映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年06月05日

『アンナと過ごした4日間』イエジ・スコリモフスキ

Cztery_noce_Anna_noce_2775205.jpg12490.jpg21544_15.jpg117988_1.jpg
cztery noce z anną

お婆ちゃんと二人住まいの内気な中年男がレイプ嫌疑をかけられ投獄。出所してからその原因である女性アンナの部屋へ四晩通いつめ再び侵入・泥棒・レイプ未遂(?)の嫌疑で投獄される。再再度出所した男は再再度女性の元へ急ぐが。

主人公台詞字幕が「婆ちゃん」ってなった時、主人公も「ばあちゃん」って言ったんで驚く。ポーランド語も「婆ちゃん」は「ばあちゃん」?実は「バブチャ」であった。へえー。

圧倒されるほど徹底して暗く重い背景が美しい。どの場面を観ても飾られた絵画のようだ。時系列が入り乱れ台詞は殆どなくやや精神を病みもしかしたら知能にも不安がありそうなみすぼらしい中年男が主人公である。その男が「愛」を感じる女性は時の経過とともに年齢も重ねたように見えたが男はずっと中年男としか見えなかった。
時系列がシャッフルされているので混乱するが出所後に病院の焼却炉で働いている為酷い臭いと手の汚れが沁み込んでしまっている。
その男が愛してしまう女性も病院で働く看護師であり男が四晩を過ごす頃には顔にも疲労と年齢が深く刻まれている。
イェジ・スコリモフスキーという名前すら知らなったのだが、緻密に組み立てられた素晴らしい作品だ。重厚でありながらユーモアが隠されている。この感じはロマン・ポランスキーにもつながる気がするが、なるほど1962年『水の中のナイフ』でスコリモフスキーが脚本、ポランスキー監督なのだった。
日本男性の起こした事件がヒントになったという本作は、確かに監督の冷静な目で作られているようだ。
内気な為ストーカー行為に及ぶレオンに対し、甘ったるい救いを与えたりはしない。出所後彼は別に泥棒の嫌疑をかけられ(それがヒントで彼は指輪を贈るのだろうけど)冤罪であるレイプ事件についても侵入についてもアンナは「あなたは犯人ではないけど」と承知した上で指輪を返し二度と会わない、と告げる。
最後思いつめたようにアンナの家に向かって急ぐレオンの目の前に高い塀がそびえ立ちアンナの家に近づくことも覗くこともできなくなっていた、というこのラストは辛辣で何となく監督の意地悪な笑い声が聞こえるようだ。私もつい笑ってしまったんだけど、鬼か。

この冷たい笑いについ司馬遼太郎氏の『人斬り以蔵』を思い出してしまう。全然話は違うのだが、あの小説において司馬氏は珍しく主人公を嫌っている。あまりにも醜く惨めに蔑まれた以蔵の描写なのだ。
あれほど嫌っているわけではないが本作のレオンの描き方も情け容赦なく悲哀に満ちている。一途に愛しても見返りすらない。(これは以蔵が武市を思う気持ちと似てるなあ)
以蔵を読んでいると虫唾が走るのにも関わらず武市への一途さに惹かれ何度も読み返してしまう。レオンもやはり気持ち悪いのだが何故か見入ってしまうのだ。

真夜中のヘリコプターの場面(といってもヘリは映っておらず音と風と光でそう感じる)が印象的だった。

監督:イエジ・スコリモフスキ 出演:アルトゥル・ステランコ キンガ・プレイス イエジー・フェドロヴィチ バルバラ・コウォジェイスカ

2008年ポーランド/フランス


posted by フェイユイ at 00:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。