映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年08月05日

『リプリー』アンソニー・ミンゲラ

The%20Talented%20MR_Ripley[1999].jpg
The Talented Mr. Ripley

何だか急に観たくなってしまったんですよねえ。忘れっぽい私が殆ど覚えているほど見返してるんですが。

この映画で特に好きなのはむしろ女性二人。こういう男性主体の映画だと女性の役っていうのは付け合わせ的になってしまいそうだが、本作は女性の役がとても効果的に使われながら人間的な魅力と存在感があるのがいい。グゥイネス・パルトロウのマージとケイト・ブランシェットのメレディス。特にメレディスは脇役にも拘らず時折思い出しては観たくなるのが不思議なのだが。
勿論男性陣も文句なしでマット・デイモンはカッコ悪い側面と頭がよく感受性が豊かで非常に美しく見える側面を上手く出しているし、気まぐれでちょっと馬鹿なお坊ちゃんをジュード・ロウの美貌でこの上なく素敵なトムが憧れるに足る男性像として表現している。そして強烈な印象のフレディを演じたフィリップ・シーモア・ホフマン。最初観た時なんかはあまりに彼が憎らしくて騙してるのはトムなのに早く彼を殺さねば、という気持ちになってしまったが、観る者をそういう気持ちにさせるのは監督の狙いとホフマンの技ということなんだろう。
ディッキーのパパのジェームズ・レブホーンがまたよくて、放蕩息子を甘やかして自分はよく判っていると思い込んでしまっているのが金持ちらしい。
そして後半登場するピーター役のジャック・デヴェンポート。
トムがディッキーに対して抱いた同性愛の想いは彼の冷酷な気まぐれさが引き寄せたあげく踏みにじられてしまうが、ピーターはトムを愛し、トムもまたピーターに惹かれていくにも関わらずトムは結局保身のために彼を殺すことになる。

こんなに上手く物事が進むものか。神がこんな悪戯をするわけはないから悪魔がトムを手玉に取って楽しんでいるとしか思えない。上手くいけばいくほど彼は泥沼から抜け出られない。彼の言い方で表現すれば地下室のさらに奥の奥に彼は隠れ続けることになるのだ。

私がこの映画を何度も観たくなるのは出演者たちの素晴らしさとサスペンスミステリーの巧妙さもだが、無論ディッキーの贅沢な暮らしぶりのせいなんだろう。贅沢というと極端に馬鹿騒ぎをさせたりするのは幻滅で低俗すぎる。ディッキーの暮らしぶりというのがなんともお洒落でこじんまりとした家だとか、でも服や家具は洗練されていてマージのような本物のお嬢様な恋人と気ままに毎日を送っている感じがとてもよくてトムでなくとも入れ替わりたくなるというものだ。
前半のイタリアの小さな街の3人の生活はやがて来る破綻を感じさせながら楽しげだ。この上なく羨ましいディッキーよりトムは才能に恵まれている。だがディッキーの身の上は望んでも手に入らない、はずのもの。
トムはディッキーを殺害後ホテルのフロントから「グリーンリーフ様ですね」と呼ばれはっとする。だが彼と出会う前からトムはメレディスと言う女性に自分はグリーンリーフだと言っている。その時、いやその前、父親のグリーンリーフ氏がトムをプリンストン大学卒業生だと間違えディッキーの友人だと誤解した時からもうトムは自分を偽っている。
彼は最初からディッキーの物まねをしようと企んでいた。単に憧れていただけなのだろうがその物まねの才能が彼を逃れることのできない犯罪の迷路の中に連れ込んでしまう。

マット・デイモン自身この役をやった時はまだ実績もそれほど積み重ねていない時期だったので実にやりがいのある配役だったのではないだろうか。

監督:アンソニー・ミンゲラ 出演:マット・デイモン ジュード・ロウ グウィネス・パルトロー ケイト・ブランシェット フィリップ・シーモア・ホフマン ジャック・ダベンポート ジェームズ・レブホーン セルジオ・ルビーニ フィリップ・ベイカー・ホール
1999年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:10| Comment(9) | TrackBack(0) | マット・デイモン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ベンはこの「リプリー」の原作者パトリシア・ハイスミスのファンだそうですよ。
私はまだ本を読んだことはないのですが、演技者として心理描写など興味深いものがあるのかなと思いました。
Posted by ふぇでり子 at 2009年08月06日 20:33
そうなんですね!!!ベンはミステリー好きだと思うのです。
というか、グルヌイユのインタビューで「グルヌイユが女性の匂いを嗅いで、普通ならここで恋をするのだけど、そうじゃなくてすぐ猟奇的な行動をとるのが好き」とか言ってたと思うんですがそれを聞いた時「同じ世界の住人だ!」と思いました。
『パフューム』は芸術的というよりミステリーの雰囲気が強いのが好きなんですよねー。

