映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年04月18日

『エレファントマン』デヴィッド・リンチ

ElephantMan.jpg
The Elephant Man

この映画は若い頃、特に自分に強い影響を与えてくれた作品の一つである。
当時、話題にもなり非常に衝撃を受ける内容だった。仲間内でもこの作品が感動的なヒューマニズムなのか偽善的なのかということでケンケンガクガクもあったりした。
監督のデヴィッド・リンチは今でこそ常に異質で難解な謎の映画を作りだすことで有名な鬼才の監督だが、その頃はまだ無名であったのだ。が、そうこうするうちに同監督の前作映画『イレイザーヘッド』が公開され「おや、この監督はちょいと違ったみたいだぞ」と気づかされ『エレファントマン』が単なるヒューマニズムなどという見解から作られたものではないんじゃないかと馬鹿な若者なりに感づき始めた。まったく無知だった私も世の中にはフリークスと呼ばれる人々とそれを愛する人々がいることがようやく飲み込め出したのだ。それ以前も江戸川乱歩などが好きだったくせに世の中のそういうことにはまったく気づいていなかったのだからしょうもない。
無論リンチ監督がその後、ドラマ『ツインピークス』や『ブルーベルベット』『マルホランドドライブ』などでそうした気質を大いに表現し誰もが認める特異な映画監督になっていった。今となればリンチ監督の作品タイトルの中の『エレファントマン』を偽善的かどうかなど論じる人はいないのではないだろうか。
ともあれ自分はこの作品を観た時から一つの作品がもしかしたら別の意味を持つかもしれないこと、をようやく認識したのであった。

そしてそういう思い出を抱えて久しぶりに(本当に久しぶりだ)『エレファントマン』を観たのだが、思いのほかストレートに感動してしまった。昔あれこれ考えたことなどどうでもいいくらいに。
これは最初に感じたことだが非常に美しい映画なのだ。そう思うのはもしかしたらリンチ監督の持つ特別な感情のせいかもしれない。
この映画の中で特に印象的なのはロンドンの病院から興行主に連れ出され再び見世物の怪物として扱われるメリックが猿の檻に入れられているのを他の見世物小屋の人々から解放してもらう場面だ。巨人や小人などメリックを不憫に思う彼らと松明を持って森の中を歩いていく場面は不思議な夢を見ているようでリンチ監督はこの場面を撮りたいが為に本作を作った気がするのだ。

メリックのことを心から心配するトリーブス医師や彼に希望を与える女優ケンドール夫人などとの会話には素直に涙してしまう。それはやはりリンチ監督が本作に対して真摯に向き合ったからに違いないと思うのだ。
これはDVDの中に収められているメリックがいたロンドンの病院に属する人物の証言とも言えるコメントからよく伺える。彼の説明を聞くと実際のメリックとリンチ監督が作ったメリックとの違いを示唆されながら
この作品が当時の病院と彼に関係する人々をいかに上手く表現していったのかがよく判る。
また実際のメリック氏は映画の彼よりもっと自由で前向きであれほどの酷い待遇は受けていなかったと知れたのにはほっとした。別の監督であればもっと軽い調子の面白い映画にもなれたかもしれない。リンチと言えばこの重く暗いタッチが必定でもありそれがあるからこその感動もある。
若い頃の思い出も蘇りながら再び感動を覚える作品だった。

監督:デヴィッド・リンチ 出演:ジョン・ハート アンソニー・ホプキンス ジョン・ギールグッド アン・バンクロフト
1980年アメリカ/イギリス


posted by フェイユイ at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。