシアン・カーの名前を聞くことはできなかったが、確かに酷く心惹かれる世界である。
ビートには女性があまり絡んでないのだがそれは女性だとすぐ精神病院に入れられてしまったからだという。困ったもんだ。

LET IT COME DOWN.jpg
LET IT COME DOWN:THE LIFE OF PAUL BOWLES
1998年 / カナダ

ところでこのドキュメンタリーとは全く関係ないのだが、ビート作家たちの集団とルシアン・カーという美青年のことを考えていたら、突然なんとなく司馬遼太郎『前髪の惣三郎』を思い出してしまった。大島渚監督が『御法度』と言う映画にした短編小説である。
別に惣三郎が新撰組を引き合わせたわけではないからさほど状況が似ているわけではないし、男ばかりの集団に性的魅力のある美青年が入り込んでしまうなら色んな場所でそういうエピソードはあるのかもしれない。ただ一つの時代を作った若者たちの集団に入り込んだ美男に触発され刃傷沙汰が起きてしまった、という物語の相似に興味を持っただけである。
映画『御法度』では今素晴らしい役者になった松田龍平がその役で彼に恋する剣士を浅野忠信が演じていたのだからこんな美味しい配役もないのだが。
この話は司馬氏のフィクションなのだろうが当時の新撰組ではかなり男色が盛んだったと言うし、近藤や土方などその気がない(本当か?)者まで色香に惑わす惣三郎の美貌と実在したルシアン・カーを重ねて考えるのもおかしいことなのだろうけど。


posted by フェイユイ at 23:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ビートニク関連の映像も色々あるんですね。
なんか寝ぼけたようなコメントで済みません、ゲイ、麻薬、売春という字ヅラを読んで連想してしまいました・・・・売春夫役のベン・・・ってちょっと観たくなりません?

映画の「御法度」は観ていないのですが、ずいぶん昔に「前髪の惣三郎」を読んだ事があります。男ばかりの集団に性的魅力のある美青年ってなんてそそる題材だ。
ところで女性で男性同性愛ものが好きだという人は結構な数がいるように思いますが、男性がレズビアンに寄せる思い(ヘンな言い方)とは明らかに方向が違う感じがしますね

 
Posted by ふぇでり子 at 2009年06月22日 00:50
探せばまた色々とあるのでしょうね。

ベンが演じるのならなんでもいい。なんて言うと投げやりみたいですが本気でそう思います。売春夫役って実はあんまり逆にそそらないんですがベンが演じたら何か他の人とは違うような気がしますね。

『御法度』なかなか味のある作品です。

ビアン映画ももっと作られていいのでは、と思うんですが映画監督ってまだ殆ど男ですからどうしても深く入り込んだ作品にならないのでしょう。
男同士のほうはゲイ男性だけでなく女性の支持が強いから結構作れるのかも。
『ブロークバックマウンテン』監督アン・リーも「日本女性のファンが多いから」とおっしゃってた。見破られてました^^;
Posted by フェイユイ at 2009年06月23日 00:27
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