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2009年07月07日

『セックス チェック 第二の性』増村保造

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久しぶりの増村保造監督作品。これは特に気になっていたのだけど主演の緒形拳さんが亡くなって借りにくくなったりとかして今になってしまった。増村保造作品はどれも衝撃的なものだがこれは特にタイトルからして過激なので胡散臭くも思えてしまうが昔TVで観たような気がしたのと山岸凉子のマンガ『キメィラ』を読んで繋がりを考えたのだが、こうして観てみると『キメィラ』のような話では全くなかったし昔観たような記憶も引き出されなかったのでさほど印象には残ってなかったようだ。

なにしろタイトルからして挑戦的だし内容的には増村監督作品としては当然だが性的な描写がとことん出てくる。
おまけにぱっと見、非常な女性差別のようにしか思えず、まだ18歳のひろ子を中年男性がいじりまわしているというのはどうにも気持ちのいい映像ではないではないか。
しかしこの中年男のむき出しのエゴといつもの奔放な女性ではないひろ子の姿は(少なくとも当時の)性のあり方と意識への滑稽なカリカチュアのように思えてくる。
つまりスプリンターはエゴイスティックであるべきだと信じ行動し続けた宮路と彼に振り回されたひろ子を憐れんでいながらどこか皮肉に笑っているように思えるからだ。
スプリンターは狼であるべきだと言って次々と女を手籠にしては捨てることを当然と思っている宮路は己がオリンピックに出場できなかった為にひろ子という女性に目を留め彼女をオリンピックでメダルを取るスプリンターに育てようと張り切り、彼女が少しでも男性に近づくよう服装、言葉も男らしく指導する。
が、ひろ子はセックスチェック(診察して性器や卵巣が完全か判断するというもの)で「女ではない」という宣告される。半陰陽だというのだ。
ショックを受けたコーチ宮路はこれまでの男性化計画を止め、今度は生殖器が未発達なひろ子を女性にするため、毎晩彼女を抱くのである。
果たして彼女に初潮が訪れ、女性証明書を手にすることができた。だがその後の陸上競技会でひろ子は平凡なタイムしか出せず、オリンピック出場の夢は消えた。
宮路は「すべてが無になり、一人の女性だけが残った」と笑う。

宮路の言動はいちいち気に障ることばかりなのだが、これらの考え方・行動が当時当然としてあったものなのだろう。
私はスポーツ選手の世界にはまったく無縁だったのでそういう世界の内情は知らないのだが、先日ある有名な男女のスポーツ選手同士が恋人だという噂が立ち、あるスポーツ関係者が「男性選手は恋をすると伸びるが、女性は駄目になるからやめた方がいい」というコメントをしたのを聞いて今頃まだそういうことを言っている人がいるのかと驚いた。その女性選手は今も駄目にはならずむしろ男性選手のほうがやや下降気味になっているようだが(頑張って欲しいが)そういう「女性はこういうものだ」という奇妙な論理がまかり通ってしまう世界なのだろう。
無論私はスポーツ理論が判るわけではないから多くの選手を見てきた人にはそれなりの定義があるのだろうが、今多くの女性選手が恋もし、結婚し、出産しても駄目にはならずトップに存在しているのが実現しているのだから決めつけることもないだろう。

それてしまったが、宮路は最後まで「女性は云々」と言っていてどうも腹立たしい。が、結局は彼のエゴは崩されてしまったわけだ。
最後の最後で「俺はもう狼じゃなく一人の女を守る犬だ」という宮路は却ってもう憑きものが落ちたかのようにさっぱりしている。

ひろ子がいつもの増村映画の女性のように奔放じゃなく性にこだわり過ぎているのが嫌でもあるし、緒形拳演じる男性の性が匂い立つような宮路にも少々辟易はしてもやはり増村保造監督は恐ろしいとこをさらけ出してしまう作家なのだった。
いつものように尺も短くしかもテンポがいいので観やすいことはこの上なし。
緒形拳さんは筋肉が見事である。しかしこの撮影疲れたろうな。

監督:増村保造 出演:大楠道代 緒形拳 小川真由美 滝田裕介
1968年日本


ラベル:増村保造
posted by フェイユイ at 22:58| Comment(0) | TrackBack(1) | 増村保造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「セックス・チェック 第二の性」 Gyao
Excerpt: 今から41年前1968年の増村保造監督(故人)の映画。題名からは伝わりにくいがスポーツものです。単にスポ根というより、オリンピックを逃した100mスプリンターがその後やけっぱちでどうしようもなく生きて..
Weblog: しぇんて的風来坊ブログ
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