映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年04月10日

「青い春」豊田利晃

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こりゃ参ったねチョット。ていうのはつい一昨日と昨日「ブロークバック・マウンテン」について語ってたんでその直後これだとどうしてもつなげて観てしまうではありませんか。
で、全然違うんだけどなんとなーくブロークバックな映画であったのだった。と言ってもゲイ・ムービーなわけではなくしかし男の友情なわけでしかも死を賭して友情を追っているのである。

松田龍平が苦手にも関わらずこれを観たのは無論新井浩文が出てたからなのだが、出だしはナンだ、ただ不良の日常を追ってるだけかと思いきや途中で投げ出してはいけない映画であった。
製作年は逆だが「ゲルマニウムの夜」で観た新井浩文はここでも酷い暴力を振るうのだが、心の中はただ幼馴染の九條と親密な仲でありたいだけなのだ。

学校屋上の柵の向こう側に立ち、手を離して幾つ手を叩く事ができるか。
それで誰が学校を仕切るのかが決まる。
8回叩いて勝ったのは九條だった。
人付き合いが苦手な九条は幼馴染の青木だけが友人なのである。が人目にもクールな九條に対し青木はその腰ぎんちゃくと見られている。ある日、九條はその青木に冷たい態度をとってしまう。
青木はその見下した態度に腹を立て髪型を変え学校を荒し始めた。

怠惰な毎日、彼らの未来など何も見えはしない。あるのは暴力。でもそんなんでも学校は楽園。楽しくて、大好きな場所だと叫んだりする。
甲子園に行けなかった野球部先輩が暴力団に誘われて行っちゃった。
別の奴は仲間を刺し殺した。そんな中で。
青木は九條と一緒にいたかったんだ。ただそれだけ。それだけが青木の望みだったのに。
青木は一晩中、屋上の柵を握りしめて考えたんだ。九條のことを。

屋上で青木が九條に髪を切ってもらってる場面がある。心無い九條なんで適当にばさって切ったりしちゃうんだけど、この時の青木、凄く幸せそうなんだよな。
二年生をシメたのだって九條に見て欲しかっただけなのに冷たく言われてさ。しかも翌日ごめんってあやまったのに。泣きたくなるよ。
青木、とうとう悲しすぎてキレちゃった。それも全部九條の目を惹きたいだけなんだ。可哀想な青木。
それからの青木は荒れ放題。学校中蹴飛ばしていった。心の中では九條が来てくれてやめろよ、ごめんあの時は、って言って欲しかっただけなんだろ。
寂しくて何もかも真っ黒に塗りつぶしたんだ。

「お前が出来なかった事をやってやる」
青木が一晩中屋上の柵を握って立ってた翌朝、そこに青木がいるのを見て九條は走った。やっと気づいたんだ。いつものクールな九條じゃない。死に物狂いで見境なく走った。転んでも。
でも間に合わなかったんだ。



「九條、俺も連れてってくれよ」



青木は13回叩いたんだ。馬鹿みたいだけど、それで九條に近づけると思ったんだよ。

これを観てブロークバックマウンテンを思い出すのは変だろうが、凄く近い気がする。
ブロークバックは骨折りってことらしいし。高い所に登ってるとか、突如殴りだすとか。
他人からは羨ましく思われることもない存在、楽園の共有、青木が悲しい心を抱えて一晩中立ちすくんでいる様はジャックを思い出させるし。で、九條がイニスなわけだな。
無理に思い込もうとすると色々似ているぞ。
九條はこれからずっと青木のことを思って生きていくんだ。

松本大洋の短編を一つのストーリーにしたものらしい。短編原作というのも一緒だ(←しつこい)

ミッシェル・ガン・エレファントの「ドロップ」がかっこいい。

監督:豊田利晃 出演:松田龍平 、新井浩文 、高岡蒼佑 、大柴裕介 、山崎裕太 、忍成修吾、EITA、塚本高史、鬼丸、KEE、マメ山田
2001年日本


posted by フェイユイ at 23:31| Comment(4) | TrackBack(0) | 新井浩文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさん、お久しぶりです。
私の新井浩文好きはココから始まった>『青い春』に対するフェイユイさんのご感想、興味深く拝読しました。

