映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年01月09日

「シッピング・ニュース」ラッセ・ハルストレム

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最近好きになった映画を思い出してみるとどうしようもないほどの不幸に襲われるという映画が多い。
これは自分の選択のせいなのだが、どうしてもそういう不幸の中でもがき苦しむ主人公が物語が進むにつれ何らかの安らぎ、何らかの答えを見出す、という物語を好んで観てしまう。

映画というのはある人間が作り出した物語なわけで作者が持つテーマを表現するためにある主人公が選ばれ、ある設定に置かれる。
そこからどう主人公が考え、感じ、行動し、何を得ていくかまたは捨てていくのかが問題なのだが。

結局は自分が求めているテーマを満足させてくれる創作者を探して繰り返し繰り返し疑似体験をしているかのように思える。
では自分は主人公が不幸である事を求めている、のだろうか。
この作品やその他も単に「リアル」という言葉を通り越してしまい「こんな怖ろしい不幸があるのだろうか」と疑問すら感じるからだ。
私が観て来た多くの作品にはそういった傾向がある。

この作品の中で主人公クオイルは父親によって水に投げ込まれるが「犬掻きもできない落伍者」というレッテルを貼られてしまう。後になれば新聞社で文章もかいているのだからそれなりの才能はあるはずなのにどうしてもそのレッテルを自分から剥がす事ができないでいる。
容姿も悪く、ぐずで役立たずの大男、というわけだ。気まぐれな運命のように美女と結婚できたものの妻は男と遊び歩きついには逃げ出して事故死してしまう。
ただクオイルの手には彼女との間の娘があった。それだけはクオイルの幸せである。
クオイルの父親の死後、突如現れた叔母(父親の妹)とともにクオイル父娘は北の小さな島ニューファンドランドへ移り住む。
そこは父祖の地であり、五月になっても雪が消える事のない凍りついたような寒い島なのだった。

クオイルは憐れな存在だ。長い間、ぼんやりとした青春時代をやり過ごし愛する(愛されてはいなかった)妻の死後に住むことになった島は酷く寂しく寒い風と冷たい波だけが存在するような場所である。
娘は引っ越してからやや異常な言動をするようになった(幽霊を見たり、人形を叩きばらばらにしたり意地の悪い事を言ったり)
そして彼はそこでクオイル一族の呪われた伝説を聞く。そして移り住んだ家も呪われているのだと。
まるでクオイルのそれまでの屈辱的な日々は父祖たちの犯した罪の罰ででもあるかのように。
そしてその呪いが解けたかのように父祖たちが残した古い家が風で崩れ落ちる。
水を恐れたクオイルが最後舟で海の上を走っていく姿はこれからのクオイルを表しているようだ。

こういった物語ばかり追い続けていると不幸自慢というか不幸合戦のような状態になってしまう。どれだけ登場人物を不幸にできるかの競争である。
ただ、映画(小説もだが)は筋だけを追うわけではない。
勿論それを表現する人物(役者)音楽、舞台、台詞、そういったものの魅力。小説なら文章そのものの味わいのように映画もそこから感じる様々な感覚がある。
ここでは冷たく寂しい北の島の凍りついた空気が感じられる。それがクオイルの人生の寂しさとも感じられるし、そこで出会った人々、特に同じような悲しい過去を持つウェイヴィとの触れ合いの暖かさをより感じさせてくれる。

この映画の原作を書いたのは「ブロークバックマウンテン」の原作者でもあるE・アニー・プルーである。小説はまた映画以上の雰囲気を持っている。素晴らしい作品だ。

何となく私はこの物語にこそ「世界の果ての家」というタイトルを当てはめてしまう。思い込みだけど。
あの話よりこちらの方が世界の果ての家らしい(ように思える)

映画はまったくいい出来栄えで大好きである。じんわりとおかしさがあるのもいい。ラッセ・ハルストレム 監督の作品は「マイライフ・アズ・ア・ドッグ 」「ギルバート・グレイプ 」どちらもそういう雰囲気を持つ。
出演者、リス・エヴァンスがここでは違うイメージで出ていて楽しかった。タート・カードのピート・ポスルスウェイト「ダーク・ウォーター」でも見た印象的な風貌。
ペタルのケイト・ブランシェット。「リプリー」では全然違った人だった。ジャック・バギットはスコット・グレン。皆よかったが主人公クオイルのケヴィン・スペイシーは少し違う気もした。
悪くはないけど、というか悪く見えなくて困る。結構ハンサムに見えるし、知性が表に出ててあまり愚かしい太っちょ、と思えない。例えば「スリング・ブレイド」のようなまたは「モンスター」のリーのようななり切り感は感じなかった。でも話が面白くてそう嫌ではなかったが。

監督:ラッセ・ハルストレム  出演:ケヴィン・スペイシー、ジュリアン・ムーア 、ジュディ・デンチ 、ケイト・ブランシェット 、ピート・ポスルスウエイト 、スコット・グレン、リス・エヴァンス
2001年アメリカ


ラベル:家族
posted by フェイユイ at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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