映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年01月11日

『刑事コロンボ 完全版 Vol.16』「忘れられたスター」

Forgotten Lady

昔コロンボシリーズを観ていたつもりでもその殆どを覚えておらず何となくな印象しか浮かばないでいる私だが唯一この作品だけはしっかりと記憶していて何度となく頭の中で反芻していた。
と言うのはこのドラマがシリーズ中でも珍しいくらいの切ないラブロマンスであるのと殺人を犯した犯人が殺害自体を忘れてしまう、という展開に酷く驚いてしまったからなのだ。
こうして観直してみると記憶に残っていた以上の素晴らしい物語で年のせいか涙もろくなってしまうのであった。

往年のミュージカルスターであったグレース(ジャネット・リー)が舞台に復帰する為に今はもう引退した元医者の夫に資金の提供を求める。だが夫は頑として承諾してくれない。思いつめたグレースはいつも以上の睡眠薬を飲ませ自殺と見せかけて殺害する。
コロンボはいつも通り妻であるグレースを疑って捜査を続け証拠を握る。グレースにはコンビを組んで人気を博していた男優ダイヤモンドと親交していて彼は今でもグレースを深く愛していた。
往年のスターらしい我儘な性格のあるグレースをいつも優しく見守っていたのである。彼女の舞台復帰に不安はあったが彼には張り切っている彼女を見捨てることができず彼女の周囲を探るコロンボに苦情を申し立てる。
コロンボはダイヤモンドにグレースが犯人であることを告げる。そして彼女が脳に障害を持つ病気を抱えていてもう余命数カ月しかないことも。且つ彼女は最近起きたことをすぐ忘れてしまうのである。
殺された夫は医者であった。夫はグレースの病状を知っていたからこそ舞台復帰を拒んだのだ。激しい運動は彼女の生命に関わることだったからだ。
グレースを逮捕しようとするコロンボを遮り、ダイヤモンドは自分がグレースの夫を殺したのだと偽の自供をする。グレースは驚き彼が刑を受けて戻ってくるのを待つと約束する。
グレースはすでに自分が夫を殺したことすら忘れてしまっていたのだ。

二人の男性からこんなに深く愛されたグレースはただ美しいだけではなくきっと素晴らしい愛すべき魅力を持っていたのだろう。
また彼女を愛した二人の男の男らしさ優しさにどうしても涙してしまうのだ。そしてもう一人コロンボもグレースにだけはいつもの徹底ぶりが発揮できなかった。
常に犯人逮捕の為に献身的に働いてきたコロンボがこの作品でついに折れてしまうのは彼の今までの作品でも観られた「弱い女性に心を動かされてしまう」彼らしさが出てしまったように思える。二人の男もまたコロンボのように頼りなげな女性を守ってやりたい、と思う男性なのだ。
昔観た時もこの男性たちのダンディズムによろめいてしまったが、年取った今では昔以上に惚れ惚れとしてしまう。
こういう女性を守る男性の心意気というものは今ではもう古めかしいものだろうか。

グレースの犯した罪は許されるものではない。だが彼女に殺された夫も彼女が罰されることを望んではいないのではないか、と甘く考えてしまう。彼女は数カ月脆く破壊されていく脳の中で昔の夢を見ながら死んでしまうはずだ。「殺人を犯した証拠」が何もないダイヤモンド氏は有罪にはならないだろう。
3人の男に見守られたグレースは悲しい女性だが羨ましい人である。

監督:ハーヴェイ・ハート 脚本:ウィリアム・ドリスキル 出演:ピーター・フォーク ジャネット・リー ジョン・ペイン
1975〜1976年アメリカ

本作と同じく『祝砲の挽歌』の演出も手掛けたのハーヴェイ・ハート氏である。うーん、どちらも比較し難く素晴らしいし、大好きな作品だ。
今はもう誰も振り返らなくなったが自分にとっては大切なものである、というテーマが同じである。
心に深く愛着のあるものに対してしみじみとした描写をする人なのだ。


posted by フェイユイ at 21:55| Comment(3) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
女性犯人というのが特別ですよね。このジャネット・リーは往年の大女優ですものね〜大昔の『若草物語』で長女マーガレット役でした。目元なんか全然変わらない。この映画凄くてジョーがジューン・アリスン、ベスがその名の通りエリザベス・テーラー・・懐かしい。コロンボの中で見てる映画は本当の出演作『ピクニック』らしいですね。今回は優しいコロンボ、ラストでタキシード姿を披露してくれましたね^^。
Posted by フラン at 2010年01月12日 10:48
大変、スイマセン間違えました。『ピクニック』はキム・ノヴァクでした。ただこのスクリーン上作品は実在映画だそうです^^;〜ジャネット・リーといえば!『サイコ』でしたね!!
Posted by フラン at 2010年01月12日 11:18
そうですね。私なんかはやはりジャネット・リー=シャワーシーンの叫びという(笑)
この作品中の映画の彼女。うわー昔の映画らしいムード満点で。楽しそうな。素晴らしいプロポーションの自分に酔いしれているというのがおかしいと言えばおかしいんですが。

歪んで考えれば落ちぶれた女優というか年取った元美人を揶揄している男目線て感じもしますが、この3人の男たちに愛される彼女が羨ましい〜(笑)こういう男らしさを見せられたら惚れてまうやろー^^;
Posted by フェイユイ at 2010年01月13日 00:41
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