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2007年04月25日

「八墓村」野村芳太郎

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別部屋「雑文手帳」で書いてたんだけど、先日のバージニア工科大学乱射事件犯人が両手に銃を持った写真を見てかつて日本で起きた津山事件を思い出してしまった。
と言っても無論そのイメージを抱かせたのは山岸凉子の「負の暗示」と映画「八墓村」によるものだが。ただし、本人もそのとおりの格好をしていたのを『津山三十人殺し』筑波昭著で見て怖ろしくなった。「八墓村」はあくまでも津山事件に触発されて作り出されたフィクションなので物語は別物である。むしろ「丑三つの村」を観ることが出来ればいいのだろうが、こちらはビデオしかないようで自分には観る事ができない(再生機がないのだ)

野村芳太郎監督、金田一耕介を渥美清が演じたこの作品は以前にも観たものであるが、改めて観ても重厚なコクのあるしかもケレン味あふれた楽しめる一作である。
特に私はこういうおどろおどろしい田舎の旧家の話を好む者であるし、出演者の達者な事豪華な事この上ないのである。
ここではほんの狂言回しとして登場の金田一=渥美氏しかり、すぐいなくなる長男と怖ろしい父親二役=山崎努、姉=山本陽子、叔母=市原悦子である。下に出演者の名前を列記するが、いやもう楽しい。
突然莫大な遺産を相続することになるとはいえ山奥の屋敷に連れ込まれ奇奇怪怪な経験をすることになる主人公には萩原健一。
いつもはちょっとワルなイメージのショーケンだが本作では普通の青年という役柄。但しそのためもあってなかなかの美青年ぶりで八墓村への案内人となる美也子が惚れてしまうのも納得である。美也子役の小川真由美はすごく色っぽい美人であるし、母親役中野良子も綺麗であった。
しかもその小川真由美の変貌にはさすがにびびる怖さがあって顔の変化と言う事ではなく、奇声を発しながら追いかけてくる姿は他のどんなホラーより心底怖いものがあった。
そして八墓村の語源となる古の惨劇が時代を越えて復讐されるというこの物語は怖いけど観たい聞きたいという怪談の醍醐味を充分に発揮したものである。
このねっとりとした面白さは今ではもう出せないものなのではないだろうか。

というように非常に楽しんで本作を観終わったわけだが、この映画の出来とは別に思うところも書いてみたい。
というのは横溝正史氏は津山30人殺しを元にこの物語を書いたということなのだが、その逸話は主人公らの父となる(実際は違うのだが)多治見要蔵が二十数年前に起こした村人32人を日本刀と猟銃で次々と惨殺したという話に組み込まれている。多治見要蔵の狂気が先祖の犯した落武者謀殺の因果だったのかそうではないのかはわからない。そういった古の怨念と現代の欲望・狂気が織り交ざった所に面白みがあるのだが、現代の恐怖としていえば津山事件をそのまま読んだ方がやはり興味深いのである(実際の事件なので面白がるのは気がひけてしまうが事実そうなのだ)
体が幾分弱かったとはいえ、学業優秀で小説を書いたりする才能もあった一青年が突如常軌を逸した冷酷な大量殺人を犯してしまう、という筋書きはまさに先日の事件を思い起こさせてしまうものである。
このような恐怖の中にも何らかの怨念が入り混じっているものなのだろうか。
そういった恐怖こそ描いて欲しいと思うのであるが。

監督:野村芳太郎 脚本:橋本忍 出演:萩原健一(寺田辰弥)小川真由美 (森美也子) 山崎努(多治見要蔵・久弥) 山本陽子(多治見春代) 市原悦子(多治見小竹)山口仁奈子(多治見小梅) 中野良子(井川鶴子) 加藤嘉(井川丑松) 井川比佐志 (井川勘治) 花澤徳衛(磯川警部) 綿引洪 (矢島刑事) 下絛アトム (新井巡査)夏八木勲(尼子義孝) 田中邦衛(落武者A) 稲葉義男(落武者B) 橋本功(庄左衛門) 大滝秀治(諏訪弁護士) 夏純子(美也子の妹・和江) 藤岡琢也 (久野医師) 下絛正巳(工藤校長) 山谷初男(馬喰吉蔵) 浜田寅彦 (吉岡太一郎) 浜村純(森荘吉) 任田順好(濃茶の尼)
渥美清(金田一耕肋)
1977年日本



ラベル:恐怖 犯罪
posted by フェイユイ at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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