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2009年11月12日

『それぞれの空に』ニール・バーガー

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THE LUCKY ONES

これはちょいとなかなかいい作品だった。ティム・ロビンス作品を観続けてさすがに後になってくると彼の元々の持ち味だったコメディ性が薄くなってくるか、主役でなくなってくるか、と思っていたのだが、本作は驚くような物語ではないとしても人生や戦争や運命などに色々な含みがあることを感じさせるよく考えられた佳作ではないだろうか。

ベトナム戦争後に過酷なシェルショックに苦しみ周囲の人々からは冷ややかな態度を取られるという兵士の映画が数多く作られた。その訴え方は劇的なものであったがこのイラク戦争中の退役軍人及び休暇中の若者二人の語り口はやや軽めなものになっている。
とは言え、彼らがやはり仲間と死に別れ、次は自分かもしれない、という恐怖や離れていたことからくる周囲とのすれ違い、そして批判を受けるのは同じことなのだが、この軽さはやはり時代のせい、ということなのだろうか。

物語は偶然帰国が重なった中年退役軍人と休暇中の若者男女がアメリカ国内線飛行機の不具合でレンタルカーを相乗りする羽目になったことから始まる。

イラク戦争従軍中に腰に怪我をして退役することになったチーバーを演じるティムの役は相変わらずでおかしい。
愛妻家である彼が2年ぶりに帰国すると妻の生活がすっかり変わっていて恋人はいないが一人で生きていたいと通告されてしまう。あなたはもう必要ないと。しかも一人息子がスタンフォード大学に合格したという嬉しい知らせが彼に2万ドルの入学金の用意しなければならない。
さらに彼が勤めていた会社は倒産。八方ふさがりの状態に泣き出してしまうありさま。

そんな彼に同情する二人にも運命は甘くはなく、TKは怪我の為に不能になったのが治ったのはいいものの結局婚約者とは別れ、突然軍に戻ることが嫌になり、強盗だったという虚偽の自首をするがすぐにばれてしまう。それまで自意識が高かったかれが「自分は何も知らないのだ」という認識をすることになる。
コーリーは戦死した恋人の両親の家を訪れ彼らと住むことを願っている。彼の両親とは会ったこともないという彼女の願望が叶うわけはないと考えるチーバーとTKは心配する。
嫌な人たちだったらと懸念された両親は非常にいい人たちで、しかし実はコーリーの恋人ランディには一度関係した女性と二人の間にできた赤ん坊がいたのだ。両親は息子の行動に責任を感じ彼女を引き取って暮らしていた。コーリーの居場所はなかったのだ。

チーバーは息子の入学金を軍に再入隊することでもらえる金で支払うことにした。
3人は再び別々の場所へ従軍することになる、という幕である。彼らの命がどうなるのかは誰も判らない。

という軽さが却って恐ろしい物語でもある。
彼らが帰国して味わう様々の体験は苦いものが多いがこうして慰め合える仲間に出会えたということだけは救いである。彼らが国の為に戦ってきた、と言っても彼らを迎える態度は冷ややかな批判的なものばかりである。彼らを受け入れてくれたのは戦場だけであった。

ティムが久しぶりに彼の持ち味を生かしてしかもチャーミングに演じていたのが嬉しかった。妻に愛想を尽かされた後、別の女性に好かれると言うのも彼らしいが、何故か浮気現場を押さえた亭主からも襲われそうになるという落ちがついてて、これもティムらしい展開。何故かいつも男に襲われる男なのである。
主演3人が3人ともあまり冴えないキャラクターであるのも共感しやすいし、運命の皮肉さにも同情してしまう。
何のために彼らは戦っているのだろう。

TKという青年が酷く自分に対し自信を持っていたのに自分の無力さを思い知ってしまうのは痛烈だった。
普通こういう映画って意味もなく3人が(もしくは2人が)肉体関係を持ち場面が出てくるものだけど、そういうわざとらしいものがないのもほっとさせてくれる作品だった。

ティムが可愛かったのが一番よかったかなあ。

監督:ニール・バーガー 出演:ティム・ロビンス レイチェル・マクアダムズ マイケル・ペーニャ モリー・ヘイガン ハワード・プラット
2008年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ティム・ロビンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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