映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年02月11日

「シルクウッド」マイク・ニコルズ

シルクウッド.jpg

マイク・ニコルズ作品を観てると脚本や構成ががっしり落ち着いいて深いコクがあると感じる。さほどアメリカ映画を観ているわけでもないのに口はばったいが今のアメリカ映画にはこういう感触のものは少ないような気がする。
まあ、年を取ってくるとみんな昔のものがよかったように感じるものなのでしょう。

とはいえ、プルトニウム工場の不適切な管理による危険性を訴える為に孤軍奮闘する何の後ろ盾もない女性という題材を扱いながらも主人公カレンの恋や子供達への愛情などが実にうまく混ぜ込まれて描かれる。
アメリカ南部の叙情性、田舎町の寂れた雰囲気もいい。とりわけ恋人ドルー(力ート・ラッセル)との関係がとてもよくて羨ましく思えるほどだ。いかにもアメリカ男性らしい逞しく男っぽい外見を持つドルー。カレンには惚れこんでいて彼女が一人突っ走っていくのを快くは思っていない。一度は愛想をつかして家を出て行くが彼女が窮地に立った時はすかさず助けに来てくれる頼もしさがある。最後まで戦い続けるカレンを見てもうあきらめたように愛しくその姿を見つめるドルーが素敵であった。彼女にシャツをとられて上半身裸でカレンを見送るのだがその寒さに震えるドルーの姿がやがて彼女を失う悲しさを暗示しているように思える。

以前は仲のよかった同僚たちから嫌われながらも会社の隠蔽する危険性を暴こうとするカレン。
車を運転しながら「アメイジング・グレース」を口ずさむ。何度も耳にした事のある名曲だが、その歌詞を読みながらカレンの生き様を思うとこみ上げてくるものを抑えることはできない。

マイク・ニコルズ監督の作品は前にも書いたようにしっかりと構成されたもので判りやすく面白いのだが、その上手さゆえに逆に個性的でなくなっているのかもしれない。
ただこうして改めて観返しているとニコルズ監督の映画には必ずと言っていいほど同性愛者(男性女性問わず)が描かれているようだ。もしかしたらその辺も逆効果なのかもしれないが。
「シルクウッド」ではカレンとドルーの恋人同士と同居しているレズビアンのドリー(シェール)が登場する。
このドリーの存在は物語に不可欠と言うわけではないように思える。ただこのドリーがいるために物語に面白い味わいが加わっていることは確かだろう。

ちょっと気になるのは最後でカレンがドリーに会社に秘密をばらさなかったか訊ねる場面があってドリーがはっきりした答えをしないままに終わってしまうのだ。
カレンは仲直りをしたドルーと幸せそうに会話をして会社へと向かう。
その帰りカレンは夜闇の中で事故にあう。カレンの車がレッカーされ皆がカレンの事故を知る。その時、ドリーは黙ったまま涙を流しているのだが。
結局、カレンの死の原因が何なのかはわかっていないということだ。
その直後、カレンはNYタイムズの記者との会うことになっていたのに解剖で体内から大量の睡眠薬が発見され記者に渡すはずの資料はなくなっていた。
その死にドリーが関与していたのかもわからない。その涙は単に友達の死に対する哀しみを意味していただけかもしれない。
ただ謎めいた演出ではあった。

一年後会社は閉鎖された。

カレンが一度車で鹿をはねて怪我をさせてしまうシーンがある。あれは何を意味していたんだろう。

カレンの死の直前に彼女の車の背後に近づくヘッドライトが不気味だった。

「太陽のように輝き
終わりなき神を讃えん
創り主なる神を
やさしくこころよい
感謝の祈りの声
惨めなりし我を救い給いし言葉
一たびは迷いし我も今は見いだされ
解き放たれ自由となりぬ」

明るい笑顔を見せてホンダシビックで走り去っていくカレンを見送るドルー。「後でまたけんかしよう」と言って。

監督:マイク・ニコルズ 出演:メリル・ストリープ、カート・ラッセル、シェール
1983年アメリカ

それにしてもこの時のメリル・ストリープは若くて輝くように綺麗です。
こんないい映画、アカデミー賞取っているだろうと思ったら監督・主演助演女優賞などいくつかのノミネートだけで賞は取ってないんですね。作品賞はノミネートもなし。
その時の作品賞は「愛と追憶の日々」主演女優賞のライバルはシャーリー・マクレーン。その他のノミネートはに「ライトスタッフ」「ドレッサー」「スターウォーズ/ジェダイの復讐」「ウォーゲーム」と色々あるんですねーこの年は。


posted by フェイユイ at 20:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
この映画のカート・ラッセルは本当によかったですよね。

当時、アカデミー賞を取れなかった(作品賞にはノミネート
すらされていません)のは、扱っているテーマ(実話)が
原因と言われていたように記憶しています。
Posted by じえるな at 2007年02月12日 00:15
こんにちはー、じえるなさん。
やっぱり男は優しさでしょうか(笑)カレンが魅力的だからなんですけど、こんなに愛されたらうれしいなと思いました。

テーマが問題なんて難しいですね。そういうことがあると段々甘いテーマしか扱わなくなってしまいますよね。

アカデミー賞の部分、私の書き方だとちょっと勘違いされそうなので書き直してみました^^;
いつもありがとうです!!
Posted by フェイユイ at 2007年02月12日 13:57
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