映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年09月07日

『ボクと空と麦畑』リン・ラムジー

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Ratcatcher

子供の時ってなんだか悲しいこと失敗したこと怖かったことの繰り返しばかりみたいでそりゃあ楽しかったこともあるんだけどそういった影の部分のほうがより鮮明に記憶に残っている。
幸せなことにはここまでゴミがたまったことはないし、ネズミくんの姿は見ずにすんだが自分も狭い団地に住んでいて周りには同い年の子供たちがたくさんいて、すぐそばに川が(っていっていいのかちょうどこの映画くらいのやつ)あった子供時代だったのでこういう映画を観るとその頃に戻ってしまう。現在はぼおおとして昨日のこともよく覚えていないのだが、何故か年を取ると遠い昔のことのほうがはっきり覚えている気がするのは、多分繰り返し昔のことを思い出しているからなのだろうか。
自分もまたこの主人公の少年のように内省的でやせっぽちだったので余計に自分のことみたいに思えてしまうのだろうか。

この作品の主人公ジェイムズは男の子がよくやってしまいそうなちょっとしたことから友達を水死させてしまう。彼自身はそのことに気づいているが誰かにそれを言うことはできない。彼はその後も何度も繰り返しへまをやってしまう。彼がわざと引き起こそうとしているのではないのだが、どうしても何か事故だったりまずい失敗をやってしまう。
こういう失敗の記憶って何故消えてしまわないんだろう。いや勿論すっかり忘れているものの方が多いはずなのだが、特にまずい失敗は強く記憶に残ってしまうのだ。ぼんやりして夕食のおかずを焦がしたとか花瓶を割ってしまったとか塀の上をぼんやり(こればっか)歩いてて落っこちてしまったとかいい気になって自転車をこいでたらよそのおばさんにぶつかってしまったとかそんなものなのだが。
それにしても本当に自分はジェイムズがやってしまったような恐ろしい人身事故を引き起こさずに生きてきたんだろうか。まさか気づいていないだけではないのだろうか、と時々思うことがある。自分はそんな無茶な遊びはしてなかったんだから大丈夫だろうと自分に言い聞かすのだが。
自分の子供時代にも団地だったために3階から子供が落ちてしまう事故があった。自分の周りには危険がたくさんあるのだと思い知った。

また近所にケニーみたいな男の子もいて時々遊んだりした。

子供時代というのは一つの閉じられた空間のような気がする。
私はいつもそこではやせっぽちの無口な少女でいつまでもぼんやりと空想にふけったり虫をいじって遊んだりしている。世界は団地と小学校を含むごく小さな限られた範囲内で自分は大人になることもなく駄菓子を食べたり本を読んだり探検ごっこをして遊んだりするだけでいい。少しだけジェイムズより幸せだったかもしれない。
我が家も新しい家に移り住むことを願っていた。多分団地に住む者は皆同じなんだろう。
私の子供時代もまた新しい家に移り住むまでだった。

ジェイムズが酷く辛い気持でバスに乗り雨粒が降りしきる窓ガラスに顔をつける場面がせつない。
ゴミだらけのネズミが溢れる場所から離れ新しい家に住むのが自分願いなのに。再び訪れたその家は閉じられ彼を受け入れてはくれない。
またネズミの住むアパートへと戻った彼は川の中に入る。そこでジェイムズは家族と共に麦畑の中に建つ新しい家へと引っ越し、初めてにっこりと笑うのだ。

窓から麦畑が見えるのもジェイムズの幻想なのだろう。重く悲しい映画なのだが私には懐かしい時間を思い出させる作品だった。
冒頭のライアンがカーテンをぐるぐる自分に巻きつけるのもやったよね。

監督:リン・ラムジー 出演:トミー・フラナガン マンディー・マシューズ ウイリアム・イーディー リーアン・マレン ジョン・ミラー リン・ラムジー・ジュニア
1999年イギリス



ラベル:子供時代
posted by フェイユイ at 22:56| Comment(4) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
もう、ご覧になったのですねー。

ヒリヒリするような映像ですよね。でも美しい。私は、なんだかとても希望を持てる最後だったような気がするのです。
それは、ジェイムズ明るい未来を!と、思わずにいられなかった私の願望かな。
Posted by はーや at 2009年09月11日 07:34
これ、よかったですねー。後で女性監督だったと気づいてはっとしました。
この作品が監督自身の思い出なのかどうかは判りませんが、もし私が映画監督になったらこういう子供時代のアパートでの出来事、みたいなものを作りたいなあ、なんて思ってたので。凄く不思議な空間だと思うんですよねー、団地って。今はそういう場所に住んでないので余計ノスタルジックになってしまいます。
ラストは人によって受け止め方が違うように作られているのでしょうね。
私も明るい希望を感じたのですが。自分自身に重ねて観てしまったので絶対幸せになって欲しいです(笑)
Posted by フェイユイ at 2009年09月11日 09:12
後で調べたら、やはり監督自身の生い立ちも投影されているようで、希望を持って生きようというメッセージもこめられてるとのことです。なんだか、とっても繊細でたたみ込むうような丁寧な画像でしたよね。フェイユイさんの感想で色々思い出してきました。

彼女の作品で小説を題材にした映画「Morban モーバン」っていうのがあるのですが、これはタイトルにあるモーバンっていう女の子が(Samantha Morton扮する…私の好きな女優さんなんです)主人公の、奇妙でとても魅力のあるストーリーの映画もおすすめですよ。もう、ご覧になったでしょうか?
Posted by はーや at 2009年09月12日 04:16
はい!『モーバン』もしっかりレンタルするつもりです!
今のとこ観れるのはこの二つみたいです。

ところで10月にロンドン映画祭があるそうですね。
『 Bright Star』が上映されるみたいですね。はーやさんは観に行ったりされます?興味のある映画とか。
松山ケンイチ主演『カムイ外伝』が上映されるそうでそれの評価が気になったりしております^^;まだちょっと先ですが。
Posted by フェイユイ at 2009年09月12日 14:36
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