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2010年01月21日

『刑事コロンボ 完全版 Vol.21』「死者のメッセージ」

Try and Catch Me

アガサ・クリスティかマープル婦人か、と思わせるいいお年の女性推理作家が犯人という、これも好きな題材である。小柄でしゃきしゃきした言動の元気なおばあ様作家も魅力的であった。演じたルース・ゴードンは『ローズマリーの赤ちゃん』で謎の隣人だった方なのだね。

とても楽しんで観たのだが、こうしてみると確かに『刑事コロンボ』はすっかり前半と違うものになっているのが判る。
最盛期のコロンボははっきり言って嫌な奴であった。裕福であり人物としても何の遜色もない犯人が優れた頭脳で計画し実行した殺人に犯人自身は絶対的自信を持っているところへ小柄で貧相なイタリア系刑事のコロンボがよろよろ登場する。
どう見ても冴えない存在の彼がひたすらしつこく犯人の周囲を嗅ぎまわるうちに次第に真相へ近づき犯人の完璧なはずの犯行を見破ってしまう過程に観客は案外逆にコロンボにイライラしてしまうことさえある。どこからともなく表れ、何度も引き返してきては部屋を汚したりおしゃべりをしながらくどい質問をする嫌な奴なのであった。
ところが最終に近づいてくるとそういった嫌らしさが薄れ物語の中に「コロンボはこんなに凄いぞ」といった描写が増えてきた。
前回の高い知能指数を持つ人々よりコロンボは凄いぞ、とかいう表現もそうだし、以前よく描かれていたコロンボのしょぼくれた感じが少なくなり、むしろかっこいいとさえ思える雰囲気になってきている。
作品も警察ものではなくまるで探偵ものみたいな雰囲気になってきているようだ。
それはたぶん『コロンボ』という作品がマンネリ化しないような工夫が絶えずされていたせいであり、毎回他とは違うものになるようなトリックやら演出やらを試みているからこそなのだろう、とは思うのだが。

今回もまた他とは違うものがある。以前の犯人は冷酷で己の欲望の為に他人の命を奪う、というものが多かったが本作の犯人は愛する姪の仇討ちというのが目的であり、殺人自体の悪はあっても被害者の犯した罪の非道さを思うと果たしてこの犯人だけが断罪されるのみでいいのか、よく判らなくなってくる。しかも彼女は弁護士と秘書の二人からも脅迫を受ける。
犯人だけがいい人で被害者や他の関係者が嫌な人間ばかり、という奇妙な設定なのである。
無論ここに描かれていないだけでこの推理作家もまた嫌な人間だったのかもしれない。秘書や弁護士から恨みを買うような言動をしていたのかもしれない。悪人ではなさそうだが、やや自分勝手な人格も垣間見えるし最後にはコロンボに同情を買おうとするしたたかさもある。
いつもか弱い女性に甘いコロンボも彼女は「強い女性」だと判断したのだろうか。同情を見せることをしなかった。

とはいえ少し前に魅力が薄れたように思えたピーター・フォーク=コロンボが本作ではすっかり前のように素敵に思えたし、とにかく本作は以前の『コロンボ』の水準になっているのではないだろうか。コロンボが次第に変化してきているのは仕方ない、としても。

監督:ジェームズ・フローリー 脚本:ジーン・トンプソン&ポール・タッカホー 出演:ピーター・フォーク ルース・ゴードン
第7シーズン1977〜1978年アメリカ


posted by フェイユイ at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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