映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2006年11月04日

「ガルシアの首」サム・ペキンパー

ガルシアの首.bmp

男には過去がある。そして女にも。
ベニーとエリータはすでに死んでしまったガルシアの首を手に入れるために墓場へと車を走らせる。
その道行きは「俺たちに明日はない」を思い出させるがあちらは絶世の美男美女だったのにここでの二人は中年にさしかかりすでに人生にくたびれた感じが漂う。
ベニーとエリータは特定の恋人だったわけではない。多分腐れ縁といった風にずるずると或いは時折肉体関係を持っていただけのようだ。

二人組みの男から「ガルシアという男を探している」と話しかけられた時からベニーの人生は狂いだす。が、今は場末の酒場でピアノ弾きをしているベニーがただ平凡な男だったとは言い難い。それは彼が自分から危険な扉に入って行ったこと、その口ぶりやすでに死んでいたガルシアの首を切り落とす為に大型の刃物を購入したことなどから簡単に推察できる。多分何かしらの過去があり、酒場のピアノ弾きをやっていたに過ぎないのだろう。

ガルシアが最後に一緒にいたのがベニーと懇ろにしていたエリータだったと聞きベニーは心穏やかではない。ここでベニーと探し出さねばならないガルシアがエリータによって繋がる。
ベニーとエリータは恋人同士ではなかった。ベニーがエリータを連れて旅に出たのも最初は都合よくガルシアの墓への案内をさせるためだけだったのかもしれない。
だが旅をするうちに二人は次第に打ち解けていく。エリータはベニーの心を推し量るように「言葉にして言って」と言い「結婚してくれ」とベニーが口にした時、エリータは泣いてしまう。ベニーはエリータを抱きしめる。色々な思い出が二人にはあるのだろう。長い年月を経た男女の愛し方であり子供には判らない愛なのだ。

結局「金などいらない」というエリータの言葉を無視してガルシアの首を手に入れようとしたベニーはひきかえに愛するエリータを殺されてしまう。

それからのベニーは狂気に満ちたものとなる。その演出は凄まじく鳥肌がたつようだ。ガルシアの首を取り返したベニーはその首を車の助手席に乗せ走り出す。今は何でもCGで露骨にそれを作り上げ映し出すが、「ガルシアの首」は常に布や袋で隠され顔自体が見えることはない。隙間から黒髪や顎の先がはみ出しているだけだ。その事が首をより意識させ恐怖感を増す。次第に蝿が殖え車の中をとびかう。ベニーはその袋に氷をいれ冷やそうとするがそのことで中の顔に蛆がわき腐れ堕ちていっていることを想像してしまう。
このガルシアの首の表現がまったく見ものである。

そして次々と行われる殺人には何の救いもない。無辜の人々までもが巻き込まれあっけなく撃ち殺されてしまう。

そのすべてが娘を傷物にしたという富豪の男のエゴイズムからくる復讐のためなのだ(しかもその男は怒りで娘の腕をへし折る)
愛する女が殺されもう何もかも失ったベニーの最後の戦いは死へと走りぬけるものでしかなかった。

監督: サム・ペキンパー  出演: ウォレン・オーツ 、イセラ・ベガ
ギグ・ヤング 、ロバート・ウェバー 、クリス・クリストファーソン
1974年 アメリカ

ところで殺し屋の二人組は絶対恋人同士だと思うけど。言い寄ってきた女を思い切りぶっ飛ばしていたしね。彼らのラブストーリーでもあったり。


ラベル:暴力
posted by フェイユイ at 21:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさん、お久しぶりです。遅ればせながら、サイトのご転居おめでとうございます(←めでたいのか?)。

ペキンパー作品は、私も昔テレビ放映を見て大好きでした(劇場で見たことはないのです……)。『わらの犬』や『ゲッタウェイ』。もう『コンボイ』あたりでは、記憶の中で「新しい」という感じがします。今は、テレビではなかなか面白い作品をやらないですね。

『ガルシアの首』と来れば、次は『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』ですかね?
Posted by 石公 at 2006年11月06日 03:10
ありがとうございます(笑)

お察しのとおり狙っていたのですがなかなかレンタルできなくて、やっと見れそうです「メルキアデス」やはりこういう路線ですか。
マット・デイモンの「すべての美しい馬」を観てサム・ペキンパーが観たくなりしばらく観ていこうと思っております。
ペキンパーとかテレビで観る映画ってイメージです(私だけかもしれませんが。昔そうやって観てたからというだけですね)
よくテレビで西部劇なんかも観ていたんですがさすがに最近はやらないようですね。たまには何気なく観たい気持ちになったりとか(マカロニ・ウェスタンも)これも私だけかも(笑)
Posted by フェイユイ at 2006年11月06日 15:35
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