映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年05月27日

シベリア抑留

先日NHKクローズアップ現代で『シベリア抑留 終わらない戦後』と言う番組があった。私は途中からしか観れなかったのだが改めて考えさせられた。

というのは最近、シベリア抑留について知りたくなり、図書館へ行って本を幾冊か読んだばかりなのだ。あったのは『戦後強制抑留史』というまだまっさらな全6巻とちょうど番組に出演されていた辺見じゅん氏の『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』そして斉藤四郎 著 / 船木拓生 編『シベリアの静寂、いまだ遠く』という数冊だった。
抑留史というのは数は多いのだが何しろ中身が統計的記録的なものが殆どなので素人には内容が掴み難い。やはり細かく状況説明がある他の2冊が非常に素晴らしかった。

辺見じゅん氏の著書は受賞もしていると言う作品で山本幡男さんという一人の抑留者を主人公にして彼が極寒でのシベリアの過酷な労働生活の中で仲間を励まし常に前向きで誇り高く生きていたのかを優れた筆致で描き出している。
明日をも知れない状況で仲間と共に芸術や学問を続け必ず帰れるのだと皆に言い続けた12年間。そんな彼に対して仲間の思いと行動に胸を撃たれてしまう。
彼自身はロシアが大好きでそれだからこそロシア語にも堪能だったという人である。なんて皮肉な運命なんだろう。

もう一冊の『シベリアの静寂、いまだ遠く』は実際に抑留体験のある方の文章を別の方が編集されている著書で、もっと生々しい体験が描かれていた。辺見氏のは作家としての一つの作品で読んでいる間はただ感動だったがやや美しすぎるのかもしれない。こちらは男性としての性の問題(と言っても栄養失調で何もできなかった、という問題だが)や餓えた人間はもはや尊厳もなくしてしまう悲劇などが描かれる。また美男子であった仲間がソ連兵や奥さん方に気に入られて優遇され彼だけは食事も衣服も与えられていた、というような事実もあったのだ。多くの人が1年目の冬を越せず、田舎育ちで野草に詳しく体が小さいほうが生き残れる、と書かれていた。

ポツダム宣言などの抑制もきかず、戦後であるのに57万以上の人々が抑留され多大な死者を出すほどの極悪な条件で過酷な労働に従事させられた彼らには何の保証もないばかりか帰国後酷い差別を受けている人も多かったらしい。また中には16歳の民間人もいたという。
戦後65年経っても今だ調査が済んでいないからという答えしかかえって来ない日本社会。本人はもとよりその兄弟子供も高齢化してしまった今ではただ時が過ぎ去るだけということなのだ。

先日ドイツ映画の『6000マイルの約束』というシベリア抑留から脱走した兵士の映画を観たが、日本ではこの題材の作品というのも殆どないようだ。「触れてはいけない」ということなのだろうか。

シベリア抑留 ロシア人の手で初上演


ラベル:歴史 戦争
posted by フェイユイ at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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