映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年10月25日

『オリバー!』キャロル・リード

51PB4CZuukL.jpgb1049e1be1f588f3aa027852b2464e55.jpg
Oliver!

ミュージカル映画『オリバー!』
ベン・ウィショーや他の多くのイギリス俳優はどうやら幼い時にこれを観て俳優になろうと志すようである。私も今まで何度も本作は観ているのであるが。
今回『オリバー・ツイスト』映画の3作目観賞になるのだが、やはりミュージカルは楽しくて他の2つより惹きこまれる。無論作品自体がいいものだからだろうけど。

冒頭も他の二つと違っていきなり救済院でオリバーたち孤児が働いている場面から始まる。しかも凄く大きな足踏み車を踏んでいるというのもあってこの場面だけでも他の二つが地味な作業をしているのと違って子供の気を引くような面白さがある。続いて食事のシーン。ここは『オリバー・ツイスト』の中でも名場面(?)の一つだろう。金持ちの大人たちが豪勢な食事を楽しむ隣で働きづめに働かされた子供たちが不味そうなお粥だけをそれもお椀に少しだけついでもらいガツガツと食べる。勿論満たされない孤児たちはくじ引きでお代りを要求する者を決めるのだ。何も持っていない孤児たちは藁でくじを作るのだが、他の2作が長い藁の中でオリバーだけが短いのを引くのだったのに本作は逆でオリバーだけが継ぎ足した長い藁を引く。これも確かに判りやすい気がする。ほんのちょっとしたことだけど。
(横道にそれるが少し前に『ジェーン・エア』を読み返していてやはり孤児であるジェーンが孤児院で酷く不味いお粥を少ししか与えられず少女たち(無論ここは少女ばかり)はいつもおなかをすかしていてしかも年上からほんの少しのパンを取られたりする、という箇所があった。小さな子供がお腹をすかして涙する場面と言うのは大人になってから読んだ方がはるかに辛い気がする)
本作のオリバーは自分が少女期に絶大な人気があったマーク・レスターくん。今観てもその愛らしさは他の追随を許さない。ちょっと困ったような表情がますますいじらしいのである。しかも本作のオリバーが一番感情を表現しているようで葬儀屋で先頭に歩く時の微笑みとか、お母さんを馬鹿にされた時の怒り方とか、地下室に閉じ込められた時「愛はどこにあるの」と歌うのなんかつい泣いてしまいそうだ。
ロンドンに行く辛い道のり。他のオリバーは悲惨だったが、マーク=オリバーはちゃっかりロンドン行の馬車に乗り込んでキャベツの入った籠から可愛い顔をのぞかせる、という茶目っ気である。

そしてオリバーがロンドンに到着してからのミュージカルの見せ場。ロンドンって皆歌い踊りながら歩くのね、って感じですごく楽しい。
他と違って疲れきってないオリバーはロンドンで同い年くらいの少年ドジャーと出会いすっかり意気投合。パンをくすね二人が歩き出すとスマートな警官、肉屋、野菜籠を持った女性たち、魚屋、踊りも腕を大きく振って歩くだけみたいな感じなんで誰でもできる、みたいなのが嬉しい。登場する子供たちもみんな可愛くて凄く楽しそうでいいなあ。このミュージカルってほんとに凄くいい作品なんだねえ。
この作品では子供たちが生き生きと描かれていているのがいい。『小さな恋のメロディ』でマーク・レスターの親友だったジャック・ワイルドがここでもドジャー役で登場。さすがの貫録。
この『オリバー!』は昨日観たポランスキー版とは随分違うのだが、ビル・サイクスも一味違った。かっこつけた登場で他のと違っていい男なの。他のでは少女みたいなナンシーと親父だったのでなんだかちょっとかわいそうな感じがしたのだけど、本作は確かにナンシーが好きになるのも判る。
そしてベン・ウィショーが真似をしたと言うフェイギン。ほんとに何故フェイギンなんだろうね。サイクスでもドジャーでもいいと思うのに子供のベンが爺さんのフェイギンを真似しようと思うってのが凄い。オリバーの子守唄に「スリをしよう」っていう歌を歌うのがちょっと悲しげな歌い方で余計おかしいの。

昨日のポランスキー版の美術を褒めたが(リーン版もよかったが)本作の方がもっと楽しい感じなのである。街並みの中を機関車が走るとか、酒場が川べりで橋を渡って行くのとか。セットなのかよく判らないが街並みもとてもデザインが可愛らしくて独特の雰囲気。遊び心が詰まっていいるんだね。
昨日まで裁判長がやたら怒るので???となってたが、今回のでアルコール中毒だったと判った。なるほど。

