映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年02月04日

「エミリー・ローズ」スコット・デリクソン

エミリー・ローズ.jpg

これはある意味非常に面白い映画でしたね。挑戦状を叩きつけられたという感もあり。
問題なのはこの映画が「実話」だという触れ込みであること。そして観客はこの映画を観る事のみで判断をせねばならないこと。それこそ観客が裁判員そのものになることなのかもしれないが。

この映画が「フィクション」であるならこの映画そのものが「真実」なのであるが、この映画が「実話」であるならこの映画は「真実」ではないということになる。それはある人々によって映像として作られた「この映画」が「真実」なのかどうかは観客には判らないからだ。

悪魔にとり憑かれたというエミリーはこの映画が始まる前に死んでいる。映画はエミリーの死後から始まっているのだ。
従ってこの映画はエミリーが語った話は全くない。全ての話はエミリー以外の人によるものだ。
自らを「不可知論者」だという弁護士・ローラ・リニーは最後陪審員達の前で論じる。「だが可能性がある」と。無論これは認めがたい悪魔憑きという現象に対しそしてムーア神父が行った悪魔祓いという儀式に対しての弁護である。だがそれならば「逆の可能性もある」のだ。
それは結局悪魔憑きでも悪魔祓いでもなく病気の少女を「何らかの方法で殺してしまった」という可能性ではないか。
勿論、私はこの映画で語られることでしか事実を知ることはできないので「真実」が何かはわからない。但し、映画の観客は陪審員と違い、証言者達つまりエミリーの家族、特に父親・神父・友人・医者らが語った言葉を「実際に起きた事実」と言わんばかりの映像で見せ付けられてしまう。「このような苦しみを持ったエミリーを私達は愛し、救おうと努力した」そしてエミリーが残したと言う手紙「苦しみの中で聖母マリアに会い、世に悪魔のいる事を知らしめるために苦しみの道を選んだ」と。
だがエミリー自身が「本当に書いたことなのか」彼女が死んでしまった以上、「真実」は判らないのだ。
裁判長自身が(私が観てる限りでは)途中から神父に対し擁護する姿勢が見える(まあこれは私がそう思い込んでいるだけで裁判としては当然の態度なのかもしれない。が、そう思える)
回りくどい言い方をしてるが、「悪魔祓いに参加した者達が本当にエミリーに対して何の虐待も加えなかったのか」と言いたいのだ。
そうでないなら何故、立ち会った医者はあんなに怯えて証言をしなかったのか。何故「偶然」交通事故にあってしまったのか。

以前にも家族のものが「悪魔祓い」と称して子供を焼き殺したなどというニュースを何度となく聞いたことがある。
それとこれとは本当に違うのか。

映画自体が「よーく観て考えて。この少女は悪魔と戦い、聖女となったのです」と訴えているようなのだが、シリアスな雰囲気と映像の神秘性でうっかり罠にはまってしまいそうではある。
とはいえ日本人の観客はさすがにキリスト教の催眠術にはかかりにくいようで賛美者もいる反面「あんまし怖くなかった」という感想で終わっているようでちょっとおかしい。
これは「ホラーか法廷劇か」という議論よりキリスト教社会の病魔とは、ということなんだろう。
不可知論者だという弁護士もやはりキリスト教圏内での人間でこういう結論を導いた。死んでしまった少女がブードゥあるいはヒンドゥ教の悪魔(ってよく知らんで言ってるが)に憑かれても同じ結論だったのか、というのは屁理屈だけど。他宗教について同じように反応できるはずはないのだから。(アメリカでも他の国でも少数宗派についてはどう裁判するのだろう)

映画では迫力ある映像で美しきヒロインが論理だてて説得してくるとなんだか心地よくなってしまう。映画の中の登場人物も皆「何か」にとり憑かれて一種の集団ヒステリー状態になってしまったようだ。
そして実話の映画化といわれると信じてしまう。でも「実話」がそのままフィルムに映されたわけではない。しかもエミリーはこの世にいない。全ては闇の中なのである。

監督 : スコット・デリクソン  出演 : ローラ・リニー 、 トム・ウィルキンソン 、 ジェニファー・カーペンター 、 キャンベル・スコット
2005年アメリカ




ラベル:宗教 ホラー 法廷
posted by フェイユイ at 20:24| Comment(2) | TrackBack(1) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
CS放送で観ましたが、面白かったです。
フェイユイさんの仰るとおり、「現実を元にしている」けれど「真実ではない」のですよね。そう、真実は誰にも解らない・・。
日本には「悪魔」の定義がないからさっぱりピンと来ないです。以前観たヒース主演の『悪霊喰』思い出しました・あの作品も同じようなことを扱っていて、だからつまり、西洋の人々の考え方なので。
私は「実際にあった」ていうのに弱いです(笑)。勿論鵜呑みにはしませんが、多分いくばくかは(真実の占有パーセンテージは解らない☆)ほんとうのことがあるわけで、それらの事実から観た人が何を感じ考えるか・・そこが映画の醍醐味でもありますよね。
この映画の内容のような科学では説明できない超常現象って確かにある“みたい”な気は致します。。^^
Posted by フラン at 2008年08月27日 21:50
日本人にはわからない感覚なのにどうしてこう観てしまうんでしょうかね?(笑)
キリスト教徒にとってはリアルに怖いことでしょうが異教徒にとっては傍で楽しめる、といったところなんでしょうか。
悪魔というものに対する人間の反応が面白く見えてしまうからでしょうか。

「実際にあった」って確かに映画の重要な宣伝文句ですよねー。
結局作り物なのにやっぱりそう言われると私もへええと興味を持ってしまいます。
それにまた反抗したくなってしまうんですが^^;
超常現象の話って結局大好きなんですよねー私^^;
だってだから観てるわけで(笑)
Posted by フェイユイ at 2008年08月28日 00:18
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Excerpt: TBさせて頂きますので、よろしかったらTBをお待ちしております。 緊迫の“法廷劇”と“悪魔憑き”というオカルト・ホラーの要素が絶妙に融合され、今までにないユニークなジャンルとして見応えがあります。 ま..
Weblog: シアフレ.blog
Tracked: 2007-02-10 10:05
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