映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年03月25日

「兵隊やくざ」増村保造

.jpg

昨日観た「陸軍中野学校」と同じ監督と知らず観てしまったのだが、こちらはうって変わって目茶目茶面白いものだった。

「中野学校」の方はやたらと規律だの面子だのが重要視され人の命が軽んじられて嫌悪感がつのったものだがもっと以前に作られたこちらの方が人情味溢れて生命を大切にしているのは不思議だ。天皇陛下のため、国のためという言葉もここでは皮肉に使われている。(というか後になる方が妙に懐古趣味になるものか)

日本の戦争映画というのをそれほど観ているわけではないが、こういう爽快感があるものというのは珍しいのでは、と感じた。戦闘シーンは全くなく、関東軍兵舎における内部での人間関係のみに焦点が置かれているのもシンプルで面白い。

ソ連(ロシア)国境近くの満洲・孫呉のその兵営はまさに巨大な刑務所だという。そこでは連日新兵が上官に殴られ続けていた。
(ちょうど読売新聞で亡き城山三郎氏が志願して入った海軍で朝から晩まで殴られずくめの絶望を味わった話を読んでいた)
そこへ新しく入ってきたのが浪曲師になりそこねヤクザをやっていた大宮貴三郎だった。殴られてもちっともこたえず、滅法荒っぽいこの男の面倒見を上官は三年兵・有田に押し付けてしまう。
大学卒のインテリで戦争を嫌い、幹候試験をわざとすべった上等兵・有田はこの常識はずれの荒くれ男をすっかり気に入ってしまうのだった。

現在の感覚では全く理解しがたい、何の根拠も秩序もなく拳を受け続けなければならない新兵たち。
人並みはずれた頑健さを持ち(スタミナはなかったけど)嬉しくなるほどの腕力を持つこの大宮という男は当時暴力を受け続けていた人にとってはヒーローなのではないかと思ってしまう。こんな男がいたらさぞやすかっとするだろう。なにしろ元ボクサー相手でも最も手強いという炊事兵(炊事兵ってそんなに強いのか)が束になってかかっていってもぼかんぼかんやっつけてしまう。だがそこは規律のある軍隊、暴れた後は制裁が待っているが大宮を可愛がる有田は持ち前の頭脳で彼を守り続ける。荒くれ大宮もそんな有田を上等兵殿と呼んで慕うのである。

有田がなぜそこまで大宮を好きになりいちいち構うのか、ちょっと奇妙ですらあるのだが、自由を求めるインテリ有田が奔放な大宮に何かを感じるものがあったのだろう。
シリーズで続く為もあるが(ははは)大宮が南方戦線に送られそうになっても「ずっと一緒だ」「離れない」などと言い合って深い絆を結んでいくのである。

大宮を演じる勝新太郎は他に考えられないほどはまり役で確かに可愛い(と有田さん曰く)が、田村高廣のインテリ有田のメガネ顔が素敵なのである。ヤクザな大宮を気にかけ可愛い奴というその思いもステキなのである。それにインテリで腕力なしと言っても度胸はあるし口がうまいし不思議な調合の男らしさを持っていて凄くかっこいいのであった。

戦闘シーンはなくとも戦争によって生み出されていく理不尽さ、冷酷さはこのような形の映画のほうがより伝わるような気がする。戦争しないで内部でこうも潰しあっていてはしょうがないと思うのだが、事実このようなものだったのだろう。
必ず上等兵殿を救う時が来る、という大宮は戦況が悪化して日本に戻れなくなった有田を脱走させると誓う。
強奪した機関車の先頭部に大宮と有田が乗り大陸を走っていく。最後もかっこいい。

監督:増村保造 出演:勝新太郎、田村高廣、淡路恵子、成田三樹夫
1965年日本

成田三樹夫がここでも嫌ーな役で登場してたのがうれしかった。

ところでこの話、ちょっと「盛夏光年」思い出させます。だって荒くれとインテリでインテリが荒くれの面倒をみろと上官におしつけられるんですからね。正行と守恆みたいでしょ。
でも有田さんは大宮が気に入っちゃうし、大宮も有田さんと離れたくなくて、南方戦線に送られそうになると二人とも悲しくなってどうにかしようと画策するし、こんな深い友情というのか結合というのか他にはありませんね。なんとかして二人一緒にいられるよう滅茶苦茶頑張って成功するんですから凄い。
そういえばちゃーんと慧嘉役の娼婦(いや慧嘉は娼婦じゃないですけど)も出ています!そういえば二人と仲良くなってるし。
不思議だなあ。こういう話って結局そういう風になるのかな、それとも私がそういう話が好きっていうだけかも?

「軍隊は階級じゃねえ、襟の星の数よりメンコの数のほうがものをいうんだ」
メンコってナンなのかわかんないんですけど、とにかく階級より長く兵隊やってる方が偉いらしい。つまり伍長で2年兵より上等兵の3年兵の方が格上らしい。ははあ。

追記:メンコというのは「めし・食器」のことらしい。つまり軍隊生活が長いというなのだ。なるほど。


posted by フェイユイ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 増村保造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。