映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年07月20日

『チェ 28歳の革命』 スティーブン・ソダーバーグ

CHE-poster.jpg
Che: Part One

チェ・ゲバラ。やたらと革命家のアイコンとして男たちのTシャツやら応援団の旗印になってしまう。そのルックスがあまりにカッコよくてよく知らなくても何だか自分まで男前になってしまうように感じさせてくれる男なのである(自分が男だったらね)

そういうんでいっちょどんな奴か見たろかと言うんでこれだけをいきなり観て感動できた人は結構脳細胞が発達してるんじゃなかろうか。やはりこれはある程度予習を必要とする映画なのだと思う。

という自分も偉そうに言える知識を持っているわけでもないのでまあ微々たる在庫のみで話を進めていくのだが。
つまりこの映画は教科書ではないので一々当時のキューバ情勢がどのようなものだったかを説明してくれるのを期待してはいけない。映画というのは一つの物語を描くものであり、ここで描かれるのは無論チェ・ゲバラその人の物語なのである。
書いてるだけで冷や汗だが、そんな話であった。

と言ってもよーく聞いていればきちっとキューバがどういう状況に置かれているのか、ゲバラがどういう人物なのかは説明されているのだけどね。その辺を映画でばーっと言われてすぐ飲み込める人は凄いのではないだろうか。
まずアルゼンチン人であるゲバラが何故キューバ革命の立役者になってるのか、何故最は兵士の怪我の手当てやらに追われているのか、その辺を知りたかったらまずは『モーターサイクルダイアリーズ』を観てみたら凄くよく判る。(などと言わなくともこれの予習でこの映画を観た人はかなりいそうだ)
というか私自身は『モーターサイクルダイアリーズ』を観たからこそ本作を観てるのである。

さて余談が長くなる。
このブログの前の奴『藍空』は映画『藍宇』からタイトルをいただいたんだがこの『藍空放浪記』はタイトルは違うが(漢字が好きなのだ)『モーターサイクルダイアリーズ』がイメージなのである。あの映画を観た時からその物語と南米の大地をバイクで(途中でぽしゃるが)旅する二人の若者(まだ革命家になる前のゲバラと年上の友人)のイメージにぞっこん惚れてしまった私は『放浪』に憧れてしまった。その旅の中でゲバラは自然の脅威を知り、南米の大地のあちこちで圧政と貧困に苦しむ民衆を知る。元々アルゼンチンの裕福な家の育ちであり医学生だった彼は同じような境遇の年上の親友とともに南米をおんぼろバイクで旅する。そして南米の現実を知り、民衆が一部の資産家の圧政に苦しみ貧困から逃れられないことを知る。そしてまた彼らを苦しめるのはアメリカの巨大な資本主義が関わっているのだ。
キューバにおけるバチスタ政権はアメリカ政府と強く結び付きそのことによって民衆は貧困にあえぐことになる。
『モーターサイクルダイアリーズ』で自分の進むべき道を見つけたゲバラがカストロの要請を受けるのは当然の成り行きだったのだろう。
そしてこの先が本作の物語になっている。

映像のほとんどは華々しい銃撃戦などではなくゲバラの人となりを描いたもの、革命というものがかっこいい戦いの場面などは僅かで泥の上で眠る自然との闘い、または居眠りの許されない見張り番、または隊内でのいざこざ、裏切り、一般人への強奪やレイプなど道に外れた行いをする者への処罰など本来の目的とは離れた問題を一つ一つ解決していかねばならないのだ。そしてまた貧困のせいで勉強をしてない者たちへの読み書き算数までゲバラは細かく気を配っていくのだ。
またモノクロームでゲバラのもう一つの面(アメリカとの対話、という枠組みなのだろうか)が描かれる。泥と血にまみれた革命家のゲバラではなく一人の政治家として国際的に発言するゲバラである。
国際会議場で「アメリカは南米に対しまったく非道なことはしていない」と発言するアメリカ人に肩をすくめるゲバラがいる。
そしてインタビューで「革命とは何か」と問われ「愛だ」と答える。
これはかなりあやふやな言葉なのでぽかんとされてしまいそうだ。それこそ彼が何のために誰の為に戦っているのか、何故銃を持つだけでなく読み書き算数が必要だと兵士一人にも心を砕いているのか、どうして喘息の体で過酷な自然の中を歩き続け戦い続けているのか、この映画で説明されていない部分を(あの映画でもいいから)知らなければいけないのだ。

作品の最後で革命に成功した勝利した、と言わんばかりに浮かれて勘違いした男が真っ赤なスポーツカーを政府軍から盗んで走り去ろうとするのをゲバラが見咎め「返して来い」と叱りつける。随分へんてこな場面で第一部が終わっっているのだが、実際ゲバラはなかなか思い通りにはいかなかったようである。彼を知りたくて若干本をかじったりはしたのだが現実に政治や人間を動かすのは難しいものなのだ。彼があまりに勤勉だと煙たがるというのも当地の人間性の問題もあるわけで。
それはやはり人々の気質というものもあり、ゲバラのように(彼は南米人としては珍しいのか?)実直で勤勉な性格の者ばかりではなかったのだろう。
こういう人々をまとめていくのだから頭が痛いがそここそがゲバラの凄さだったのかもしれない。
びしっと厳しいが大らかな優しさも併せ持つ。「革命は人を愛すること」という言葉を彼こそは体現していたのだろう。

チェ・ゲバラを『モーターサイクルダイアリーズ』ではガエル・ガルシア・ベルナルが素晴らしい美貌で魅了してくれた。
本作ではベニチオ・デル・トロ。なるほど小柄なガエルが演じるにはここだけは足りなかった、本当のゲバラはすらりしているでその点は納得である。顔の方はなんといっても本人が他にないほどの二枚目なのでビニチオさんも苦労なされたろう。なかなかイメージ的には近い気がするがとにかく当人がカッコよすぎなので仕方あるまい。私としてはとてもうまく演じられていたと思う。

チェ・ゲバラ、キューバ革命という題材は是非アメリカ人に観てもらいたいものなのだが^^;これは珍しくスペイン語そのままでやってるわけなんだけどアメリカ人だと英語でないと観ないような。アメリカでは吹き替えにするのかな。余計なお世話か。

監督:スティーブン・ソダーバーグ 出演:ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンティアゴ・カブレラ、エルビラ・ミンゲス、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ、ジュリア・オーモンド
2008年スペイン・フランス・アメリカ


ラベル:革命 歴史
posted by フェイユイ at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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