映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年08月13日

『1999年の夏休み』金子修介

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この映画が作られたことを知った時、萩尾望都の名作である『トーマの心臓』が原作だと聞いて「あり得ない」とあきれたがさらに登場人物を少女たちが演じると判りはっきり幻滅したのだが、気持ちを入れ替え観てみることにした。しかしもう20年以上たっているのだなあ。

脚本は岸田理生。なるほどこれは判る。監督は金子修介。多分この当時この名前を聞いてても「?」だったのだろうが今では納得。『デスノート the Last name』の監督でもあり他にもマンガを原作の映画化をしている方なわけなのだ。

一体あんな舞台がドイツの学校ものをどうやって映画化するのか、と思ったらタイトル通り夏休みなわけで学校に残った3人ないし4人が体験する日本の物語になっていたのでこれは上手いなと思ったのだった。
無理があるとは思うが夏休みの学校寮内で食事の用意も自分たちでする、というので登場人物は彼ら4人だけである。大人や男性が出てきたら少女が扮した少年とのバランスが悪いだろうし、多分予算上のことだろうが変な者を出さず主要人物だけでやった方が判りやすいし独特な効果もある。
女性がやってるということでかなり馬鹿にしていたのだが実際観てみると少女とはいえきっちり男の子らしく髪を短くしていたのでそれでもちょっと驚いた。もっと女女したものだと思っていたのだ。少女たちも悪と自然に男の子らしくふるまっててずっと観てると少女だとか少年だとかそういうのはどうでもいいような気もしてきた。
年少組が上手くてどちらもとてもいい雰囲気がある。特に深津絵里はさすがに後で人気女優になるだけあってこれを観てても断トツに存在感があってうまい。彼女が演じたのは私的には原作の名前の方が判りやすいのだがアンテ役で可愛いけどちょっとひねくれたとこのある少年役を印象的に演じている。他の3人とはかなりの違いを感じさせる。アンテの役がいいのかやはり彼女がうまいのか。絡みあう3人から阻害された感のある少年という役どころは普通なら一番損みたいなのに上手い演じ手というのは違うものなのだ。
トーマ&エーリク役の宮島依里もちょっとたれ目な感じが少年ぽくてよかった。
年長組はそれに比べるとさすがに女性ぽさが出るのかややぽてっとした感じになってしまうのだ。しかも声は吹き替えであるという事実にも驚いた。
アンテとエーリク役の二人の演技が際立って差異を感じるのに上の二人は顔は違うのにどちらがどちらかよく判らなくてこれは演出の責任でもあるだろうが原作とは違うとはいえ、怜悧な感じのするユーリ役と大人びた優しさを持つオスカーの性格と外見の違いをもっと明確にしたらより面白かったのに、と思ってしまう。

『トーマの心臓』を翻案にしているとはいえ内容が全く違うものになっているのも正解だろう。
それにしても萩尾望都氏のマンガを読み返すとその画力の凄さに(判り過ぎるほど判っているのだが)やはり驚いてしまう。マンガ自体が映画そのもの、というより映画の技術を越えている。映画でもここまで演出に凝りに凝ったものはそうないだろうし。ユーリが夜中にトーマがそこにいると言いだし、発作を起こしてオスカーが人工呼吸する一連のシークエンスは奇跡みたいな出来栄えで、そのまま映画化するのは至難なのだろう。その後のアンテにキスするシーンは再現してなかったし。

さらにこの1999年はなにやら近未来的に描かれているのも不思議な光景である。

同監督自身その後もマンガ原作を映画化されているわけだが、ハリウッドもまたマンガ原作が目白押しである。私自身はマンガというすでに完成された具象世界をさらに人間でやることにそれほど興味が持てない、というのが本音なのだが、時代的にはマンガ原作の映画化がますます増えていくのだろう。この映画は先駆的存在だったのかもしれないが。
それじゃあ、他にもやってもらいたい少女漫画もたんとあるよと言いたくなったりする気持ちもあるのだが。

監督:金子修介 出演:宮島依里 大寶智子  中野みゆき 深津絵里
1988年日本


ラベル:友情
posted by フェイユイ at 00:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トーマとは違ってキリスト教的な罪の意識や救いがあるわけではなく、和彦、直人、則夫の3人の他者あるいは愛に対する悩みややり取りは感傷的すぎる乙女の世界そのもので私には苦手意識があります。

ただそれははさておくと、このみずみずしく透明感ある怪異譚といった風情はとても好きなのです。
ファンの間では和彦と直人の年長者二人が人気ですね。
私は別に誰が好きとか考えなかったけれど、最後に観た時は生まれ変わり死に変わりして永遠に夏休みを生きているような悠もしくは薫という存在に惹かれました。

昔あったシナリオ雑誌に岸田理生の脚本第一稿が出ていたのですが、それにはまかないのおばさんと郵便配達員の出番が少しありました。比較対象がない4人のみにして正解だったと思います。

最近マンガが原作が多いのは力ある物語を書ける人が少ないのか、それとも最初からファンが居るものを使って安易に客入りを狙うのか・・・知りませんけど紙媒体、フィルム媒体だからこそ出来るという世界にこだわってくれた方が良いものが出来ると思うのですが・・。
Posted by ふぇでり子 at 2009年08月14日 00:02
変な言い方かもしれませんが、キリスト教を深く考えるでもないのにみせかけだけのかっこつけで扱ったりせずにこの作品の内容に変えたのはむしろ好感持ちました。
とはいえやはり物凄く甘い世界でほんと恐る恐る観てました(笑)
あれ、年長者が人気なんですか^^;あーそうか。完全に少年に見えるより少女っぽい少年なほうがいいということでしょうか?
薫が永遠にやってくる、てな感じに見えるのは面白かったですね。彼らは永遠にこの閉ざされた世界に4人だけで生きてるように思えるのはちょっと怖いですが。そう思うとホラーみたいですねこれ。

どうしてもマンガ原作って安易に思えますよね。これなんて原作の映画的手法を越えてないという・・・^^;
でも最近人気の出た映画ってマンガ原作ばかりでしょ。『鬼太郎』『ルーキーズ』『花男』などなど。ハリウッドもしかりですからねー。がっくりします。こういうこと嘆いてるのは年寄り、と言われそうな気もするんですが・・・。
Posted by フェイユイ at 2009年08月14日 01:23
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