映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年11月19日

『ツィゴイネルワイゼン』鈴木清順

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鈴木清順といえば日本で最も有名な監督の一人だろうけど、大昔に『けんかえれじい』を観たのと(面白かった)最近『オペレッタ狸御殿』を観たくらいである(これは判らなかった)本作は当時凄い話題になったものなのでタイトルと監督名はさすがに知っていたのだが、やっと今になって観賞に至った。
 
もっと破壊的にグロテスクで難解で退屈なのかと懸念していたが、非常に入りやすく居心地も悪くない作品だったのでほっとした。というとまるで悪評のようだが決してそういうことではなく、さすが清順美学と言われる個性的な世界観がくっきりと見えてくる作品だった、ということである。大正デカダンスな雰囲気と生と死のはざまを漂うオカルティズムな空気は自分がとても好きなものなのでここまでそれを追求して描いた映像作品があることが嬉しくなってしまった。スチールを荒木経惟が担当しているのを見つけてこれはもう映像は間違いなく素晴らしいだろうと思い、その通りであった。
ただ、こういう生と死、そして性の世界をシュールな独自の世界観で描く作家といえば自分は寺山修司を筆頭に挙げるものなのだが、鈴木清順を知ってもその席順は変わらなかったのはどうしてなのか、今すぐ思いつけなかったので追々考えていきたいと思う。

思いつくところを挙げれば清順氏のユーモアというべきなのか笑いの部分が軽みというより若干自分的には引いてしまう箇所になってしまうのと、寺山氏の重い情念を味わってしまった後に類似した世界はどうしても物足りなくなってしまう。それは自分が寺山修司に心酔しているからしょうがないことではあるのだが。
類似した世界と書いてしまったが、それは生と死と性という題材というだけなのであってその答えというか、世界観は恐ろしく異なっている。寺山の世界はまず母親であり同性愛であり傷ついた美しい少年であり個と集団との対話であるが清順氏の本作はそのどれもが一切描かれてはいない。寺山氏の世界観が現実とかけ離れた異世界なのに対し、清順氏のシュールさはあくまで生々しい現実社会とつながっているからなのだろう。そういう意味では清順氏の作品は身近に共感しやすいものなのかもしれない。

なんだか清順の映画を観て、寺山修司がどんなに好きかを改めて確認してしまったようだ。
本作の類似としては寺山よりデヴィッド・リンチのほうが近いのではないだろうか。寺山はあくまでも文字の人でリンチは絵画の人なので。
それでも中砂・青地・小稲の3人が酒を酌み交わし会話する物憂げな場面などとてもよい。二人の男にはそれぞれ妻がいるが、芸者の小稲でないと対等な三角関係にならないのが面白い。

中砂役の原田芳雄。日本俳優には希少なエネルギッシュなセクシーさを持った男優である。セクシーというカタカナで言うより思い切り性的な男というべきか。とにかくスケベに色っぽい。
自分としては特に好きな俳優に数えているわけではないのだが、何故か出演作はよく観てる。というか観た映画によく出ている。やはりいい作品に出したい個性なのだ。他に似た人がいないから彼でないとどうしようもない。
寺山修司『田園に死す』にも『さらば箱舟』にも出演しているのだ。やはり稀有な存在なのである。
青地役の藤田敏八は真逆の知的イメージで二人の友人関係が微妙なバランスでいい。互いの細君との関係を匂わせるが芸者小稲と3人になった時に最も結びつきが生まれてくる。
小稲の大谷直子。色っぽい、の一言の女性。無論綺麗で芯の一本通った感じがかっこいいのだが、男だったらとろっとなってしまいそうなエロな女性だ。きりっとした顔立ちなのだが不思議。

あまりプロデューサーにまで触れたりしないが本作をプロデュースしたのが、荒戸源次郎。経歴を見ると凄いし、『ゲルマニウムの夜』もやってる。なるほど。監督作品には『赤目四十八瀧心中未遂』大森南朋、新井浩文目的で観たっけ。寺島しのぶ出演。どの作品も生と死と性だ。

本作を観てたら青地と小稲が出会う洞穴みたいな切り立った崖は『真木栗ノ穴』で観た光景だったので一瞬デジャヴュ状態になって驚いた。
順番から行けば本作を観てから『真木栗ノ穴』を観るわけだからあの映画を観た時に「あ、この場面は・・」となるべきだったのだね。
あの世とこの世をつなぐ場所のように思えた。無論『真木栗ノ穴』も同じ題材を描いていたのである。

監督:鈴木清順  出演:原田芳雄 大楠道代 藤田敏八 麿赤兒 大谷直子 玉川伊佐男 樹木希林
1980年日本


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posted by フェイユイ at 21:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
主要登場人物が食べるシーンが多いのも生と死が反転する様のようで面白く感じました。

私が十代の頃、深夜で昔の日本映画を放送していて若かりし原田芳雄を観て惚れました。こういう人と結婚したいと思ってました。(笑)異性の好みは声が低くて男くさい(ベンとは違うな・・)のがタイプがだったりします。
当時購入した原田芳雄写真集もまだ持っております。
Posted by ふぇでり子 at 2009年11月20日 20:33
アメリカ映画は食べるシーンが少ないのでいつも不満なのですが、日本映画は凄くしっかり食べるのが凄く好きです(笑)
原田芳雄もタイプでしたか〜。私はあまりにもセクシー過ぎてちょっと怖いんですが^^;作品はいいのが多くてよく観てるんですよねー。

この作品、観ようと思いながら延ばしてたんですが観るべき作品でしたね!よかったです。こういう映画が今も作られると嬉しいのですが・・。
Posted by フェイユイ at 2009年11月21日 00:54
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