映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年02月02日

「グエムルー漢江の怪物ー」父と子そして母は

グエムルq.jpg

「グエムル」を再観しておりました。

本作のテーマである家族の絆を再確認。韓国は家父長の強い国だというが、まさしくピョン・ヒボン演じる一家の長である父親は3人の子供達と孫娘を守る為に文字通り命がけで戦う。そのやり方はまったく情けないものだけどそれだけに余計親父さんの懸命さが伝わってくる。弾丸が足らず出来の悪い息子に「行け」と手を振るシーンは切ない。
ソン・ガンホのカンドゥはまたさらに頼りない。それでも娘ヒョンソを愛する気持ちはすごく微笑ましい。貧乏なのに娘に最新の携帯を買ってやろうとカップ麺に小銭を貯めたり、娘が背負ったリュックが重いだろうと支えてやったり。そんなカンドゥがなんとか娘を助けようと半分眠ったままのような自分を奮い立たせる。
カンドゥの妹弟もイマイチのとこで不甲斐ないのだが姪っ子への愛情は深く迷うことなく助けに走る姿に胸をうつ。
ヒョンソを救う途中一家が食事をするシーンでいないはずのヒョンソが現れ皆からご飯を少しずつ食べさせてもらう場面はせつない。きっとお腹がすいているヒョンソに食べさせてあげたいと思う気持ちが幻想を見させたんだろう。

またアメリカ映画慣れした目には新鮮に見える場面も多々あると思う。韓国人らしい部分と言うんだろう。
多分日本人には引いてしまうんだろう、共同葬儀の家族の号泣場面。でもこれが韓国人の亡くなった人への悲しみの表現なのだ。弟ナムルが兄貴の失敗に腹をたて蹴りをいれるとこ。こんな低くても蹴りなんだ。凄い。最後、テレビも足で消してたし。
あちこちでやらねばならない賄賂。これがないとうまく事が運ばないのだ。
そして車でなく足で走り回る。まったくスタミナには感心。韓国サッカーにはいつもこれでやられちゃうんだ。

結局、世界的には大きな興行成績を残した「グエムル」この面白さをして日本では何故振るわなかったのか。
まず公開と同時に怪物の日本アニメパクリ疑惑が広まってしまったこと。それゆえ怪物に新鮮味がなくマニアにうけなかったこと。なんかは当たり前に原因なんだろうけど。
もう一つはこの記事の最初に書いたことだが、韓国が父系社会なのに対し、日本は母系社会である。父親が懸命に戦う映画は受けないのだ。(確かに日本映画でもパパが頑張る映画はあるよ。あるけど爆発的には売れないような)
これがおばあちゃんとお母さんが孫・娘のために頑張る話だったら受けたかもしれない。(アメリカ映画でもお母さんが戦う話は日本で凄く受ける)
「リング」でも原作では男だったのに映画はお母さんになっているし(別に関係ないが)
よく似た怪物「エイリアン」と対決したのは女性であるシガニー・ウィーバーだった。
お母さん対グエムル、だったら日本では大人気だったかもしれないな。

追記:その父系社会というのがポン・ジュノ監督の登場人物設定にもつい現れてしまったと言えるのだろうか。
この一家には「母」の存在がない。祖父に対しての祖母がいないしカンドゥの妻も逃げ出している。
ナムジュがこの先どうなるのかはわからないが、カンドゥには息子がいなくて(韓国では今でもやはり男が家を継ぐという感覚は強いのだろうか)娘一人だったがその娘が亡くなって代わりに男の子が一緒に住むことになる。
血のつながりはないのだが、なんとなく設定に祖父・父・息子(娘の代わり)という系図ができてしまっている。この辺は自然とできてしまったことなんだろうか。
やはり日本でなら女一族にしてしまいそうである。

追追記:ゴブリンさんの「銀の森のゴブリン」を読んで上に書いた考えの間違いに気づかされました。
ポン・ジュノ監督は最初から父系家族などということではなくお母さんは強いので駄目家族にならないのだ、という考えでこういう設定にされていたのでした。
ううむ、単に韓国人監督だからこうした、という考えの浅はかさにうなだれるばかりです。
ゴブリンさんのレビューでその誤りに気づかされて本当によかったです。ここでゴブリンさんに感謝するとともにポン・ジュノ監督の凄さに改めて感激しました。
ゴブリンさん、どうもありがとうございます。


ラベル:家族
posted by フェイユイ at 23:12| Comment(2) | TrackBack(1) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさん TB&コメントありがとうございました。コメントが遅くなり、申し訳ありません。
この映画がどうして日本でヒットしなかったのか、この点は検討してみる価値がありそうですね。恐らくいわゆる怪獣映画の逆を行く展開の映画だということが原因の一つだと思います。この映画は戦わない映画です、戦うことを阻まれた映画というか。だから歯がゆい。それが期待値とのギャップを生んだということかもしれません。
ヒョンソがみんなにご飯を食べさせてもらうシーン、僕はすっかり忘れていて書き落としました。色々と気づかせていただきました。ありがとうございます。
Posted by ゴブリン at 2007年02月16日 22:43
ヒットしなかった理由。もう一つ勘違いかもしれない考えをしてみたんですけど(笑)
日本は怪獣映画の先駆者であり王者である、という高いプライドを持つ日本人が韓国の怪獣映画というのに拒否感を持ってしまったのではないか、と。一般には韓国映画=甘い恋愛物というイメージが強いみたいなので韓国で怪獣映画なんて作れるわけない、その上パクリ疑惑が出てそら見ろという風になってしまったんじゃないかなと思ってるのです。また早とちりかも知れないんですけどね(笑)
でも同じポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」もそれほどのヒットはしてないみたいであんな面白いのないと思うんですが、あれがそのままアメリカ映画で白人主演だったらヒットしたんじゃないかな、と。「グエムル」だってもしパクリでもアメリカ映画ならみんな観たんじゃないのと思うわけです。
随分ひがんでいるみたいですが(笑)

ヒョンソのご飯シーン、あそこだけ現実ではない夢のようなシーンですね。
ハッと胸をつかれるようでした。
Posted by フェイユイ at 2007年02月17日 14:38
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