映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年02月27日

「キンキーブーツ」ジュリアン・ジャロルド

キンキーブーツ.jpg

イギリスの田舎町。倒産しそうな靴工場を立て直そうと立ち上がる頼りない若社長の奮戦記。しかも工場復興の為のアイディアがドラッグクイーンが求める良質の「キンキーブーツ」を作ることだ、というのがおもしろそうではないか。
そして大変面白く鑑賞した。だのに文句を言って申し訳ないがやや設定が当然すぎ、展開が当たり前すぎたかなという気持ちになった。

とにかく見惚れてしまうのは靴作りの様子を丹念に美しく撮っている箇所である。手際よく皮が裁断され、縫い合わされ曲線をつけるなどの加工をされる過程は観ていて飽きない。
ましてやそれが美しいブーツならば。実際の従業員たちが動いているという働く場面はとても楽しかった。

主人公チャーリーを演じているのイギリス人ではなくオーストラリア人であるというのがちょっと驚き。ジョエル・エドガートン。襲われている女性を見るとすぐ助けに行くような純粋で素朴な男性。代々伝わってきた靴工場を自分の代で終わらせ、人手に渡すのを怖れている。
「僕に何ができるんだ」とばかり言い逃れするチャーリーは女性従業員ローレルから叱咤されひょんなことで出合ったドラッグクイーン・ローラの靴を作ることを思い立つ。

当然チャーリーは女性従業員ローレル、ドラッグクイーンのローラ(この二人名前が似てるんだね)そして婚約者のニック3人との恋模様が生まれるわけなんだけど、さすがイギリス仕立てだけあってあまり際どくないのだ。それはいいんだけどやはり私としてはチャーリーがローレルとローラどちらに行くのか迷わせるような、少なくとも「この後どっちに行くか判らないよ」という含みを持たせて欲しかった。まあ普通の人の場合はそんな含みなど要らないのかもしれない。

筋立ては判りやすいし葛藤や台詞も丁寧で巧みだし、音楽やローラの働く店のダンスシーンなど楽しくてストレートでノーマルそれでいて倒錯者に理解のある人なら上出来の映画なのかもしれない。それはそうなんだけど田舎嫌いのドラッグクイーン・ローラと普通の男並の偏見を持つチャーリーがここまで心を通わせてるなら何か二人の間にあってもよかったんじゃないかななんてちょっと思ってしまった。
と思ってたらコメンタリーでチャーリー役のジョエル・エドガートンが「最後のキスシーン、ローレルじゃなくローラの方に行ってもよかった」って言っていたのでそうか!出演者はそういう風に通いあってたんだな、と少し嬉しくなった。エドガートンはローラ役のキウェテルにドアを開けてあげたりしてたらしい。騎士道精神で。

そういうわけでとてもまとまったいい映画なんだけどもう少し爆発して欲しい気もしたのだった。
何しろ実話に基づく映画で工場もそこを借りての撮影だったので社長がゲイになってしまった、というんでは申し訳なかったのかもしれない。

それにつながることだが、工場再興に引っ張り出されたローラが利用されただけに終わったのも気の毒で。
「所詮オカマは利用されるだけで捨てられるのね」ってこっちが憤り。
実話の若社長さんの話ではドラッグクイーンの方から「男がはける女性用靴を作って欲しい」という問い合わせがあった、というきっかけだったみたいでこちらの方が利用した感が少なくてよかったんじゃ?

チャーリー役のエドガートンがオーストラリア人らしく大柄で素敵だし(ハンサムなオーストラリア男性はみんなゲイだっていうけどほんと?)ローラ役のキウェテルのドラッグクイーンぶりがまた魅力的だっただけに是非そういう場面が欲しかった。DVDのみのラスト別バージョンでもいいからさ。

監督: ジュリアン・ジャロルド 出演: ジョエル・エドガートン 、 キウェテル・イジョフォー、サラ=ジェーン・ポッツ、ジェマイマ・ルーパー、リンダ・バセット、ニック・フロスト、ロバート・パフ
2005年イギリス


posted by フェイユイ at 22:37| Comment(8) | TrackBack(2) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさま、こんにちは。TBさせていただきました。
私も、ローラとチャーリーが・・って展開でも面白いのにな〜、と思いました。
コメンタリは残念ながら聴けなかったのですが、ローラのほうはチャーリーに気があるのかな・・という描写もされていたように感じたのですが。
ハンサムなオーストラリア男性、全員じゃないと思いますよ。ヒース・レジャーがいますから(笑)
ではでは〜。
Posted by 真紅 at 2007年04月18日 10:10
いつもサンキューです〜。
思い返してもローラとチャーリーのキスシーン観たかった(笑)ローラは絶対アタックしてましたしね!!

