映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2006年10月22日

「僕と未来とブエノスアイレス」ダニエル・ブルマン

ブエノス.jpg

ブエノスアイレスの小さな商店街でランジェリーショップを経営する母と暮らすニート状態の青年のお話。

ガレリア(アーケード商店街)はアルゼンチンの経済状況をそのまま表してるが如くナンとも沈滞ムードが漂っている。
登場人物も年配の男女が多くてしかも若者(といっても30歳くらい)である主人公アリエルはまともに仕事もせずぶらぶらしながらポーランド人になってヨーロッパに行こうと思いつめてる。そんなアリエルの父親は彼が生まれて間もなくイスラエルへ戦争へ行きそのまま帰ってこないのだ。
そんなある日父親が突然帰ってきてアリエルの心は思い乱れてしまう。

アルゼンチンのごく普通の人々の生活を描いたものなのだと思う。なんだかこうやって観ていると私の周囲の状況とあんまり変わらない。街並みなんかも同じみたいな気もする。
アルゼンチンと言うとサッカーやらタンゴやらそして勝手に治安が悪くて怖い場所のような印象と人間もやたら情熱的なような気がするけどこの町の人々は少なくともご近所さんみたいである。
例えばお母さんが息子にバターナイフを差し出して「これで私を殺してちょうだい」なんて。
再会したお父さんとも意地張って何も話さないまま早歩きで競走したりしてかなり情けなく普通っぽいのだ。
そんな面白い雰囲気を出しているのも主人公がブエノスアイレスでのポーランド系ユダヤ人という設定(監督自身がそういう人物)だからだろうか。
そしてこのガレリアには様々な人種が住んでおりそれ自体がアルゼンチンの縮図なのだという(その辺はうちの近所とは違うけど)
中には韓国から逃げるようにしてやってきたと言う若い夫婦がいてなぜだか風水の店をやっている。しかもそれはアルゼンチンに来てから学んだのだという。それはそうだろう。どう見てもその店はインテリアからして中国風でして周囲の人はどうでもいいんだろうけど東洋人としてはちと気になる。

モラトリアムな時間をすごしている青年アリエルがこの狭い町の中でこれまたいかにも今風に大人になろうとしている姿が映し出される。
長い間会えなかった父親との再会を拒みながらも会いたいと願っている。父親との駆けっこで何かを吹っ切ってしまったのかもしれない。

そしてそれ以上にかつてポーランドでナチスによる怖ろしい迫害を受けた祖母が一度忘れようとした歌声を取り戻しプロの歌手を目指すというラストはなかなか心憎いものであった。

監督:ダニエル・ブルマン 出演:ダニエル・エンドレール(ウルグアイ出身で「ウィスキー」にもカメオ出演していたそうな)、アドリアーナ・アイゼンベルグ
2003年 アルゼンチン、フランス、イタリア、スペイン合作


posted by フェイユイ at 23:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 中南米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
パッケージの主人公がカワイイなと(笑)、なんとな〜く借り、脱力しつつ見出してすぐは「アレェまたこれ私の嫌いなハンディーカメラだしぃ」などと気落ちし居眠りしたりしちゃったのですが(笑)、なんとな〜くそのまま観ていくと、気付いたのです☆まず母と祖母役の役者の旨さに。次に脚本(台詞)の良さに。つまりハンディキャメラ画面でも字幕をひたすら読んでれば酔わない^^:・・いやそうじゃない・このハンディキャメラはブレがなくてつまり主人公の主観できっちりくくられた画(え)であり、そのズームにも細かい感情表現があるような。ピシッと止まるとこは止まる。『ボーンアルティメイタム』の時みたいに酔って気持ち悪くなったりしないし(爆)。そうこうしてるうちこの作品に登場している商店街の人々がどんどん愛らしく見えてきた(慣れて来たのネ^^;)。彼等の事情とかが解ってきたし。そして真打のおばあちゃん。素敵な歌声!涙無しでは見られなかった!!美しい歌声に感動。。
いやぁ欧米の作品にはない感覚でした〜「珍しい」というか、慣れるまでに時間がかかったのですが、むしろ馴染むと忘れていた日本人の昔の感覚、というような雰囲気に包まれました。・・お母さん、ボーイフレンドつくったりして可愛いなあ。でも息子を(至極当然ですが)深〜く愛しているんだよね。あの焦燥感は、夫に続き(多分もっと愛している)息子が遠い所へ旅立ってしまうのが嫌だったのだと、私は思いました。
この雰囲気も引きずって是非この次は『ウィスキー』に挑んでみようかと。
Posted by フラン at 2008年03月05日 14:29
アルゼンチンだけでなく南米というと暴力&性の過激なイメージですがこれはなんだか親しみやすかった記憶があります(笑)
可愛くてでもちょっと経済的に苦しい庶民感覚。
こういう感じの南米映画も観て行きたいのですがねー。
フランさんがちょっと南米にはまっているので嬉しいですねー(笑)
Posted by フェイユイ at 2008年03月05日 17:00
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