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2010年01月04日

『刑事コロンボ 完全版 Vol.14』「祝砲の挽歌」

By Dawn's Early Light

ドラマにしておくには勿体ない、というのは褒め言葉になるのだろうか。確かに変な映画一本より素晴らしく見応えのある作品ではないだろうか。
犯人は陸軍幼年学校の校長であり大佐であるラムフォード。昔堅気の軍人らしく厳格な態度と一分の隙もないきっちりした服装がよれよれのコロンボと好対照なのも愉快である。

コロンボが見上げるほどの長身にまったく表情を崩すことのない彼は理事長であるヘインズの殺害を企てる。
ヘインズは幼年学校がもう流行らず入学生が激減していることから、男女共学の短大にするという計画を立てているのだった。

一見堅苦しく武骨な大佐の多くは語らないが感じられる悲哀とコロンボの相変わらずの丹念な捜査ぶりや推理の鋭さが、次第に人数が少なくなってはいるがやはり厳しい校則の中に身を置く生徒たちの生活ぶりなどと絡みあいながら描かれていく。
祝砲を撃つことになるヘインズを殺害する為に大砲に仕掛けをする大佐が偶然見てしまったのは生徒たちの部屋の窓に吊るされた密造酒のビンだった。それを見逃してしまえば或いはうやむやになったのだろうか。
だが厳格な大佐には子供たちを指導するのを怠ることができなかった。
学校内の密造酒と大砲の謎がコロンボによって解き明かされていく。
事件前夜大砲を掃除していたはずの生徒スプリンガーの煮え切らない態度を疑問に思ったコロンボは寮に寝泊まりするのだが、そのことでさらに学校生活の様子が生き生きと描かれる。
コロンボにとっては密造酒など若者ならやって当然のような他愛ないものだ。洗面台に落ちていた塵を見て密造酒がどこに隠されているか見つけてしまう。
何故大佐が急に密造酒に気づいたのかも大砲の位置から感づいてしまうのだ。

コロンボのいつもの「もうひとつ忘れてました」と言う繰り返しや犯人のコロンボへの苛立ちなども本作では省略されてしまっているのだが、それ以上に効果的にコロンボの個性と士官学校のきっちりとした空気が見事に表現されている。学校のデザイン、格子模様の床を走っていく場面だとか、砲台の階段のデザインの美しさだとかにも見惚れてしまう。
寮室のベッドで寝ていたコロンボが夜中3時やおら飛び起きて2段ベッドに掛けたコートのポケットから何をむんずと引っ張り出したかと思ったら昼食失敬したパンの塊でそれをいきなりむしゃむしゃ食べながら校内にある公衆電話から事件担当者に電話して気になってしょうがないことを訊ねるという場面は必見じゃなかろうか。
気になって眠れない、という口癖は嘘じゃなかったんだ。少なくともうつらうつら考えているのかもしれない。どおりでいつも眠そうだもん。

監督:ハーヴェイ・ハート 脚本:ハワード・バーク 出演:ピーター・フォーク パトリック・マクグーハン
1974〜1975年アメリカ

このドラマを機にピーター・フォークと大佐役のマクグーハンは親友になったと書かれていてなんだか嬉しくなってしまった。外見からして正反対みたいな二人で実際の性格も役に当てはめてしまうからだが二人が仲良く話し合ってる風景なんてちょっと見てみたい。


posted by フェイユイ at 23:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この作品いいですよね〜◎BGMもラッパの音だけとか。ラムフォード大佐の声の佐野浅夫氏ぴったりで、耳について離れません。寮内の様子も興味深いし,彼女から貰ったペンダントの話をする生徒がお父さん俳優より早く亡くなってしまった(涙)ブルース・カービー・ジュニア(父もブルース・カービーといって、コロンボの部下役その他でシリーズ中頻繁に登場)。脱ぐコロンボ、セクシーでしたでしょ?(笑)大佐との対比が素晴らしくて、しかし大佐がコロンボを見下していない所が凄くいいです。哀愁とスタイリッシュさが漂うコロンボ旧シリーズ中ベスト5に入る名作ですね。
Posted by フラン at 2010年01月05日 11:36
雰囲気が他の作品と全然違う。ところでこれ、完全版なのでせっかっくのラムフォード大佐の声(っていうか皆そうなるのですが)が突然まったく違うタイプの声に^^;あまりに印象が違ってがくっとしました。他の人の時はそれほど感じてなかったんですが。この声の方(佐野浅夫さんですか)がぴったりすぎるせいでしょうか。あんまりだー。

変な言い方ですが、ドラマにしとくの勿体ないくらいです。
Posted by フェイユイ at 2010年01月06日 17:13
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