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2010年01月24日

『刑事コロンボ 完全版 Vol.22』「策謀の結末」

The Conspirators

とうとうこのシリーズ最後の作品となってしまった。TV放送としては新シリーズもあるのだが、私がレンタルできるDVDシリーズとしては最終巻である。
そしてその最後にふさわしい素晴らしい味わいの作品であった。コロンボ作品の最盛期のようなトリックの妙とおかしさ、という点はさすがに乏しくなってしまっているのだが年齢を重ねた人間の如くじんわりとにじみ出てくるようなコロンボの雰囲気と彼の好敵手として不足のない風格の殺人犯人である。
また事件の背後にアイルランド紛争が絡んでいることもドラマに深みを加えているだろう。本作の犯人は詩人である為にドラマのそこここに彼が韻を踏んだ台詞が散りばめられており(と言っても残念ながら日本語吹き替えで観てるのでその妙味は想像するしかないが)アイリッシュらしい言葉の達人であり豊かなユーモアを持っている。詩には疎かったというコロンボもここで彼と詩の対決及び酒場でのダーツの対決を披露する。飲んだ酒の量もドラマ一ではないだろうか。
『別れのワイン』での犯人と同じように本作の犯人ともコロンボは深い友情を感じているようだ。ただワインを愛して一人を殺害してしまった以前の犯人と違い本作の犯人であるデヴリンは結局テロリストであり彼が銃を輸送することで多くの人々が死ぬ運命にあるのはコロンボとしては絶対に許せないことだったに違いない。コロンボがなんとか船を止められないかと疾走する場面は単なる犯人逮捕だけの問題ではなかったはずだ。
それでもデヴリンから酒を勧められほっとして承諾する心にはそれと知っても芽生えた友情の気持ちを感じてしまう。
そして犯人を知る手掛かりとなったウィスキーのボトルに傷を入れる「飲むのはここまで。これよりも過ぎず」
こうしてコロンボを作るのも観るのもここより過ぎることはない、という暗喩になったのである。

かつての大げさなトリック、笑い、コロンボのしつこい演技が抑えられウィスキーの如く大人の味わいになっている、というところなんだろう。
犯人のデヴリンは冗談ばかり言っては酒を飲み過ぎる欠点もあるのだが、14歳の頃からアイルランドを飛びだし一人アメリカで必死に生きて刑務所に入った過去を背負っている。
コロンボシリーズでは私利私欲の為に殺人を犯す、という設定が案外多いのだが本作はそれとは違う苦いものがある。
アイリッシュの物語、というのは彼らが素晴らしい詩人であり文筆家であることもあって見応えのある作品が様々にある。また様々な人種が混合するアメリカの中でも目立つ存在だ。
私はウィスキーは全く飲まないがアイリッシュの話を読んだり観たりすると味わってみたくなる。黒ビールもまた。

さてコロンボシリーズも最後ということでその締めくくりの感想も書きたいものだが、思い出そうとするとどっとわき出てきて何をどう言っていいのやら。
とにかく、私としてはずっとコロンボが好きだったのだが、そのくせそれはかつて観た時の思い入れであって実際は諸々をとんと忘れていた。
こうして観返すとどうやらぼんやり覚えていたのは最後の6作品ほどと『忘れられたスター』くらいで後はすっかり忘れきっていたのだから一体何を言わんかや、だ。
それにしても凄いのはコロンボを作ったのは脚本演出含めて様々な人が関わっているのにコロンボは歴然としてピーター・フォークのコロンボである、ということだ。
確かに続けて観ると怒りっぽかったり優しすぎたりかっこつけてたり特にしょぼくれてたりするがこれだけ違った人々が作っていてもイメージが全く食い違う、ということはなくコロンボである。
それは無論毎回軌道修正が入っていたであろうと思うのだが、やはり観る者としてはピーター・フォークという俳優がコロンボを作ったのだろうな、と信じてしまうのである。
義眼の為の独特の眼差し(これは他の役者では真似できない)お決まりの手を挙げるポーズ、小柄なくせに猫背でよろよろとがに股で走ってくる。よれよれの着っぱなしのレインコート浅黒い肌と濃い髭の剃り跡。変てこな眉の形ともじゃもじゃ頭。なのに他のすらりとした男たちよりかっこよく見えてきてしまう。ぶつけた痕だらけのプジョーやぼさーとした犬くんも可愛く見えてしまう。
しつこくて嫌な奴、という設定だと思ってたが、ずっと観続けたせいかそうでないか判らないが観直してみるとコロンボのしつこさは当然のことでとにかく冷酷な犯人が多いこともあって彼としては絶対に逃したくないのである。
多くのファンを持つこのシリーズだが心底頷ける。
それにしてもコロンボはピーター・フォークだからこそのコロンボなので彼ばかりは他の役者でリメイクすることはないだろう。
コロンボ夫人が存在するのは確認できたが彼女が姿を見せない、という演出もうまい。それでもコロンボが奥さんを凄く愛しているのが伝わるので女性ファンもまた多いのだと思うのだ。私もその一人である。

監督:レオ・ペン 脚本:ハワード・バーク 出演:ピーター・フォーク クライヴ・レヴィル
第7シーズン1977〜1978年アメリカ


posted by フェイユイ at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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