映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年01月18日

「殺人の追憶」ポン・ジュノ

殺人の追憶.jpg

「殺人の追憶」について書くのは「藍空」の記事を含めて3回目だと思う。だけどあまりにも好きすぎていつも多く語れないでいるようだ。
今回見直したきっかけは先日、映画の舞台である華城(ファソン)で再び連続殺人事件が起きているというニュースを聞いたためだ。
1986年から1991年の5年間に9名の女性が残忍な手口で殺されたこの事件は未解決のままである。時効も過ぎてしまった。
今起きている事件とこの時の犯人が同じなのかは解らないが怖ろしいことである。

今回、初めて手にしたのはその時の事件を担当したハ・スンギュン刑事の手記「華城事件は終わっていない」である。
これを読むと実際の事件・捜査と映画は違う事が判る。がしかし、書かれた刑事さん自身が「映画が事実と同じでなければいけないという主張は、常識的に納得がいかない」と言われていることが本当だろう。
ただハ・スンギュン氏が疑問に思ったというタイトルの意味(韓国語でもそのままの意なのだろうか)というのは確かにひやりとするものがあった。
つまり
“「殺人の追憶」という言葉は、華城事件を追憶している、という意味なのか、あるいは単純に犯人が殺人を追憶している、という意味なのかが曖昧なのだ”
前者を考えても後者のことは考えなかった。だが映画の終わり、事件から12年たった(2003年)ある日、刑事を辞めたトゥマン(ソン・ガンホ)が事件現場に行き、そこに数日前別の男が来た事を知る。その時、その男は当時を懐かしむようなことを言ったのだ。怖ろしい最後だった。

再び同じ犯人が行動を起こしているのか知る由もないが、今度こそ犯人が捕まればいいと願う。
手記を読めば未解決のままになった刑事たちの無念が伝わってくる。特にいたいけな少女に対する殺害への怒りは悲しみに満ちている。

映画と大きく違うと思ったのは殺された女性の年齢の幅である。映画では少女から20代の女性を狙った感があるが実際の事件ではこの年代に加えて50代から70代の女性まで(3人)強姦殺害しているのだ。ある意味それも惨たらしいことではないか。(そして今、起きている殺人事件も同じような年齢差がある)性的犯罪というのは行う者の嗜好としての年齢と言うものがあると思うのだが(幼女趣味とか熟女好みとか)10代から70代までを強姦するというのはどういうことなのだろう。勿論そういうこだわりがない人物なのかもしれない。
ここで“人物”といったのは犯人が男であるとは限らないからだ。というのもこの著作の訳者である宮本氏が書かれていたのだが、確かにこれだけの時間と労力をかけて何万人という「男」を調べて犯人がいないのなら女性ではないか、というのは一理ある。
あらゆる人物を怪しんでも見つからなかったというなら捜索しなかった人物に疑いを持ってみるしかない。
もしくは・・・捜索している側の人間ということもある(これは宮本氏の考えではなく私の意見)映画では監督は一切そういう疑念はなかったのだろうか。
著作は刑事そのものなのだから自らを怪しむ記述はない。
まあこれはどちらも単なる想像でしかない。

後、ハ・スンギュン氏は「映画では事件と雨が深いつながりを持つように語られていたが、実際は雨の日の方が少なかった」と書く。
これは映画的演出であるとしかいえないだろう。とにかく韓国映画は劇的な場面に雨をよく使う。
土砂降りであるほど感情は激し、強いインパクトを残す。そして季節は秋から冬にかけてである。撮影での俳優達は雨に濡れて頭が割れるように凍えたという。電柱や線路も凍ってしまったらしい。そういった過激さが韓国映画らしい部分だと思う。

また著書にパク・ヒョンギュ(パク・ヘイル)らしい人物はいない。彼は映画での創作なのだろうか。
この映画のキャスティングはまったく素晴らしいものだ。監督自身、その苦心を語られているが、その時、私には主役のソン・ガンホとピョン・ヒボンくらいしか知ってる顔がなかった。
知らない人ばかりなのでリアルだししかも一人ひとりが実にぴったりとくる。特にパク・ヘイルの怪しい男はそれまで観た韓国映画に珍しい繊細な様子で本当に犯人なのか、無実なのか掴みどころがない。眼差しがなんともいえない美しさ・妖しさがあった(別作品でまったくイメージが違うので驚いた)
曇りの時ばかりに撮影をしたという重く暗い画面やどことなく恐怖を抱かせるセメント工場のそびえたつ建物。
事件の日に必ずかかるというラジオのリクエスト曲そして雨が降るという事実が背中に戦慄を走らせる。

そしてこの映画にソン・ガンホが出ていなかったらこれほど面白くはなかったはずだ。
勿論、ポン・ジュノ監督。韓流という枠を越えてここまで優れたミステリーを見せてくれたことにも衝撃を受けた。
音楽に日本人の岩代太郎が関わっていることも嬉しいことである。

監督:ポン・ジュノ 出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、キム・ルェハ、ソン・ジェホ、ピョン・ヒボン 
2003年韓国


ラベル:犯罪
posted by フェイユイ at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。