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2007年02月24日

「赤い橋の下のぬるい水」今村昌平

赤い橋の下のぬるい水a.jpg

観ている間、すっかり主人公の中年男と、出合った女性に同調しいい気持ちになっていた。先日観た若き日の(と言っても50代)作品の行き場のないやりきれなさと違い、今村監督にとって最後の長編映画となる本作はそれまで何もいいことのなかったような中年の男女が偶然出会い肉体関係を持つことから次第に互いの存在がなくてはならないものになっていくのが滑稽でもあり悲しくもある語り口で描かれている。

失業中で妻からは生活費だけを要求される何の取り得もない中年男を役所広司が演じていて相変わらずしがない男の悲哀を演じていてうまい。
一方、いつの間にか体内に水が溜まり、溜まると万引きをしたくなり、そのときに性器から水が流れ出てしまうと言う奇癖を持つ中年女性を清水美砂がやっていて軽妙である。
しかも彼女メイクラブになるとさらにその「水」が物凄い勢いで噴出し当たり一面が水浸しになりその水が家の外へ流れ出し川へと注ぎ込まれる、というなんだか神話の一挿話のようである。しかもその水の為に川の魚が集まってくるのだ。この辺、実際観ると凄くおかしい。

とまあ、至極ユーモラスでゆったりのんびりした映画で映画監督として最後を(実際はもう一つあるのですが)飾るに相応しい理想郷を詠った物語なのであろうか。

何しろ観ている間はその潮吹きセックスに呆れたり、それまで女に溺れる事もなかったような平凡なサラリーマンがそのセックスをしたいが為に(一応人助けという名義ではあるが)黒人マラソン選手より早く女の家へ駆けていくという純情さに感心したり、次第に強く求め合い愛し合うようになる二人が羨ましかったりで見終わったのだが。
ちょっと考えてみるとかなり都合のいい話でもあるのだ。

まずは冒頭でお亡くなりになるタロウ氏。哲学的浮浪者というのがいかにも人生指南の師らしい設定である。
サラリーマンである主人公がこういう人と友達になるというのも意外と難しいのではないかと思うのだが、人生に疲れた主人公には浮世離れした師というのが必要なのだ。この時点でもちょっとあり得ない感じでしかも川べりののんびりした生活がすでにいい感じなのだ。
そのタロウ氏が言い残した「赤い橋のたもとの家に仏像を隠している」という謎も楽しい。
そして能登半島の海辺の町で主人公は不思議な雰囲気を持つ美しい女と出会い、いきなり体を求められる。そんな馬鹿なー。アフォンがいきなりロンズにキスしたときも驚いたが(いきなり何の話だすまん)こんな少女マンガかポルノグラフィかというような展開でいいのだろうか。ブスならまだしもこんな美人にまさか。しかもキスだけじゃなく肉体も、しかも彼女は感じると物凄い潮を噴き上げ男はこのセックスに酔いしれてしまう。
彼女が手鏡でピカピカ合図を送ってくると必死で走ってくる、可愛い。男って涙ぐましい。
ひょんなことから漁師の仕事も見つかり、田舎町で最高にハッピーな生活を送っていると奥さんから離婚してくれと電話が入る。男は嘆いてるけど私ならそんな金のことしか言わない女房、すぐ離婚したいけどね。
女性は細々と経営している菓子屋に住んでいて最後同居中のお婆ちゃんは死んじゃうので邪魔者もいなくなる(酷い言い方でごめん)
と言った具合でいいこと尽くめ。これが奥さんが割り込んできたり、二人のどちらかが心変わりすると悲劇になるのだが、終始いい話ばかりで二人の気持ちどこかに行ってしまったりはしないのだ(嫉妬はしてるけど)

そんな風で、おいおいこんなうまい話ばかりでいいのかなあ、と思ってもみたのである。
ただ、この二人がそれまでは結構辛い人生を送ってきた末出合った幸せっていうのも勘定に入れてみなきゃね。
壮絶で悲哀に満ちたものだけが上等なのでもないし、こういうほのぼのとしたファンタジーが人生にあってもいいのじゃないか、ということでやはりいい映画であった、と最終的には決着したのだ。死ぬ間際にはこういう夢を観たいよね。
「チンポが硬い内にもっとやっときゃよかった」という監督の悔いなのでもあるのか。(凄い言い方したけど作品中の言葉より、です)
つぼの中に隠した仏像の意味もまた面白し。

作品中に出てくるスーパーカミオカンデ。ニュートリノの説明とともに興味深い。
超純粋の水は不味いのだね。

監督:今村昌平 出演:役所広司、清水美砂、倍賞美津子、北村和夫
2001年日本


posted by フェイユイ at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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