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2010年04月12日

『日本のいちばん長い日』岡本喜八

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自分も含めて戦後生まれで戦争を体験していない日本人はこの映画の原作がノンフィクションであるのは信じ難いのではないんだろうか。且つ脚本が橋本忍であると知ればそうそう嘘ではないのかと次第に恐ろしくもなってくる。岡本喜八監督の個性的な脚色があると考えてもあの終戦を告げる玉音放送の前日がこんな凄まじい一日だったとは。だが製作者たちも俳優陣も戦争そして終戦を体験してきた人々が多いはずのこの映画なのである。もし同じ話を戦争未体験の若い世代が作り直したらここまでの狂気は過剰だとしてもっと大人しい演出に変わってしまうに違いない。当時を過ごした方には申し訳ないがそれほどの異常さ、滑稽さを感じてしまうのだ。またそういう精神状態でなければ戦争の中に入っていることができなかったのだと思うとやはり悲しく恐ろしいものだと感じさせられる。岡本喜八監督作品は反戦を願うあまり酷く狂気じみたおかしく思えるのだが本作もまた非常にシリアスながらそれが逆により滑稽じみてくるという凄まじいコメディなのかもしれない。そういうことを書くこともやや怖いのだけど。

戦争を終わらせる、という今の目からみればほっとするだろうと思える事柄がこんな大変なことだとは。
「最後の最後まで戦い抜く」と教えられそれが骨の髄まで沁み込んでいる人間に突然「止めろ」と言って止められるものではないのかもしれない。敵との戦いで死なずに生き延びた人間が味方の手によって殺されてしまう。それほど人間の脳に植えつけられた呪縛は簡単に解けないのだ。
直接戦いに赴く軍人であるほどまた年寄りよりも若い実戦者たちほどその呪縛は強いのだ。今の人間から見れば彼らも生きた時代さえ違えばごく普通の若者であり得たかもしれなのに戦時教育の呪縛は彼らを捕えて放さなかった。
作品は戦争によって膨大な数の人々が虚しく死んでしまったことを憂い二度とこういう悲劇が起きないことを願って終わる。自国だけでなく世界中に平和をと願いたい。

しかしまた、こうした狂気は戦争時には特に強烈に起きるが平時でも異常な状態で生まれてしまうことがままある。
精神を捻じ曲げられながら、それと判らない。どちらにしてもそういうことが起きて欲しくないものだ。自分の身にも。他の人にも。
とはいえ、それが完全に無くなることは難しいのだ、どうしても。

監督:岡本喜八 出演:三船敏郎 山村聰 志村喬 笠智衆 伊藤雄之助 佐藤允 戸浦六宏 井川比佐志 久保明 小林桂樹 宮口精二 加山雄三 島田正吾
1967年日本


ラベル:戦争 サイコ
posted by フェイユイ at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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