映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年02月01日

『テス』ロマン・ポランスキー

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Tess

これを観るまで(という恐ろしく長い時間)『テス』という作品は、ナスターシャ・キンスキーが主演だったので(しかも監督もスキーなので)ロシアか東欧かポーランド辺りの物語だと思ってたらトーマス・ハーディ原作のイギリスが舞台だったのだ。しかしナスターシャの顔からイギリス女性が連想できなかった。

ポランスキーという人はとてもユーモアを持っている監督でどの作品にもどこかおかしさがあるのだけど、この作品でとてもおかしかったのはテスの夫になる牧師という人がとても不運なこと。多分観客としてはテスに共鳴して観てしまうのでこの男はとんでもない悪い奴ってことになるんだけどこの男の目線で見たらとても笑える。というのはナスターシャ=テスの美しさをそのまま清らかさと勝手に思いこんだ彼が結婚した後告白されたのがすでに性体験済みで子供を産んだ後その子を死なせてしまった、という辛い過去を背負った女性であったこと。そのことに衝撃を受けた彼はテスを放り出してしまうのだがこの弱気な坊っちゃんの唯一の性体験はロンドンでの年上女性との2週間だったわけでしょ。偽りの愛だった、なんてかっこつけてるけど実際は坊や過ぎて捨てられたのかもしんないしそれを誤魔化してたのかもしれない。せめて今度は自分より幼い少女だったら負けないだろうと思ったらどっこい彼女の方がウワテだったんで泣きっ面になったっていうことはないのかな。その後もテスから何度も手紙で帰って来てと言われてもなかなかセックスに自信が持てなかったのかもしれん。なにしろこの二人まだいたしてないわけですよね?この坊っちゃん牧師、怖れていたのかも。
その後なんとか体験を増やしたのだろうか。テスにやっと再会する牧師。テスに「遅すぎる」と怒られるけど彼としては男になるのに時間がかかったのだよ。それにテス自身きっとプレイボーイ風のあの一番目の男より坊っちゃん牧師みたいな可愛い男子が好きだったわけでしょ。テスって本当にあの一番目の男が嫌いなんだよね。徹底的に嫌ってる。何故あそこまで?
で、坊っちゃん牧師がやっとテスに再会して「僕はあの時の僕じゃない!(経験積んだってこと?)今度こそ君を離さない!」って言ったらテス「彼を殺してきた」って(爆)どこまで先につっ走るんだテス。正直ここで笑ってしまいそうになった。牧師の身になって考えたらやっと彼女に追いついたのに彼女はもっと凄い人になっちまった。もう牧師さん目が点になってたけど。ここでまた茫然としたらもう駄目っ点でなんとか自分を立て直して逃亡し途中でついに性体験を終えた。よかったよかった。しかし汽車に乗った牧師を窓からテスが覗きこむんだけど、あのシチュエーションは駄目なの。どうしてもドリフ思いだして笑ってしまうんだよね。どんだけ足速いんだ(いや汽車はまだ走ってないと思うんだけど)

いや私が突っ走ってしまって申し訳ない。決してこの映画を笑おうとしたわけではない。ポランスキーの手腕がここでも光る素晴らしい映画作品なのだ。
でもでもどうしても考えてしまう。ポランスキーといえばホラーと笑いが常にある。この映画もその高い格調の中に隠れた笑いとホラーがあるのではないか。無論エロチシズムもまた。
テスが一番目の男に苺を食べさせられる場面は非常に印象的でエロチックなのだが、頑固に「自分で食べます」と拒否しておきながら結局は男に咥えさせられてしまうのがテスの特徴で彼女の生き方そのままになっている。
真に清純で美しい少女テスが父親の聞いた「お前の家系は由緒ある名門なのだ」という貧乏人にとっては何の意味もないような一言から間違った道へと歩き出すことになり殺人者にまであってしまうとは、なんという恐ろしい一言だったのか。それはどんなホラーより恐ろしくまたおかしさも含んでいる。そしてそんな不幸な運命に弄ばれ悲しみと苦しみの表情を見せる美少女という設定はちょうどホラーの物語の中で叫び逃げ惑う女性にエロチシズムを感じてしまう男性にはこれ以上ないセクシャルなものであるに違いない。
そんなテスを演じるという生贄にナスターシャの美貌と初々しさはぴったりなのである。
彼女がボロボロの服を着て髪を乱している時ほど嗜虐的な思いを抱いてしまうのではないだろうか。

