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2007年02月16日

「シビル・アクション」スティーブン・ザイリアン

シビル・アクション.jpg

この作品で一番驚いたのは弁護士が訴訟の費用を全部支払うことがあるということだった。(これはアメリカ映画なので日本がどうなのか知らないが)裁判は費用がかかると言うのは訴訟を起こす当人。そして弁護を受ける当人だと決めつけていたのでこれは初めて知ったことだった。本作では訴訟を求めた被害者側の弁護士となるのだが。

主人公シュリットマンは己の弁護士としての能力に自信とプライドを持っている。それは次第に驕りとなって自らを破滅へと導いてしまう。
ジョン・トラボルタ演じるシュリットマンが実に面白い。敏腕弁護士は訴訟人に同情などせず常に冷静であるべきとし且つ負け試合となる裁判などは絶対にしないと断言しながらどんどんその道へと走っていってしまうのだ。
子供を失った被害者の悲しみに心が揺らぎ、相手弁護士ファッチャー(ロバート・デュバル)の掴みどころのない老獪さにいらだち示談として提示された大金をはねつけてしまう。
スマートな身なりと理想を持つ青年弁護士が重なる調査費用に借金まみれになり裸に剥かれてしまう顛末は惨めなものであった。

映画としての作りはとても軽快で非常にわかりやすく楽しめるものとなっている。
配置されたキャラクターも個性的である。特にシュリットマン法律事務所の金庫番であるゴードン(ウィリアム・メイシー)は勝つ見込みのないまま突き進んでいく彼の為にやや半狂乱になりながらも費用を捻出する様が憐れにも滑稽にも見え、いたく気の毒であった。法廷映画というものでこのように弁護士が訴訟の費用を払うことに涙ぐましい努力をしているというのは見たことがなかったと思う。
そして何と言ってもロバート・デュバル演じる老獪弁護士ファッチャー。ボストン・レッドソックスを愛し、部屋の片隅で一人ひっそり野球中継を聞くことを楽しみにしている。アメリカ映画にありがちな敵意に満ちた傲慢な相手ではない。むしろ主人公シュリクマンの方が結婚したい相手に選ばれている自信家として描かれているのだからこの辺は微妙な味わいがあると言うものだ。

シュリットマン法律事務所に問題を持ち込んだのはボストンより北の小さな村に住む幾人かの家族であった。
その村では癌に侵され死んでいく子供の数が異常に多いのだった。
その中の一人、息子を失った母親がシュリットマンの事務所に連絡をとったのだ。
彼らの願いは「補償金はいらない。原因を究明し謝罪して欲しい」ということ。
金にならない話に一旦は断りかけが、水質汚染の原因と思しき会社が大手であることに気づいたシュリットマンは莫大な和解金を搾り取れると乗り出したのだ。
シュリットマンに訴訟を持ち込んだ母親が終始冷めた表情をしているのは同情深げに接する彼の腹を見透かしているからだが、そんな金儲け主義のシュリットマンがどっちつかずに心を動かしてしまったり、ファッチャー弁護士の狡猾な持ちかけに熱くなってしまったりする姿はぞくぞくするような面白さだ。
雨の中、両親が死にかけた子供を車で運ぶ時、泣き叫ぶ為にガラスが真っ白に曇り嘆く親たちの影だけが映る演出。
ファッチャーが法廷の廊下でシュリットマンにドル紙幣を見せ「これにゼロを6個つけよう」などと持ちかける。プライドを捨てて2000万ドルで手を打つか(事務所は火の車である)己のプライドにかけて「真実の証明」をするか。シュリットマンの揺れ動く心がその後の彼の人生を決めてしまう。

結局シュリットマンは僅かな金を分配し会社からの謝罪も得られない。訴訟を頼んだ村人達からは冷ややかな視線を受けたのみである。

裁判後に仲間とも別れ一人きりで法律事務所を開きながら原因究明を続けるシュリットマン。熱くなってしまった頭も冷め落ち着いた目で見ていくうちに真相が見えてくる。
驕り高ぶっていた敏腕弁護士が新しい人生を歩み始めるところで幕が閉じる。
無一文の弁護士シュリットマンにあきれ「何があったのです」という質問に一気に答えられるはずもなく絶句したまま微笑むしかないラストが言わせない。

監督:スティーブン・ザイリアン 出演:ジョン・トラボルタ、ロバート・デュバル、トニー・シャローブ、ウィリアム・メイシー、ジョン・リスゴー、シドニー・ポラック
1999年アメリカ

追記:役者について何も言ってなかった。
ジョン・トラボルタ。何しろ私にとっては彼のイメージというと「サタデーナイト・フィーバー」若き日の彼はあまりにもお顔が派手でして真っ黒な髪と光るような真っ青な目と割れた顎。初めて見た時はその迫力に怖気をふるってしまったものです。その後の何作かもあまり好みではないと思ってるうちにあまりぱっとしなくなったなと思ってたら「パルプ・フィクション」で復活!と言うより私にとっては初めて好きになりました。うん、年をとってから素敵に思えることってあるんですねーやっぱり。
本作でも決して正義の味方ではないしクールな悪者でもない男をいわばかっこ悪く演じていて見ごたえ充分!ロバート・デュバルの老獪弁護士の味わいに押され気味とはいえ魅力的でありました。しかしデュバルが凄すぎてね、観るの楽しいんだもん。


posted by フェイユイ at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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