映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年02月08日

『真空地帯』山本薩夫

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無実の罪で服役させられた一兵士が帰って来た軍隊の中で己に降りかかった理不尽な運命に苦しみあがく、というような内容であろうと思って観たのだが、確かにそうではあるが想像したほど悲惨な状況ではなかった(とはいえ自分は嫌だが)と思ったのはどうしてだろうか。

この原作によって軍隊の内情が初めて本格的に書かれた、ということなので衝撃的だったに違いない。
つまり、その後はこれを上回るような「酷い仕打ち」を描くことになったはずなので後でこれを観た自分は「それほど酷くない」と思ってしまう、ということなのだろうか。
かといってこの作品がつまらないわけではなく非常に面白く観てしまったのだった。
それほど酷くない、と思ったのは主人公が言われるように孤立無援ではまったくなく終始彼の味方になってくれる會田という3年兵がいてくれからなのであった。
この人は誰に対しても面倒見がいい温厚な人柄なのだが特に主人公の木谷には何の見返りもなくむしろ損害を受けることもあるのに何かと世話を焼いてくれるのである。ところが主人公の木谷は彼に対してあまり恩義を感じてもいないようなのが不思議だった。孤立無援だと思い込んでいるだけなのかもしれない。
私的には木村功演じる木谷にまったく共感が持てない一方この曾田さんにはとても惹かれてしまい、彼と染や若い兵士との関係の方により興味が向いてしまうのだった。
木谷よりいつも殴られて虐めぬかれる大学出の人の方が可哀そうであった。

こうして軍隊の中で人間性を失い人は兵隊となるらしいのだが、確かにどこの国でも軍隊というのは似ているわけでこうして理不尽な世界の中で正気を失わねば戦争という最も理不尽な行為はできないということなんだろう。
本作ではそうした軍隊生活が写実的に描かれていき先日観た『海と毒薬』のような台詞での説明的な描写に偏っていないのがよかった。
ただし古い映画だからなのか、削除された部分があるのかフィルムや音声が悪いのは仕方ないとしても明らかに場面が跳んでしまう箇所が幾つもあるのが気になった。名場面というのか写真でみた場面まで無くなっているようだった。

以前観た映画で兵隊に入った年数が古いほど偉い、というのを知ったけどこれを観ても2年兵なのか3年兵なのかで違いがある。主人公は服役しているが4年兵になるのでここでは最も古参で威張れるわけである。
主人公の来ている服が上等だというのの説明がなかったので想像だが、戦争も終わりに近づくほど服装の質も落ちたのだろうか。主人公は古い兵士なので服がいいものなのかな、と思ったのだが。

とにかく戦争や軍隊がどんなに理不尽で恐ろしいものなのかは何度も教えてもらった。
こうしてDVDでそういう映像を観ているだけの自分がどんなに幸福なことか。しみじみと思う。

監督:山本薩夫 出演:木村功 利根はる恵 神田隆 加藤嘉 下元勉 川島雄夫 三島雅夫
1952年日本


ラベル:戦争 軍隊
posted by フェイユイ at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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