映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年09月12日

『按摩と女』清水宏

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先日TVでちらっと冒頭部分を観て都合で観れず仕舞いだったのがどうにも数分の映像が鮮明に思い出されやはり観てみることにした。
少し前に同監督の『みかへりの塔』と同じように淡々とした物語が際だった映像で描かれていく。わずか60分あまりの作品とは思えないほどゆったりとした趣のある映画なのだが、中身の濃い短編小説を読み終えた時のような満足感のある作品なのだ。

目の見えない按摩である主人公「徳さん」は「めくら」である自分は「めあき」である人々に負けてはいない、という強い自負心がある。山奥にある仕事場の宿屋へ行く途中もめあきの登山客を追い越しては自分の健脚と人数や東京から来た女だということを当てたりする勘の鋭さに絶対的な自信を持っているのだ。
そんな彼が東京から来た美しい女性の肩を揉み、ひそかな恋心を抱く。そんな折、持ち上がった宿屋での盗難事件。
徳さんは身を隠すように滞在している彼女が犯人だと見破り彼女を助けようと骨を折るのだが。

高峰三枝子演じる「東京から来た女」の美貌と謎めいた言動が物語をミステリアスに彩っていく。徳さんはめあきには到底判らない彼女の秘密を探り当てたという興奮に襲われている。
だがそれは徳さんの勘違いで彼女は囲われの身の女で旦那の元を逃げ出して身をひそめているのだった。
絶対的な自信を失いがっくりとしてしまう徳さん。
鋭い徳さんの勘も美しい女性の前で乱れてしまったのだろうか。甥っ子を連れた独身男も美女に心を翻弄されたまま東京へと帰っていく。
山奥の温泉場でひっそりとかわされた男女の恋物語とミステリーが不思議に奇妙な味わいのあるユーモアに満ちている。
目の見えない男性が恋に落ちて失敗してしまうという非常にブラックなコメディなのだ。
徳さんの気の強さと乾いた語り口がこのもしかしたらとても難しい題材を楽しい作品に仕上げているのだろう。

少し昔の日本の情緒溢れる景色も心を和ませてくれる。

監督:清水宏 出演:高峰三枝子 徳大寺伸 日守新一 佐分利信
1938年日本


posted by フェイユイ at 22:16| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『按摩と女』'38・日
Excerpt: あらすじ季節ごとに温泉場を渡り歩く、マッサージ師仲間の徳市と福市。健脚と勘の鋭さを誇る2人は、今日は健常者を何人歩いて追い越したと互いに自慢しあうのが日々の楽しみ。ある日、2人を追い越した馬車の中に美..
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Tracked: 2010-02-09 21:35
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