映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年05月04日

『四川のうた』賈樟柯(ジャ・ジャンクー)

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二十四城記

ずっと観なきゃと思いつつ最近の嗜好と異なる題材であったので後回しになっていた。
今回珍しく観る前に若干予備知識を仕入れたところ、本作は元々ジャ・ジャンクー監督がドキュメンタリーを撮るつもりで取り壊される工場で働いていた人々とそれに関係する人々のインタビュー撮影をしていたのだが途中でそれらをまとめ実際の人たちと俳優の演技による映像を織り交ぜたほうがよりリアルで面白い作品になるのではという発想で作られたものであるらしい。
監督によれば出演した俳優陣は中国では有名な人ばかりで誰もがこの部分は演技だと判る、のであるらしい。中国には『三国志』と『三国志演義』があるが人は『演義』つまり面白く脚色したものに惹かれるのだと言う。
なるほど、そうかもしれない。ただし「有名な俳優ですぐ演技と判る」という部分と本物の人、の区別が私にはできなかったのが残念だった。皆俳優のようにも素人のようにも思える。
「工場のマドンナ」であったと言う女性と最後の若い女性はさすがにちょっと違う美しさであったが。
工場で働く人のドキュメンタリーだが女性が目立つほどなのはやはり共産主義であったせいだろうか。典型的な3人家族、という言葉もまた中国らしい。

そして映像の独特の美しさにも惹かれる。
美しい、と言っても一般的に言う綺麗さとは違う質のものだ。長い年を経て老廃化した工場の佇まい、殺風景な中国の建物などがジャ監督にかかると奇妙にも美しく見えてきてしまうものなのか。もともと自分が工場萌え的な要素があるせいなのか。古びた機械とそこで働く人たちの姿に見入ってしまうのである。
それは監督のどの作品でも感じられる殺風景な美かもしれない。
またどの映画にもあるジャ監督特有の微笑ましい遊び。今までもTVで『男たちの挽歌』があってたりレスリー・チャンの歌が流れてたり突然遠景にUFOが飛んでたり少女の部屋にジェイ・チョウのポスターが貼ってあったり、と時代を反映しながらちょっと笑わせてくれる遊びがあったのだが本作では工員が昔語りで「山口百恵の『赤い疑惑』」を持ちだし何故か百恵ちゃん本人ではなく中国の歌手らしい歌声が流れ(歌詞があちこちおかしな発音になるのですぐ判る)恋人の髪型が百恵ちゃんと同じだったと言うのである。
また最後の若い女性が恋人と住んだマンションの名前が花様年華、というのが愉快。本当にあるのかな。

こうしてあちこち結構楽しみながら、中国の移り変わりを感じさせる工場で働いてきた男女の話に聞き入る。
ソ連のミグを修理してきただとか工場と言っても軍部のようなもので遠い故郷から工場へ向かう航路の途中で子供を見失っても探すこともできなかったとか昔は残業ばかりで真面目に働き続けたのに世の中の変化で工場が廃れリストラされた工員たちの嘆きだとか、から若い人たちの意識の変化まで様々であった。

ジャ・ジャンクー監督の、次は清朝末期の物語や時代物も手掛けてみたい、という発言にも期待してしまう。
ちょいと変わった仕掛けがまた観れるかもしれない。

監督:賈樟柯(ジャ・ジャンクー) 出演:ジョアン・チェン チャオ タオ チェン・ジェンビン リュイ・リーピン
2008年中国


posted by フェイユイ at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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