オリバーがブラウンロー氏の家で朝を迎えた時の歌「さわやかな朝はいかが」という歌って不思議。オリバーが目覚めて窓から外を見ると薔薇売りや牛乳売り、苺売り、また警官や学校へ行く子供たちなんかが通りかかるという踊りなんだけど歌がマイナー調で寂しげな感じ。ゆったりした踊りでさわやかな朝をイメージしているはずなのにちょっと悲しげなのだけど、それが却って印象的。なんとなく『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を思い出してしまった。

本作は二作品と比べるといろんなとこが改変してあり、私はそこがとてもいい方になったと思う。例えば子供向けの為なのか、オリバーが殴られる場面がなくなって機関車にいぶつかりそうになる、というアクションものになってるし、ナンシーが殴り殺される場面は壁の向こうで行われ映されない(他のでは激しく殴打される)
他作品ではブラウンロー氏の家に行ったオリバーを突然ナンシーが捕まえた後、彼女がオリバーをかばう台詞をいうのが辻褄が合わなくて変に思えるが本作は前説があるのでナンシーの気持ちが理解できる。
とにかく心理状態が本作では細かに説明されるので筋道が通っているのだ。
ポランスキー版では最後にフェイギンが憐れな姿をさらしていたが本作はドジャーと共にまたスリ生活を続けようという前向きな姿である。私としては断然こちらが好きである。

というわけでなんとか3つの『オリバー・ツイスト』映画作品を鑑賞した。順位としては断然ダントツで本作ミュージカル『オリバー!』が素晴らしい。ミュージカルとしても屈指の作品なのは私が言わなくても授賞歴でわかるからいいか。
2位をつけるならリーン版。過不足ない出来栄え。ポランスキーは悪くないが最後は蛇足かも。蛇足、というのは間違いかもしれない。ユダヤ人である監督がユダヤ人のフェイギンを単なる悪党にしたくない為にこのラストを描きたいが為に作ったのかもしれないのだから。でも私としてはこの部分が物凄い衝撃を与えるほどにはなかったのだ。
印象としては、リーン版で忠実な映画化がされているのにまた普通どおり、と言うのは観客にとっては物足りない、という感じであった。
本作を見るとよりポランスキー版が現代ならではの映画化でない物足りなさを感じてしまう。

また、こういう悲しい話こそがミュージカルにぴったりなんだと改めて認識。そういえばそうなんだよねえ。その中での希望だとか強く生きる意志だとかが貴く思えるのだ。

マーク・レスターとジャック・ワイルドはこの後、『小さな恋のメロディ』で日本の少年少女の心を足掴みにする。あ、少年はトレーシー・ハイドでだが。可愛らしかったねえ。素敵な映画だった。
なので本作のマークはさらに可愛い。ほんとに小さくて天使みたいである。

監督:キャロル・リード 出演: マーク・レスター オリバー・リード ロン・ムーディ シャニ・ウォリス ジャック・ワイルド
1968年イギリス


posted by フェイユイ at 22:52| Comment(2) | TrackBack(0) | ベン・ウィショー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
三作の流石の評、ありがとうございました。私はポランスキー版→キャロル・リード版の順で以前みました。ポランスキー版は現代に作られたから映像が凄く綺麗ですよね。ポランスキー創りたかったのね・この世界を〜て感じ。私は実はポランスキーがとても好きで『ローズマリーの赤ちゃん』なんて最高ダイスキだし『テス』も時々みたくなる。実生活では今大変なコトになってますねぇ・・まぁ身から出た錆だからしょうがないですね。
キャロル・リードのはフェイユイさんの評を読みましたらさすがなんだなと改めて思いました。細かなところの演出がエンターテイメントとして優れているのでしょうね。
Posted by フラン at 2009年10月26日 07:22
ポランスキー版も悪いわけじゃなくて凄くいいんですが他の2作がよすぎて^^;
でもここにきてポランスキーの良さを少し判って他の作品も観たくなりました。『ローズマリー』は昔観たと思うんですがDVDにはなってないみたいですね。

キャロル・リードのミュージカルは最高に素晴らしい!!原作通りだとよく判らない部分を判り易くしてさらに面白く見せているし、何と言っても子供たちが可愛い!!イギリスの少年たちが必ず観る!みたいなことになるの判りますねー。スリを奨励してるってのは凄いけど^^;イギリス的ジョーク?
Posted by フェイユイ at 2009年10月27日 00:36
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。