あはは。いや昔そういう噂を聞いたので、まー冗談でしょうけど。そういう目で見ているとみんな怪しく見えてきますけどねー!ヒースだって・・・いえ、沈黙。
Posted by フェイユイ at 2007年04月18日 13:37
楽しみに観たのですが、割と期待はずれ?・・
つくり方によってはとても面白い題材。私は特段チャーリーとローラのラブシーンには拘らないのですが私も全体に何かパンチ不足の気がしました。
恐らく演出意向でしょうが主人公チャーリーがどうもぼんやり君(演技不足)過ぎたきらいが。ハンサムで(リチャード・ギアとヒース(涙)足した感じ)可愛いんだけど台詞も少ないしローラの強烈さに完全に負けている。もっと二人が拮抗するような演技合戦が欲しかった。ローレルやドンや工場のおばちゃんや特に宿屋の(笑)おばあちゃんなんかはいい感じのエピなのですが。^^
私は、こういう“モノができていく工程をじっくり追う”みたいな映像は大好きなんで、もう少し靴を創る過程を丹念に、情熱を込めてこれでもか☆とまで見せて欲しかったという部分もあります。
Posted by フラン at 2008年05月07日 21:30
最近、「実話」と書かれているとがっかりする、というところがあります。
映画会社としては「こんな話が実話なんですよー!」という売り込みなのでしょうが、実話だとどうしてもあまり踏み込めないのでは?と思ってしまうのですよー。
思い込みだよ、と言われてしまうかもしれませんが。やっぱり社長がドラァグクィーンと恋仲になったという話にはしにくいですよね(笑)

そうそう周りの人たちの話の方がよかったです。
靴、というのも女の興味をひかずにはおれないものですよねー。
お金さえあれば、いっぱい欲しい(笑)
Posted by フェイユイ at 2008年05月07日 23:27
実はこちらの前にフェイユイさんが“音楽映画が観たい”と仰った際に様々アタマを廻らしたら好きなジャンヌ・モローの『恋人たち』が浮かびました。そこからジャンヌ繋がりで『小間使の日記』(ルイス・ブニュエル監督)という作品を思い出し。。これ今迄ご覧には?・・フェティッシュな変人ばかり出てくる(大体もともとブニュエルも変わっている?)しかし不思議な魅力ある作品。この中で“靴そのもの”を異常に愛する老主人(ジャンヌは彼の館の小間使い)とか出てくるのですよ〜正にキンキーブーツに通ずる訳で(笑)。ミステリー仕立ですし何やら不気味な雰囲気も漂う。私はジャンヌの仕草が可愛くてついつい癖になっちゃう映画なのですが、検索して解ったのですが、やはりジャンヌはその“靴を生かす”(主人の前で履いたり歩いたりする^^;)脚線美が配役決定の決め手になったそうで。ブニュエルよヲイ・・^^;
Posted by フラン at 2008年05月08日 20:14
なるほど。メモメモ。
実は今日、フランさんから教えていただいた『愛情物語』を観て感動していたところです。
勿論記事に書く予定です。

フェティッシュな変人ばかりの映画とか観たいですね〜。
観ていそうなものなのにまだ観ていません。
が、残念なことにこれはDISCASさんでレンタルされてませんでした(涙)
うーん、フランさんから色々教えてもらって観たいと思うもの多いのですが、なぜかそういうのに限ってレンタルされてない、かDVD化されてないかだったりしますねー(泣)
ほんと残念です。

『愛情物語』は私の鑑賞目的である演奏シーンが他にないほどばっちり映ってますね。信じられないくらいでした。
Posted by フェイユイ at 2008年05月08日 22:40
そうですかDVD化されてないですか・・残念です、でもいつかBSでやるかもしれませんね。
『愛情物語』レビュー楽しみです^^。今日、品物の8割がビデオという今時珍しいような小さなレンタル店で,『愛情物語』『五つの銅貨』『グレン・ミラー物語』『ベニー・グッドマン物語』が並んでました(笑)。この時代に音楽映画は柳の下のナントカ状態だったのでしょうね。
『小間使・』は、表現としてはほとんど異常性激しくもないのです、現代に比べれば。コドモ(私がみたのも20代でしたから今よりコドモ)が観たら気付かない位です。でも当時でも解る人には解っていたからこそ(笑)特にラストシーンなんかはショッキングだったらしいです。異常性愛ということの内容に関して・・。しかし観られないのにくだくだ云ってご免なさい^^;でもビデオとかなら何処かに残っているのかもしれませんね。〜『愛情物語』私もまた観ようかしら。^^
Posted by フラン at 2008年05月09日 00:02
『五つの銅貨』と『ベニー・グッドマン物語』は駄目でした。でも『グレン・ミラー』を観ます。

ホントに〜(笑)観たいですねー。『小間使い』って今流行っぽい題材ですね(笑)
Posted by フェイユイ at 2008年05月09日 21:09
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キンキー・ブーツ
Excerpt: 2005年 イギリス・アメリカ 2006年8月公開 評価:★★★★☆ 原題:Ki
Weblog: 銀の森のゴブリン
Tracked: 2007-04-05 00:49

SMAPでリメイク希望〜『キンキーブーツ』
Excerpt:  イギリスの田舎町・ノーサンプトン。靴工場の4代目・チャーリー・プライス(ジョエル ・エドガートン)は、父の急死で嫌々ながらも社長の座に就く。倒産寸前の工場を立て直 すべく、彼が目をつけたのは..
Weblog: 真紅のthinkingdays
Tracked: 2007-04-18 10:05
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