映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年04月30日

『戦場のレクイエム』馮小剛 (フォン・シャオガン)

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集結合

久しぶりのフォン・シャオガン監督作品。先の『女帝』を別にすればコメディの大御所というお方である。ところが本作はのっけから重厚な戦闘場面が続きしかもその容赦ない過激な描写は今流行りというべきなのか「徹底したリアル」と評されるようなもので自分的にはそういう「リアル」というのはさほど感激はしないのである。猛烈なスピードで展開される残虐な戦闘場面体が裂け肉片が飛び尚且つ突き進んで血飛沫があがる、という『プライベートライアン』的戦闘場面が最上と評価をしたくない者である。本作の前半はまさにそういう「リアル」(と言われてもそれがリアルなのか私には判らない)な描写であり且つやや過剰な感動場面があちこちに配されている。つまり部下思いの勇敢な上官である主人公谷子地(グー・ズーティ)と彼を慕う兵士たちの姿の描き方が中国的或いはアジア的というのだろうか日本人にも通じるものなのだがややべたべたと感じられてしまう。
ところがこの前半を過ぎた後から物語の調子は変わっていく。
准海戦役の熾烈な戦闘で連隊の部下全員を戦死させてしまったグーはただ一人生き残りだが自分も目に傷を負い僅かしか視力が残っていない。ところが彼の連隊は遺体が確認されない為に兵士たちは皆失踪扱いとなる不名誉しか与えられなかった。軍にも運命にも失望した彼は周囲から冷たい目で見られながらも部下である戦友たちの遺体を見つけようと山を掘り返し続けるのだった。
なんとこれも昨日の『ミッシング』と同じ、愛する人を探す話であったのだ。
彼がどんな思いで彼らを愛していたのかを示す為に前半の激しい戦いと主従の深い親愛を描く必要があった。それは省いてもよかったかもしれないがだがもしなければ同じ気持ちで観れたかどうかは判らない。
前半やや醒めた目で観ていたのだが、後半になってからのグー隊長はもう冷ややかには観ていられなかった。
戦闘であれほど勇敢で男らしく見えていた彼が戦争が終わればただ頭のおかしい老兵としか見てもらえない。
グーが見えない目で死体を捜す為に山を掘り返し続けるのを周囲は憐れみの目で見るだけだ(とはいえそれは優しいと思ったが)
グーの遺体探しは無謀だったが、彼に恩義を感じて接してくれるアルドゥや元ラッパ吹きの兵士たちの奔走で彼の連隊は国の為に勇敢に戦死した烈士として勲章を受けることになった。
他から見ればそれは些細なことにしか思えなくてもグーにとってはどんなにか大切なことだったろう。
最後はここ最近ないほど涙が溢れて困ってしまった。
グーの同期であるリウに怒りを爆発させた後、やはり友のことを思う姿に胸がつまってしまう。

最後にグー・ズーティが両親を赤ん坊の時に失い拾われて育てられ名前を与えてもらったことが記される。
過酷な運命にありながらどこか他の人に助けられる支えもある。赤ん坊の時は別としても彼の人格がそうさせた、と思わせてしまうのは彼を演じた張涵予の眼差しのせいかもしれない。

追記:主人公に「最後まで戦え」の指令を下す戦友を胡軍(フー・ジュン)が演じている。中国メジャー映画監督シャオガンの配役として今迄にない地味な無名俳優が使われている本作で一番外国でも有名な役者で、やはり知ってる顔を見るとなんだか入りやすい。もっと観ていたかったけどね。

監督:馮小剛  出演:張涵予 ケ超  袁文康
2007年中国


ラベル:戦争 歴史
posted by フェイユイ at 23:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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