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2010年05月23日

『セントアンナの奇跡』スパイク・リー

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MIRACLE AT ST. ANNA

よく練られた複雑な物語なのであるが、その長さと饒舌な内容に沈鬱な気持ちに襲われてしまう。というのは長さに辟易したと言うより、核心をあまり目立ち過ぎないようこの長さが必要だったように思えるからだ。
第二次世界大戦。イタリアを舞台にしてアメリカ軍とナチスそしてパルチザンの戦いがある。今迄の殆どの映画は白人がほぼ占めていてアメリカ軍であっても黒人兵士が活躍した話などあったのだろうか。或いはかっこいい白人兵士の勇敢さを見せる為に無残に攻撃された黒人兵士を助ける白人兵士なんていう場面の為に登場したかもしれない。もしくは料理担当だったかも。せいぜい一人登場する程度なのでキャラクターも決まりきったものになってしまう。ここで数人の黒人兵士たちにそれぞれの性格分けをしているようなそういう表現など望むこともできなかったはずだ。
タイトルの『奇跡』はイタリア・セントアンナでナチスに襲われ逃げ延びた愛らしい少年を救ったアメリカ黒人兵士が長い時を経て奇跡に出会う、ということを示しているのかもしれないが、むしろ自分にはイタリアで彼らが白人達と何の差別意識もなく交流ができたことを意味しているようにさえ思えた。突然アメリカ黒人兵達に入りこまれたイタリア人家族は怯えるがそれは彼らが黒人だからではなく敵国であるアメリカ軍人だからであり彼らを汚いもののように蔑むアメリカ白人たちの対応とは全く違うものであった。
暫くして落ち着いた彼らは黒人兵達を教会でのダンスパーティに招きダンスに誘う。素晴らしい美人のレナータにも侮蔑の気配はまったくない。彼女の目にはただ異国の男性としてしか映ってないことを黒人兵達は感じてしまうのである。それは今迄受けた白人女性の視線から感じられることのない好意であり彼らにとって奇跡と言っていいのではないんだろうか。私にはこの映画が語りたい部分はまさにここであるのにそれをあまり露骨に表現するのが気恥ずかしく様々な出来事で隠してしまったような気さえしてしまうのだ。しかも黒人兵ヘクターと白人女性レナータの絡みはあまりアップではなく影になってよく見えないキスと服に手をかけたところで終わっており強烈な台詞のわりには気の弱い展開であった。アメリカが舞台で白人女性とこのような場面を撮るのは無謀であるらしいからいくらイタリアであるとはいえぎりぎりの挑戦だったのかもしれない。
またヘクターはイタリア語も上手いのだが、これも白人が主流の映画ではほぼ観れない光景なのでは。無学な黒人兵が白人兵より外国語が上手いわけはない、ということで黒人ヘクターが流暢にイタリア語を話すのも他では観れない特別な場面なのでは。(ここんとこ『イングロリアス・バスターズ』でのブラッド・ピットのど下手なイタリア語を思い出すとより一層面白いかも。大体においてアメリカ人は外国語を話せず相手に英語を話してもらうものだ)
また可愛らしいイタリア少年が大きな黒人兵トレインになついて離れないのもまたしかり。彼をチョコレートと間違えてぺろりと顔を舐めるのも今迄観たことのない行為かもしれない。
そしてナチスとの激しい銃撃戦。これまで第二次世界大戦で黒人兵がこんな活躍をすることもなかったろうし作中での台詞もあるように黒人は掃除か料理をするだけで勇敢に戦うなんて思ってもいなかった、ということに対しての抗議のように見えてくる。
いわば今迄白人兵士であれば色んな映画で表現されていた外国でのラブシーンや子供へのいたわりや敵との勇敢な戦いなどを黒人兵も同じようにできるはずだ、という映画のように思えてなかなか胸が詰まってくるような沈鬱さを感じてしまったのだ。
こういう枷を感じさせず当たり前に自然にさらりと黒人主演の映画というものがアメリカで作られる、差別意識などと言う言葉など全く忘れていた、なんていうことはあるのだろうか。いやまさか、ない、ということはないだろうね。

この奇跡に比べれば再会の奇跡はそう奇跡ではないかもしれない。

監督:スパイク・リー 出演:デレク・ルーク マイケル・イーリー ラズ・アロンソ ジョン・タトゥーロ
2008年アメリカ

記者役でジョセフ・ゴードン=レヴィットが出演。可愛いよね。


ラベル:戦争 歴史
posted by フェイユイ at 01:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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