テスは何故あんなに一番目の男が嫌いだったんだろうか。女を見下したあの物言いが腹立たしかったのか。
それに引き換え何故牧師は好きなのか。さほど彼の方がより素敵とも思えないが。観客としてあんなにむかつく男もないが彼は彼で不幸なのだ。許してもいいはずのテスの過去をどうしても許しきれず貴重なテスの若い期間を捨ててしまった。やっと踏ん切りがついて戻ったら彼女は元の木阿弥一番目の男のモノになっててしかもそいつを殺害した罪で死刑。彼がテスを自分の愛する人として傍に置いたのはほんのわずかな時間だけ。不幸な男である。

さておとといの『青いパパイヤの香り』昨日の『細雪』と本作『テス』女性年代記という3作を続けて観ることになった。
どれも素晴らしい映画である。自分としては『細雪』の倒錯性に最も惹かれてしまうものである。

監督:ロマン・ポランスキー 出演:ナスターシャ・キンスキー ピーター・ファース レイ・ローソン リー・ローソン デヴィッド・マーカム アリエル・ドンバール
1979年 / フランス/イギリス


posted by フェイユイ at 00:46| Comment(4) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「・・君を運ぶ為に三人も運んだよ」のくだり、ロマンチックで好きです。一度はこういわれてみたい・・^^;
『細雪』コメ欄けだし!です。“長女「〜あの人、粘らはったナァ」次女「(頷き)〜粘らはったなぁ」て場面ありましたが。。テスももうちょっと粘らはったらよろしおますナア〜^^;といった所ですか(笑)
トマス・ハーディ原作の他作品『日陰の二人』も(タイトルからして・;)いやあどこまで続くこの不幸☆て感じでした。。でも物は考えようなんだよね〜なんてこういう不幸売り物作品観ると逆に馬鹿馬鹿しくなっちゃいますよね〜。
ところで蛇足ですが今日テレビで『ホワイト・オランダー』というの観たら面白かったです。娘関係で悩む私に示唆的に飛び込んで来た映画でした。
Posted by フラン at 2010年02月01日 21:43
『テス』ってやっぱりナスターシャの美しさあってのものでまたく違う汚れ役的な女優が演じてたら悲惨さだけが浮き彫りになってしまうのでしょうねえ。
『日蔭のふたり』タイトルが凄くて。どちらも意地を張って生きるんだけど結局流されてしまう、というような共通点があるみたい。
『細雪』は谷崎が原作だから本当に不思議な感覚なんですよね。日本人としても珍しい考え方なのだと思います。

なるほど。観た映画が今の自分にぴたりと合ってしまう感覚ですね。『ホワイト・オランダー』ですか。ふむふむ。
ところで私も違う話になりますが『ジュリア』がDVDになるとかで(2月下旬)楽しみです。待ち望んでました。
Posted by フェイユイ at 2010年02月02日 00:31
『ジュリア』は自分で録画したビデオを持っています。ジュリアとドイツの酒場で再会するシーン何度見ても滂沱で困ります(泣笑)ヴァネッサ・レッドグレイヴが素敵で素敵で・・^^〜DVD化良かったですね。私はもう少しで発売の『恋のからさわぎ』待っているところです!(即買い)^^
Posted by フラン at 2010年02月02日 14:25
そうでした。『恋のからさわぎ』!!
話題にしたのに!DVD化この前気づいたのに書き忘れてましたっ^^;

ヒース、泣けそうです。う。
大好きなテリー・ギリアムの映画も早く観たいですが。
Posted by フェイユイ at 2010年02月03日 01:01
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