映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年11月21日

『赤い影』ニコラス・ローグ

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DON’T LOOK NOW/A VENEZIA UN DICEMBRE ROS

もし当たり前の撮り方をしていたらよくある話と片付けられてしまうのかもしれないが、思い切り70年代風テイストとニコラス・ローグ監督の感性とが相まって他にない独特のロマンチックオカルトに仕上がっている。主演が美しいジュリー・クリスティとこちらも大好きなドナルド・サザーランドであることも手伝ってホラーと一言では片付けたくないしっとりとして尚且つ衝撃的な作品なのだった。

こういうスタイルって当時は結構あったのではないだろうか。時間がすっと流れずに、映像が幾つかの断片として組み合わされていくような見せ方でぽんぽんと間が跳んでいく。現実ではありえない映画ならでは映像が作品のかなりの部分を占めているので観ていると不思議な感覚に陥ってしまうのだ。
登場人物も主人公のバクスター夫婦以外はどこかに謎を秘めたような表現なのですべてが怪しくよく判らなくなっていく。
イギリスからヴェネツィアへやってきたひと組の夫婦ジョンとローラ。夫は絵画の修復を仕事にしている。二人は深く愛し合っているが以前故国で愛娘を溺死で失うという悲しい経験をしていた。
妻はそのショックから立ち直りきれずにいたが、ヴェネツィアで謎めいた中年姉妹と出会ってから元気を取り戻した。盲目の妹がローラに「あなた方夫婦の間に小さな少女の姿を見た。彼女はとても元気で幸せよ」と告げたことで娘の死から立ち直れたのだ。次第に姉妹と仲良くなっていく妻ローラを夫ジョンは快く思わなかった。

原作が『レベッカ』の作者デュ・モーリアと知って納得。『レベッカ』もそうだったが、すでにこの世にいない存在に心が揺れ動き操られていく、という同じ題材がまた違ったストーリーとなってしかも魅力的である。
母親であるローラが姉妹に入り込んでいくのを苦々しく思いながら実は父親ジョンの方がもっと娘の霊的存在に惹き寄せられていく、という表現がうまい。というのは彼の方こそ霊感が強いからだという説明もあるのだが。
なんとも装飾的な演出、映像なので上手くなければ鼻につきそうなのだが、赤いレインコートの少女、ヴェネツィアの古びた物憂げな雰囲気とその時起きる連続殺人事件というミステリーを絡めて大人の映画に作られている。ジュリーとドナルドの絡み合うようなメイクラブシーンも映画のアンニュイさを物語っている。

イギリスよりもっとキリスト教の色合いの濃いヴェネツィアであること、言葉の通じないもどかしさ、夜の闇と運河と石畳で反響する靴音などが効果的だ。
最後のどんでん返しのアッと言う驚き。美しくまた恐ろしい記憶がよみがえる。
旅立ったはずの妻の姿を見た、という事実が最後にどういう意味なのか判るのだ。
悲しみを含む品の良い作品ながら非常にぞっとする恐ろしさも持っている。本作の不思議な映像美を堪能した。

こんな映画があるのも知らなかった。最近ぼつぼついい映画がDVD化されてきているようだ。どんどんやっていって欲しいことである。

監督:ニコラス・ローグ 出演:ドナルド・サザーランド ジュリー・クリスティ ヒラリー・メイソン クレリア・マタニア マッシモ・セラート
1973年 / イギリス/イタリア


posted by フェイユイ at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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