映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年01月22日

『刑事コロンボ 完全版 Vol.22』「秒読みの殺人」

Make Me a Perfect Murder

そうだったー。これが大好きだったんだよなあ。特にあの映写技師さんが「パンチが出たらここをこうやって」と華麗にフィルムを切り替える場面が印象的でコロンボが自分もやってみたいとねだる気持ちがよく判る。頭脳明晰なコロンボ警部、こういうのはほんとぶきっちょでしっかり失敗してみせてくれるのが嬉しい。技師さんはかなり落ち込んで可哀そうだったけど。完全主義者みたいだったもんね。

前回までの数本に「もうコロンボも下降線だ。駄目になった」とぶつくさ言ってたのを吹き飛ばすかのような切れ味のある作品。犯人が女性のせいもあってよりはらはらさせられるドラマだった。
車の乱暴運転のせいで鞭打ち症になり首にコルセットをつけた情けないコロンボの登場が何だか昔の彼に戻ったような気がするのだ。
慌ただしさと最新技術のそろったTV局の中をうろうろするコロンボがとんでもなく邪魔者なのもまたよい。
そして今回の犯人ケイはバリバリに働くキャリアウーマン。TV局の支局長マークの愛人でもある彼女は彼がニューヨークへ栄転するという話を聞いて大喜びする。彼のチーフアシスタントでもある彼女はマークの後継者として支局長に推薦されると信じていたのだ。
だがマークはケイに支局長をまかせらるほどの裁量はない、と判断していた。その上彼女との関係はこれまで、と高級車一台をプレゼントして別れるつもりでいたのだ。
ケイは全てを察知し、素早く身を引くと彼を殺害する計画を立てる。

非常に面白い物語なのだが、こんなに辛い話もない。優秀なアシスタントだが物事を決断する才能はない、と恋人に言われるケイ。その判断が正しいのかどうかは判らない。だが、彼女の作った作品も重役たちにきにいられることもなく、生放送に出演するはずだった歌手のドタキャンのせいでその評判の悪い作品を差し替えたのだが、この行為もまた重役にとんでもないミスだったと批判される。
常に強く生きると言い切り、涙一つ見せず背筋を伸ばして働き続けようとするケイ。犯行自体が秒刻みで行われることがまるで彼女自身の人生のようにも思えるがほんの少しでも間違えば命取り、というような緊張感に満ちた生き方なのだ。
彼女は本当に才能がないんだろうか。少なくとも笑顔の少ないゆとりのないやり方は嫌われてしまいそうでもある。
だが「女性だからここまできつく追い詰められてしまうのでは」と思ってしまうのは自分が女だから感じるひがみだろうか。
最後まで「私は戦い続けます」という彼女は強く張りつめた糸のようでいつ切れてしまうのか、と心配にもなってしまう。
か弱き女性には甘いコロンボも彼女にはややきついようにも思える。
負けまいとして毅然と立ち向かうケイに対してコロンボはだらだらとしているようでいて優勢なのである。
悲しい女性の姿だ。
男たちに負けまいと挑み続け、才能がないとあちこちから言われてしまい、自分の運命を狂わせる殺人を犯して逮捕される。戦うつもりと言っても殺人なんかをするなら負けだ、とまた笑われそうだ。
コロンボの罠であるエレベーターの上のピストルを必死で取ろうとする彼女が哀れだった。
なのに最後まで彼女は表情も態度も崩さない。
彼女が懸命に作った作品が自殺する男のドラマで少し観ているだけでも重苦しい残酷な作品なのがまたこういう女性が作りがちな作品のようで痛々しい。きっと可愛いラブコメディなんぞは女はそういうもんだと馬鹿にされそうで作りたくないのだ。

頭はいいが余裕のないぎすぎすした仕事一筋の女性、ケイ。なんだかとても可哀そうでしかたない。
彼女が生まれ育ったという貧しく狭い家、もう今は荒れ果て誰も住んでいない場所を観に行く場面でもコロンボが現れ「成功した人間が過去の家を見にきたのだと思ってました」などと嫌みを言われる。ほんとに意地悪なコロンボである。これが元々のコロンボなのだ。

ケイはマークと恋人関係であったのだが、クスリ漬けの歌手ヴァレリーとビアン的な関係のようにも思える。重役がケイに冷たく言ったのもその辺を感じてのことだったような気がする。
コロンボシリーズは健全なのでそういうセクシャルな部分は出さないのだが、本作は難しい内容ながらよく練られた優れたドラマになっている。
演出にも工夫が多く、特に最後のメリーゴーラウンドの前に立つコロンボをモニターが捉えた映像で様々な効果を出してみせるのは面白かった。
こういういい作品の時のコロンボは本人も凄くかっこよく見えるのである。愛犬がTVを観るのが好き、と言う場面も可愛らしい。

監督:ジェームズ・フローリー 脚本:ロバート・ブリーズ 出演:ピーター・フォーク トリッシュ・ヴァン・ディヴァー
第7シーズン1977〜1978年アメリカ


posted by フェイユイ at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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