映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年09月25日

『ブッシュ』オリバー・ストーン

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W.

えー偶然昨日に引き続きオリバー・ストーンである。偶然というのはこのDVDレンタル開始して間もないのにすでに在庫だらけ。一応希望が多いと見たのかやたら在庫数あるのに登録者の数は驚くほど少ないのだ。確かにやっと任期が終わってほっとしたのに何が嬉しくて2時間以上もジョージの顔を観ねばならんのか、という現れであるのか、もうすでにどうでもいい存在なのか。私としては続けて観れるのはよかったが、それでも物凄く嬉しいというわけではないし。

さて観通して印象的だったのは猛烈に食事のシーンがあること。以前にも何度も書いてるのだが、私はアメリカ映画の多くで食べるシーンというのはタブーなんだな、と感じているのだ。日本人は食べるシーンがとても好きだしいや、アメリカ以外はアジア各地でもヨーロッパ映画でも食事のシーンと言うのはとても心を通じ合うとかいいイメージで使われると思うのだがアメリカ映画では物をガツガツ食うのは大概馬鹿のイメージで無作法だとか無遠慮だとか無神経だとかとにかくかっこいい主人公の男女は「あまり欲しくない」と言ってすぐ食べるのを止めてしまう。繊細さを見せつける為だと思う。私はこれが嫌いでいつも苛々してしまうのだが、本作の主人公ブッシュの食うこと飲むこと、これまでのアメリカ映画の主人公の中で一番食ったのではないだろうか。私がいつもむかっときてしまうハンバーガーを投げ捨てるだとかそういうことはせず、ひたすら食う。人のまで食う。コーラだかアイスコーヒーだかもぐいぐい飲む。酒も(酒はどの映画でも飲むからいいんだが)がんがん飲む。残したりせず綺麗に平らげてしまうのである。
明らかにこれはブッシュの無神経さを笑っているんだろうなあ、と思ったのである。
彼が最も苦悶した場面はしこたま酒を飲んだ次の日に気持ちが悪くなるのと、TVを見ながらスナック菓子をぱくついてたらのどにひっかかって苦しみぬくシーンなのではないか。
とにかく彼の行った政治への反感は彼をあさましく描くことで表現されていて、それが物凄い食欲だとか口の中に指をつっこんで歯につまったものを取る仕草だとか、トイレで用を足しているシーンだとか、ヒーローものなら決して取り上げない映像がたっぷり盛り込まれているのだ。

しかしそんな無神経直情型人間だと嘲笑いながらも彼の繊細さを見せている部分もある。思いすごしなのかどうなのか、父ブッシュはジュニアである自分より弟ジェブを愛しているんだという悲しみである。彼の場合若い頃が酷過ぎるのでそのせいもあるだろうが或いは酒びたりになったのも出来のいい弟への負い目だったのかもしれない。そしてその苦しみが彼を大統領にさせ父から褒めてもらいたい、お前を一番誇りに思うと言ってもらいたい、と願いが、結局はさらに彼をどうしようもないところまで追いつめていってしまったかのように思えてくるではないか。親子の軋轢から戦争まで引き起こされてはたまらないが歴史というものはそういうものなのかもしれない。

作品の中に何度となく野球のシーンも出てくる。彼が野球好きで選手でもあったというのは例の「靴投げられ事件」の時に知った。ついでにあまりうまくなかったという注釈つきだったが。しかしあれで彼がどんなに反射神経が鋭いのかを知った。あの年齢であの状況でよく避けたものだ。
本作でも本当は野球選手かコミッショナーか、になってみたいと願い、TV中継を観、球場に行ってセンターポジションに立つのが好きだと言う台詞がある。そしてラストシーンは彼がセンターで高いフライを待ち構える。これを取れば間違いなくヒーローだ。ところがボールは落ちてこない。ブッシュはヒーローになれる大事なフライを見失ってしまう、という皮肉で幕が下りる。

ブッシュ役のジョシュ・ブローリンはこの役を頼まれた時物凄く嫌がったそうだが、当然だろう。しかも「そっくり」と見えるほどに完成されている。嬉しいものか嬉しくないものか。
しかもさすがにハンサムなのでちょっと素敵に思えてしまうのはマイナスか。
マッチョなテキサス男なのに父親を「パピー」と呼ぶのはやっぱり笑えるのかな。そしてやはりおぼっちゃま。いい学校に行くので例の変てこなフリーメイソンみたいな儀式を受ける。記憶力がいい、という才能を見せる。

無神経さが強みの彼も最後になるとさすがに弱点を突かれていく。持ち前の口のうまさも反射神経もしどろもどろになっていく。
実際の映像でオバマに大統領の席を渡した時は随分ほっとしたように見えたのだが、心中はどうだったのだろうか。

監督:オリバー・ストーン 出演:ジョシュ・ブローリン リチャード・ドレイファス スコット・グレン ジェフリー・ライト タンディ・ニュートン ジェームズ・クロムウェル エレン・バースティン
2008年アメリカ


posted by フェイユイ at 00:09| Comment(0) | TrackBack(1) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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『ブッシュ』(2008)
Excerpt: 『JFK』、『ニクソン』、『ワールド・トレード・センター』などなど、社会派の監督として知られるオリバー・ストーンが手掛けたブッシュの伝記映画。 ブッシュはブッシュでも息子の方、第43代アメリカ合衆国..
Weblog: 【徒然なるままに・・・】
Tracked: 2009-10-12 10:12
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