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2007年03月26日

「豚と軍艦」今村昌平

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なんだか変な夢を見てるような映画だった。

勿論当時に生きていた人にとってはリアルなのだろうけど、今となってはこのような情景の日本というのは嘘のような気がする。冒頭「これはすべて架空の物語である」と出るのもそれを裏付けているように思える。全てがシュールな夢のようなのだ。

また同時にとてももどかしい気持ちにさせる映画であった。どこかへ行こうとすると引き止められたり、お金を盗もうとするタイミングが遅くて捕まったり、たくさん出てくるアメリカ人・中国人の言葉がわからないし(外国語の時は字幕がないし、日本人もなまりが強くて何を話しているのかよくわからない)親は真面目に働こうとする娘に売春婦になれと強要する、何もかもうまく行かない、こうしようと思っても出来ない、心は通じ合わないし、考えも行動もばらばらなのだ。こうしたもどかしくうまくいかない感じもまた夢を見ている時に似ている。
というのは無論作り手の計算なのだろう。
戦後、何もかも町も生活も思想も価値観も全てが壊れてしまい、人々は混乱の中にいる。真っ当なことをしようとするほどうまくいかない奇妙な世界で生きていかねばならないのだ。
主人公・欣太はチンピラとして生きていこうとするが恋人・春子はそれを嫌い堅気になろうと説得する。欣太は耳を貸さず悪どい仕事を続けるがついに足を洗う決意をする。だがその途端欣太は命を落とす事になるのだ。
筋書きだけだとよくある話なのだが、なんとも語り口がうまいのでつい惹きこまれてしまう。
今村昌平の演出はおかし味があって飽きないし、からりと乾いているところがうれしい。映像的には日本映画というよりヨーロッパのものを観ているようでそういうところも不思議な雰囲気を余計感じさせるのかもしれない。

主人公・欣太の長門裕之は何の拠りどころもない若者をかっこ悪く演じていてよかった。昨日観た勝新みたいなパワフルさもなくむしろ今っぽい感じだった。
恋人・春子の吉村実子。真面目に生きようとするのに母・姉からアメリカ人の愛人にされそうになるという気の毒(?)な環境にいる。うっかり間違った道にそれそうになりながらも力強く歩き出す。女が不幸になるのが好きな人には受けないだろうが、この時代に希望を抱かせてくれてよかった。
丹波哲郎氏演じる早とちりのヤクザの兄貴がおかしい。すらりとして凄くかっこいいのに。兄貴がかっこいいというのはいいね。

米軍基地の町は軍艦が寄港するたびに活気付く。米兵相手の売春婦達が沸き立つ。
ヤクザの一家が基地から出る残飯で養豚業を始める。だが一家が分裂し豚を巡って争いとなる。
運搬中のトラックから豚が町へと走り出し、町には豚が溢れる。
皮肉な状況が滑稽に展開していく。

先日テレビ番組でマーティン・スコセッシ監督が敬愛するという今村昌平監督の作品の中で特に感化された作品としてこの「豚と軍艦」を取り上げて話されていたようだった(テレビはつけていたんだけどあまりちゃんと見てなかったのだ)今度スコセッシ作品を観るときはちょっと気にして観よう、と思った次第。

監督:今村昌平 出演:長門裕之、吉村実子、南田洋子, 丹波哲郎, 加藤武
1961年日本


ラベル:戦争
posted by フェイユイ at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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