ベンは、犯罪者、とかきっと興味がありますよね。
私はこの原作だけしか知りませんが、もっと読もうかな。
彼女の作品は物凄くたくさん映画化されてますが、ミステリー好きとしてはその辺やって欲しいです!
Posted by フェイユイ at 2009年08月07日 00:44
私もベンがファンだということを知り、私も彼女の小説を少しづつ読破していきたいなと思っていたところです

パトリシア・ハイスミスってクセのある性格ゆえ人づきあいがあんまり上手じゃなかったり、アル中でしかもレズビアンだったという本人そのものが面白そうな人で、ベンもそのあたりを含めて、心理描写巧みな彼女のサスペンスのファンなのではないかなと思ったりして。

彼女のポートレート写真って、女性でもゾクッとするものがあります…。
Posted by はーや at 2009年08月07日 05:51
処女作がビアンものでしたね。リプリーはゲイだし。

パトリシアを主人公にした映画でなんか男性が絡んできてミステリーのような作品を誰か作ってくれないものか。無論ベンがその男性役で。じゃなくてその男性が主人公で変人な小説家パトリシアのところへ行って彼女の小説と現実が交錯していくような物語が、いいか。どこまでが現実で幻想の世界かわからんみたいな。結局その男もパトリシアの想像だったとか。もうひとひねり欲しいかな。
そういうの好きなんですけど(笑)
Posted by フェイユイ at 2009年08月07日 09:06
私も読んでみようと思って彼女の事を調べてみました。これがなかなかベンの好みが伺い知れそうで興味深いです。

「パトリシア・ハイスミスは精神病質者やストーカー心理などに材をとったサスペンスを書かせると天下一品で現在の精神異常者の犯罪小説の始祖とも言える存在。

ヨーロッパでは絶大な人気を誇るが、彼女の描く狂気が不評で本国アメリカではまったく受け入れられなかった。
そのためか、生涯の殆どをヨーロッパで、そして晩年はスイスの山中でネコとひっそり暮らしていた。
彼女は別名クレア・モーガンで同性愛物もの著作がある。」

うーむ、ちなみにハイスミス著作のうちのベンの一番のお気に入りは「ふくろうの叫び」という本なのだそうです。
Posted by ふぇでり子 at 2009年08月07日 21:01
猫とひっそり暮らす、なんてベンも将来そういう生活したいと思ってそう。

お、そうですか。著作紹介の文を読んでるとどれも面白そうです。なぜかハイスミスさんとは縁がなかったんですよねー。ミステリーばっかり読んでたのに???
でも今から読む楽しみができてよかったかも(笑)
Posted by フェイユイ at 2009年08月08日 00:30
『ふくろうの叫び』…ベンの一番のお気に入りですか…。二度目の映画化で今年公開予定だかになってるような。

フェイユイさんの映画の筋書き、なんだか妄想がフツフツと…。パトリシア自身がなんとも面白そうな人なので、PJ Harvey同様、ベンも彼女になってみたーい!なんて願望があるんじゃないでしょうか?自宅を猫屋敷にしちゃったこともあるし。

ベンのお陰で、読み物やら鑑賞ものが次から次へと忙しいですねー。ところで、キーツハウス修復終わって再開になり、イギリスは映画公開に向けて盛り上がっていくのかなー。

日本でも公開が決まったようですね。でも、先日たまたま見た日本版FIGAROの映画情報で(カンヌの時の情報だったか)Bright Star出演者たちという名目の写真が全然違っててショック!確かに、若い男優&監督風女性&女優が写ってはいましたが。ただでさえ、露出度が少ないベンなのに、あんなところでも間違い写真使われてぇええ。見てろよーって感じですね。

Posted by はーや at 2009年08月08日 08:20
日本でも公開が決まったんですか、知らなかった!
久々の日本公開ですね。この勢いでテンペストやkill yourも公開してくれないかな。
Posted by ふぇでり子 at 2009年08月08日 21:07
>はーやさん
彼女になりたい、というのいいですね。ラスト、ベンが女装していつのまにかハイスミスさんになりきってしまってる(同化してしまったんですね、『サイコ』みたいに)というのもいいです(何決めてるんだか^^;)
『ブライトスター』日本公開決まったのですか?
ベンが違う写真になってたというの悔しいですね。でも『VOW』って雑誌観てると結構有名人でも間違えられているみたいなんで(慰めになりませんね?)

>ふぇでり子さん
私みたいなDVD鑑賞のみの人間はDVD化だけを心配してますがそれでもやっぱり公開されるかどうかはその映画関係者の認知度に関わります=DVD化に関わるのですよね。
『情愛と友情』の認知度ってどのくらいなのか。レンタルもあまりされてなかったような。勿体ない〜。


Posted by フェイユイ at 2009年08月09日 01:14
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。