私は最初にコレを観たときに一番近い、と感じたのは『香港製造』だったんですよね。話自体は似てないんだけど。なんというか、何処にも行き着けなかった青春の閉塞感、焦燥感、そして暴発、という展開からでしょうか。どっちもラストにかけて、人から心配されるほど泣いてしまった映画でした^^;;
ラストがあんなに悲しいのは、九条にとっては青木こそが最初の「友達」で引っぱってくれた存在だったから…かな、と。その青木をいつのにか追い越してしまって苛々して「俺に頼るな」と言ってしまい…そこで青木がキレてしまう、というあのシーン、青春時代ならではの痛さに思えてなりませんでした。
私は原作者(松本大洋)の大ファンなんですが、この映画は原作そのものに沿った内容というより、松本大洋の世界観を非常に的確に捉えている、という意味でも思い入れが深いんですね、私の場合は。
彼の作品では、九条と青木のように互いに補足し合っている一対の同性、というパターンは結構定番だったりします。たぶんフェイユイさんのお好みじゃないかな〜、と思いますので、もし機会があれば『鉄コン筋クリート』『ピンポン』あたり、お薦めです(笑)。と、ひとしきり強引に語って失礼いたしました。
Posted by shito at 2007年04月11日 01:13
うひゃ、恥ずかしー、私の趣味把握されてますう。
こういう感じ、友情のようなそれ以上のような男同士の関係が好きなんですよねー。補足しあう一対っていいですね!そのとおりです。
この映画は特に一見不良映画みたいな内容なので余計に心に突き刺さってきました。
「ブローク」みたい、というのはたまたま前日映画を観たため思ったことでしょうが、二人だけが共有する思い出なんていうのが妙にカブって感じたんです。
「香港製造」とは思いもしませんでしたが、なるほどあのクールにさめた感じと同時に熱いものが同じですね。
松本大洋、気になってたのにまだ読んでなかったんですがこれはやはり読んでみなくては、と思いました。
お薦めいただきありがとうございます。早速その辺から入ってみます。「ピンポン」映画は観ていて好きでした。「鉄コン筋クリート」タイトルが気になってました(笑)

ところで「あしたのジョー」特集ごらんになりましたか?あれも男同士の一対(いくつか対がありますが)の物語ですが、年のせいか、ジョー×力石より丹下おっちゃんとの話の方が胸にくるようになりました。涙。
Posted by フェイユイ at 2007年04月11日 13:34
フェイユイさん、私のほうこそBBMとコレが結びつくとは…と意外な視点で新鮮でした^^
映画の『ピンポン』、正に公開が同時期だったんですよね。だから余計に、かもしれないのですが、私はちょっと映画のほうには滅茶苦茶点が辛い感じなんですけど(>ヒネクレものなので、原作マンマをやられてもねえ、と…ま、他にも色々ありますが;;)原作は心の底からお薦めです。読まれた暁には、是非ご感想聞かせてくださいませ。

お察しの通り、3月末のジョー特集では私も当然祭り状態で(笑)今も余波に浸っております。但し、私はジョー・アニメは「2」派なので^^;;やや不完全燃焼なんですけども、おっつぁんの親心、今観るから尚のこと泣けましたね〜。ツカシン監督の製作現場を訪ねて、なドキュメンタリーも面白かったです。特にあっつぁんのパンチのネバリに目をつけるとは!(笑)
Posted by shito at 2007年04月12日 00:50
「ピンポン」私は原作知らずに観てるからですね、きっと。読んだ時点で映画に対して怒り出すかも、です。楽しみ。

ジョー・アニメ2派でしたか。私はやっぱり古い人間で1の方が(笑)2も好きですけど。というか原作がいいんですけどね、ほんとは(笑)
塚本監督のドキュメンタリー感心することばかり。昔のアニメってお金もないし苦労してます。これも泣けます。
Posted by フェイユイ at 2007年04月12日 10:50
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