映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年05月19日

『愛しきベイルート アラブの歌姫』ジャック・ジャンセン

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We loved each other so much

先日『戦場でワルツを』(原題訳『バシールとワルツを』)という恐ろしいアニメーションを観たばかりだが、その舞台となる15年続いたレバノン内戦の間もベイルートに留まり歌い続けたという。
彼女自身はキリスト教徒らしいが様々な宗教の人々が住むレバノンで誰からも支持され愛されている、彼女への賛辞と敬愛の言葉がそこに住む人々の姿と共に映しだされる。

変な言い方だが、ベイルートと聞くだけでどんな緊迫感のある町の様子が映されるのか、と思ってしまったのだが映像で観れるのはどこででも感じられるような風景であった。とはいえ町に住む人々は年を取っている人ほど昔はこの町がどんなに平和で美しかったかと語る。宗教の差別もなく町に住む人は皆仲良く街並みも文化も素晴らしかったのだと。
一体どうしてそんな平和な町が内戦状態になり『戦場でワルツを』で見せられたような残虐な殺戮を体験しなければならなかったのか。
すでに有名で豊かであったファイルーズ(発音はフェイルーズと聞こえるのだが取り敢えず書かれている通りに書いておく)はそう思えば国外へ逃げることもできたのにその地に留まり歌い続け人々の安らぎとなった。
老いも若きも男女問わずファイルーズを女神として敬愛している。その歌は祖国レバノンへの愛を歌ったものもあり恋人への思いを訴えたものもある。そして類稀な美貌。何故神様は美しい声と美しい容姿の両方を一人の女性に与えてしまったのか。やはりそれは苦しむ人々へのせめてもの贈り物だったのだろうかとつい思ってしまう。一人の男性がファイルーズのコンサートで夜の空が真っ暗であった時彼女が「何故月が見えないの」と歌うとぱっと雲が去り月が輝いたという不思議な話をする。そういう伝説がカリスマには付き物だ。
そういった様々な物語や彼女への愛が苦しい時期の人々を支え続けてきたのだろう。そういう時期には誰しも心を守ってくれる物が必要なのだな。

惜しむらくはファイルーズが歌う映像がたった一つしか収録されていなかった。それは最後だったのでそれまでは人々の話と幾つか見せられる写真でよかったのだが、一つ歌う場面を見せられてしまうとせめてもう幾つか取り入れていて欲しかった。きっと誰もがそう思うのではないだろうか。

監督:ジャック・ジャンセン 出演:ファイルーズ
2003年オランダ


ラベル:歴史 戦争 音楽
posted by フェイユイ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 西アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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