映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年09月15日

『モーヴァン』リン・ラムジー

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MORVERN CALLAR

いやもうほんとに毎日色んなタイプの映画が観れて幸せといったらないですね。
昨日観た『日蔭のふたり』は「物凄い不幸」のようでそれほど不幸じゃないんじゃないか、と書いたのだが今日の奴は不幸のようで物凄く幸運でしかも不幸なのだ。
これはやはり「昔の話」として離れて観てしまうのと現在を表現したものを観る、ということでも違ってくるだろうし、悲しみをはっきりと示していた『日蔭のふたり』に対して本作の主人公モーヴァンの表情のなさはどうだろう。彼女が幸せな気分でいるのか不幸なのか、じっと観ていてもあまりよく判らないし、もしかしたら彼女自身もよく判ってないのかもしれない。それこそが現代的な不幸なのかもしれないのだ。

しつこく比較していくととりあえず「ふたり」で「日蔭」していられた昨日の作品とは違いモーヴァンは一人っきりである。唐突に冒頭で愛する人を失ってしまう。しかも彼の死因は自殺。その上、意味はない、ときてる。
スーパーの店員で友達も少なく無口なモーヴァンにとって彼の存在は大切なものなのではなかったか。彼の死体に寄り添いその体をそっと撫でる彼女がその後に起こした行動は異常なものに違いない。何故彼女は彼の死を隠してしまったんだろうか。
彼はモーヴァンに銀行の預金を葬式代として託し、また自分の書いた小説を発表して欲しいと頼み、その小説は出版社で破格の金額で契約された。単なるスーパーの店員である彼女には望んでも手に入れることはできない大金が転がり込む。
とても喜ぶ表情を見せるがすぐにその笑顔は硬くなり本当に何を思っているのか判らなくなる。
確かに・・・映画では観客に判りやすいよう人物が感情をすぐ口に出したり泣いたりして見せるが実際は何を考えているか判らないものなのではないだろうか。モーヴァンのように気持ちを出さないタイプの人間は決して少ないわけではないだろう。

しかしなんて陰鬱な作品なんだろう。これに比べれば『日蔭のふたり』は随分明るい作品だった(なんだか物凄く叩きのめされる『日蔭のふたり』・・・)たった一人の親友として出てくるラナも彼女の理解者として描かれているわけでもなくモーヴァンは世界にたった一人きりで生きているような孤独感がある。そして彼女はこれからも誰からも理解されることなく生きていかねばならないんだろう。その重さを彼女は抱えて歩きだしていく。

男が死んで女友達と旅に出る、ということでイギリス版『テルマ&ルイーズ』のような展開かと思っていたらまったく違った。さすがイギリス。この出口のない暗闇はたまらんものがあります。モーヴァンという人物造型の根暗さも救われないものでありながら(というかあるからこそ)酷く惹きつけられてしまう。
母親を亡くした男のエピソードは一体何?死んでしまった彼のことかと思った。

ところで上に貼っているオレンジ色の写真のやつ。私はこれをずっとオレンジ色のチューリップに見えていてそう思いこんでたんだけど、今気づいたらサマンサの顔だったのね。なんでそう見えてたんだろ?

監督:リン・ラムジー 出演:サマンサ・モートン キャスリン・マクダーモット レイフ・パトリッ ク・バーチェル ダン・ケイダン キャロリン・コールダー デス・ハミルトン
2002年イギリス


ラベル:人生
posted by フェイユイ at 22:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そんなに暗い映画だったっけ?って、私の記憶がかなり曖昧であることに、またまた気がつきました(笑)。フェイユイさんに勧めておきながら…。

私にとっては、、視覚的・感覚的にずーっとひっかかってる映画には間違いないのですが…。また、観ないといけませんねー(笑)
Posted by はーや at 2009年09月16日 05:55
(笑)私もすぐ記憶が曖昧になってしまいます。えーこの映画が陰鬱だと思ったのは私の思い込みでしょうか(笑)昨日観たばかりですがもう記憶がうっすらと。

サマンサ・モートンの無表情さがそう思わせたのかもしれません。泣くのも笑うのもないような感情の起伏のなさは日本人的には共感しやすいものにも思えました。
もしかしたら同じストーリーでも仕上がりを明るくすることもできたような気がしますが、不思議な静けさが惹きつけられる作品でした。
Posted by フェイユイ at 2009年09月16日 22:41
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