映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年04月04日

「ゲルマニウムの夜」大森立嗣

Q}Q.jpgQ}jET.jpgQ}jES.jpgQ}jER.jpgQ}jEQ.jpgQ}jE.jpg

花村萬月氏の原作を読んで以来、これが映像となることになったら、という期待を持っていた。とはいえ原作にいれ込んでいると往々にして映画には失望するものだ。だがこの作品は違っていた。

何と言っても印象的なのは新井浩文演じる朧である。立っているだけで朧だと感じることができる。歩いている姿もいい。原作の朧の身長より彼の方が高いのだが少年のようにも感じられる体つきが魅力的なのだ。監督の力量なのか新井浩文の持ち味なのか、二人とも初めて観る(監督は初作品なのであたりまえなのだが)ことゆえ、どうとも言えないがこんなにもどきどき胸騒ぎのする主人公はそんなに今いないと思う。それは一言でセクシーだとか可愛いだとか言ってしまえるものではない。私が新井浩文を初めて観る為もあるが、そこにいるのは朧であり、他の誰かではないのだ。(後で地の彼を見るとよりいっそうそう思えたが(笑))彼の表情にも立ち姿にも髪型にも不安定な精神が曇りガラスのように見えるような見えないような苛立ちを覚えてしまう。優しく繊細で僅かなことに爆発してしまう魂は若者らしいそれだがそれらも含めて愛おしく思える。偽善に対する潔癖さも美に対する憧憬も少年のような純粋さである。人によってはそれを未発達と嫌うかもしれない。朧が22歳にして童貞であったというのもそういった性格を裏付けているのだ。

その潔癖といえる彼が働くのはカソリック修道院の農場。豚舎や鶏舎で餌を用意し、糞を掃除するのだ。
匂い、というのは映画では残念ながら表現できない。思い出してみるしかない。
精練な宗教と神父の異常な性的欲望、そして農場の動物の生々しさが並列して描かれていく。

また原作よりよく感じた部分もあった。
原作の舞台は関東のようなのだが、映画は東北で撮られたようで雪の風景がより朧の心を表しているように思える。
冷たく切れそうな感覚が合っている。
原作ではカソリックの神父・修道女は日本語が話せる白人なのだが映画では面倒だったのかよくわからないが日本人である。もう一人朧を慕い朧も好意を持つ混血の少年ジャン・御厨はトオルという日本人少年になっている。どちらも日本人に設定してよかったと思う。白人であったらそれが逃げになってしまうし白人差別な発言もあったのでやりにくかったのではないか。花村氏がそこを描きたかったなら困るが私としては日本人の方がしっくりくる。特に原作でジャン少年はフランス系アメリカ人との混血という設定でがっかりだった(フランス系アメリカ混血の方、ごめんなさい)私の趣味的には混血でも韓国か中国とかであって欲しい、外見的にはさっぱりわからないけど。とにかく映画でトオルになっててよかった(ただ好みの顔じゃなかったけど汗)
そして暴力シーンなど。原作は暴力だけでなく様々な描写が壮絶なものだったのだが映画ではかなり抑制されて見やすくなっていた。上品だったと言える。過激に走って欲しい人にはどうかだが私的には満足な仕上がりだった。

隊長(原作では三浦)のキックガッツも予想を越えた出来だった。物語の中で最も印象的な場面の一つである。
私としてはも少し違う立った状態のキックガッツを想像してた。踊る、踊るってあるし。ちょっとマンガ的なものを。倒れそうになる朧を蹴って崩れそうになるのをまた蹴り上げて、という感じで。寝転んだままとは思わなかった。
しかしこの隊長の凄い風貌で納得させられてしまったような。これで尚且つ異様な欲望の表現をされたのでは。
後に朧が隊長とのメイクラブを夢見る場面があるのだがこれは削除されていた。この隊長とのキスシーンならなくてよかったかも。観たい気もするが。
モスカ神父が戸川神父となり佐藤慶氏が演じている。朧の宗教への挑戦を受け止める重要な役である。
広田レオナ=シスター・テレジア。広田レオナは存在自体、ちょっと行ってしまってる感があるのでぴたりである。

物語を全体に覆っているのは宗教とその組織への葛藤。そして同性愛的欲望である。
同性愛の表現は主従関係に基づくものでほぼ手淫とフェラチオによって表現されている。朧は自分がゲイではないと思うもののトオルに対しての態度は否定的なものではない。
原作ではより朧のトオル(ジャンだが)への思いが強く描かれており童貞を捧げる(っていうのか)相手・教子とトオルを比較してトオルを悪魔のように感じ惹かれていく。友愛といったものでもなく肉体だけの関係というのでもなく映画でもそれは感じられたがその微妙なニュアンスと言うのは観てあるいは読んでもらうしかない。

凍てつく空気、自分で組み立てたゲルマニウムラジオから聞こえてくるものはなんだろう。
闇の中に浮かぶ雪の白さを見る。
あわ立ちにくい固い石鹸で神父の性器を手淫した匂いを消し去ろうとする朧。泥濘の中を歩き続ける朧。
宗教の欺瞞に苛立ち、衝動的に冷酷さを爆発させる。
文字で読んだ朧がこうも鮮やかに映し出されたのはうれしいことである。

監督:大森立嗣 出演:新井浩文 、広田レオナ 、早良めぐみ 、木村啓太 、大森南朋 、津和孝行
2005年日本
posted by フェイユイ at 22:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 新井浩文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ハジメマチテ

新井さん、良いですよね。

そして、あんなのを映像化できる映画(に携わる人達)ってすごいです。

私もこの映画で初めて新井さんを意識して見たんですけど、初めてだったから余計なのか、得体のしれない不気味な感じがしてショッキングでした。

だいぶ有名になってどんな人かわかった今、もう一度見てみようかな〜〜〜
Posted by やさぐれママ at 2014年11月22日 19:28
ハジメマチテ

新井さん、良いですよね。

そして、あんなのを映像化できる映画(に携わる人達)ってすごいです。

私もこの映画で初めて新井さんを意識して見たんですけど、初めてだったから余計なのか、得体のしれない不気味な感じがしてショッキングでした。

だいぶ有名になってどんな人かわかった今、もう一度見てみようかな〜〜〜

(コメントが出てなかったから失敗したかと思って再送しちゃいましたが、認証待ちだったかしら。
ダブってたら削除してください。)
Posted by やさぐれママ at 2014年11月22日 20:03
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/37783802

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。