映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年06月30日

『神に選ばれし無敵の男』ヴェルナー・ヘルツォーク

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Herzog

この映画はタイトル的にとても気になっていたのに何故先延ばしにしてしまったのか、本当に悔やまれる。
と言ってもこんないい作品がまだ未観であったというのも嬉しいことではある。他にもまだまだ早く観とけばよかったというのがある、と期待できるからだ。

とにかく面白い、いい作品だった。映画というのはこういう風にリアリティのある落ち着いた物語でありながら謎と不思議を含んでいるものであって欲しい。そういう欲求を満たしてくれる上質な映画なのである。実話でありながら童話のように感じられる味わいがとても素晴らしいのだ。
実在の人物を題材にしているわけなのだがナチスドイツが台頭してくる前夜という時代背景も興味深いし、何といっても主人公ジシェとハヌッセンの対照的な位置づけに惹きつけられる。

ベルリンで「オカルトの館」を経営するハヌッセンと言う男は実はユダヤ人でありながらドイツ人であると装いしかもナチスの「オカルト相」に任ぜられることを望んでヒットラーらの占いをし勝利を収めると予言するのだ。細身の男でありながらナチス軍人たちを牛耳っているかのような堂々とした立ち居振る舞いをしいつも華麗であることに誇りをもっているが、同じチェコ出身のピアニスト女性にはサディステッィクなまでの暴力をふるう謎の男であり狡猾な男である。
一方のジシェはポーランドの田舎町で父親と鍛冶屋をしているユダヤ人である。彼はユダヤ人であることをナチスの前ですら隠そうとはしない。人前で話すことが苦手な純朴な青年であり誰にも負けない怪力と見事な肉体を持つ。
ユダヤ、と言えばイメージするのはハヌッセン的な人物かもしれない。利口で金儲けに長けていてきちんとした服装の男である。ジシェのような怪力男がユダヤ人だというのはピンとこなかったのだがなるほど「サムソンとデリラ」のサムソンを思い起こさす男だったのだ。

冒頭でジシェが自慢にしている利口な弟が兄に聞かせる話がある。海辺の岩礁にびっしりとうごめく蟹の中をジシェが弟ベンジャミンを抱えて歩いていく。そしてベンジャミンは兄の手を離れて空へと舞い上がる。
ジシェが現代のサムソンであるということ、彼が己の脚にくぎを打ちつけて死んでしまうこと。様々な暗示が込められているのだ。

狡猾な悪の男ハヌッセンは俳優ティム・ロスが素晴らしい演技を見せているが善良な大男ジシェを演じるのは素人であるヨウコ・アホラである。その筋肉にも見惚れるが印象的な純朴さは彼でなければ表現できないものだったのだろう。小さな弟ベンジャミンとの兄弟愛にも打たれるのだが、いつも神を信じて行動するジシェの純粋さに心惹かれるのである。

ヘルツォーク作品は短編を除けば今回が初めてだった。この作品は申し分なく大好きな作品になった。


俳優としては素人のヨウコ・アホラの魅力は掛け替えのないものだ。
DVDの表紙絵が彼だったらもっと早く観たかもしれないのだが(笑)
と言っても今回みるきっかけになったのはウド・キアーが出演していたからなのだが。粋にこだわるドイツ貴族を演じていたが独特のハンサムぶりは健在だった。

監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 出演ティム・ロス ヨウコ・アホラ ウド・キアー
2002年ドイツ/イギリス


ラベル:歴史
posted by フェイユイ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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