映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年12月17日

『劔岳 点の記』木村大作

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映画公開当時に非常に熱烈な監督の映画に対する思い、映画作りにかけた労苦を聞いて興味を持って観賞を待ち望んでいた。そして今夜その望みがかなったわけなのだが。
これは。
確かに気持ちは判る。
この素晴らしい風景と恐ろしい自然の脅威を映し撮った思い入れには深く感心するのだが。
それを聞かないでいての観賞であったらこれほどたどたどしい映画はあまりない、とだけ思ったかもしれない。
熱意ある映画製作者方々には気の毒だが「映画作品」としてはかなり幼い段階にあるとしか言えないのではないだろうか。

かといって、嫌悪感を覚える、というような類の作品ではない。心をこめてこの上なく危険な山を登り計測し地図づくりに人生を賭けた男たちの物語を描きたかった真摯な思いは伝わってくる。
だがこれでは映画としての感動は悲しいほど伝わってこなかったのだ。

真面目な作品と思うだけに言い難い気もするのだが、人物設定もその描き方も物語の展開も表現も音楽の使い方、場面の切り替え方、すべてが素人で何も判らない自分にとっても幼稚過ぎて恥ずかしいのである。
例えばこれが海外で観られることを禁じて欲しいくらいなのだ。もうせめて日本人の間だけの観賞に留めてもらわないとこんな子供っぽい映画を日本人が意気揚々と真面目に作っているとどの国の人にも思われたくないような気恥かしさがある。
一体どうしてこんな映画を真剣に作ってしまったんだろう。
あまりに作品がボロボロなのでどこから添削していいのか迷ってしまうが、まず時代の雰囲気がまるでない。明治時代であるという作りこみがないし、あえてそう作ったのだ、という意識も感じさせない。
宮崎あおいの使い方が酷過ぎて彼女が可哀そうである。こんな演技しかできないような女優ではないのに。妙に夫に尽くす、というとってつけたような演出でしかも妙にべたべたとしていて日本人ではないようだ。
台詞も中学生くらいが考えたのかと思うほどの語彙の少なさでしかもその使い方もやはり幼稚でせっかく大自然で覚える感動が台詞で全部消されてしまう。誰がこんな甘ったるい陳腐な台詞を思いつくんだろう。
カット割りというのか場面の構成や切り替えがまた素人並みでまるで感動させたくないような手法ばかりで作られている。
どの場面が、と言おうとしてもほぼ全ての場面が酷いのだしとにかく物語も人物も穴があったら入りたいくらい恥ずかしい代物なのでどこを特に取り上げていいのか。
例えばクライマックスで「あなたが先に」「いやあなたが」みたいな見せ方が不味いのだ。そしてせっかくの感動を途中で切ってしまう。何故。
宮崎あおいが最後に夫への気持ちを口に出して全てをぶち壊し(と言っても元々ぶち壊しだからどうでもいいか)にしてしまう。
戻っていくが柴崎と小島がお互いに「何故山を登るんですか」と聞いた後の処理の仕方、古田(役所広司)に移るのが下手過ぎて失笑ものだし、山岳会や軍部の描き方がよくある「嫌な感じ」で馬鹿馬鹿しい。しかも山岳部とは最後仲間になるという臭さも堪え切れない。
とにかくこういった調子で作り手の意識と技量が幼いのでどこが良くてどこが悪いではなく、全部が未熟なのである。
監督はこの作品が初監督だったわけでいた仕方ないということもあるだろう。最初から完成されていることは難しい。
子供っぽいということは純粋でもあるということだが、映画作品というのはやはり技術によって感動を生みだすものなのだと改めて思わされた。真摯な思いだけでは表現できないものがあるのだ。
制作に関わった方々の溢れる熱意を知ると実に残念で気の毒だがそう言うしかない。

観てるうち、少女時代に繰り返し読んだウィンパーの『マッターホルン登頂記』を思い出した。「魔の山」と評されていたがまさしく剣のような形をしているではないか。どちらがどうなどと私には想像もつかないが遠くから見る形では随分違う気がする。しかしそれでもあんなに恐ろしいのだから本当に物凄い人たちである、登山をする人々は。

監督:木村大作  出演:浅野忠信 香川照之 松田龍平 モロ師岡 螢雪次朗 宮崎あおい
2009年日本

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どうでもいいけどマッターホルン。こんなの登るってどうやって???上に貼った劔岳とは角度がかなり違うなあ。


ラベル:歴史
posted by フェイユイ at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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