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2007年06月03日

「バトルライン Vol.2」ビル・アンダーソン

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vol.1に比べ緊張感が増したvol.2である。だが依然として内容は戦争そのものをシニカルに笑っている、といった見方に徹している。
ダニエル・クレイグ=ガイ・クラウチバックが年齢は結構いってるとはいえ多くを知り変わっていく過程が興味深い。

軍に忠実であり人を殺すことで英雄となるのが軍人である。だが忠実であることで死を選ぶのは馬鹿げているとアイヴァーは一人脱出を図る。結果、捕虜となりクレタ島に残った奇襲隊たちはドイツ軍の攻撃を受けて全滅。
クラウチバックとルードヴィク他数名は攻撃直前に舟で島を離れるが水も食料もなく漂い、クラウチバックは意識も朦朧としてしまう。そんな中ルードヴィクは仲間を(多分殺して)舟から捨ててしまう。が、クラウチバックの命は取らず上陸した後、病院へと運ぶのであった。
回復したクラウチバックはアイヴァーが逃れたのを喜ぶと同時に一人逃亡した事を言い逃れしていることに愕然とする。
隊を離れるな、という命令が降りたことをクラウチバックはノートに書き記していたが、それを燃やしてしまった。
よくある戦争ヒーローものならもっと善悪がはっきりとし、主人公は命がけで仲間を助けたり、助けられなくても仕方がなかったという説明がされたりして盛り上げるものだが、クラウチバックは悪い事はしなくても何だか凄い功績をあげていく、というわけではない。
真直ぐな心を持っているのだが、それだけでは何もできない、という感じである。
アイヴァーがしたことは軍にそむく事だがそうしなければ結局死んでしまっていたのである。
脱走したわけではないが自分たちだけ島を離れたクラウチバックはアイヴァーの不利になる証拠を焼き捨てたのだ。
そしてルードヴィクも様々な手を使って生きながらえた。しかしその代償としてその後彼は怯えながら生活する事になる。だが、自分の体験を小説にしてしっかり稼ぐこともやった。凄いしぶとい人間である。

ガイの元妻ヴァージニアはトリマーとの間の子供を身ごもっていた。だが彼女はしつこいトリマーに嫌気がさしてしまう。
だが妊娠し生活もままならないヴァージニアはガイの父親が亡くなり財産を受け継ぎ金持ちになったと知り、復縁を迫る。
さすがにヴァージニアの身勝手さに憐れを感じてしまうガイだったが、彼女がトリマーの子を妊娠してると知り、却って結婚を決意するのだった。
どこまでいい人なのか、ガイ・クラウチバック。「今まで人の役にたったことがなかった。子供に罪はない。子供を助けられるのは自分だけだ」という言い分。
それにしてもやっぱりガイはヴァージニアが好きだったわけで。トリマーもそうだがヴァージニアと言う女性は男にとってどうしようもない魅力をもっているのだろう、としか言いようがない。

最後の戦記はユーゴスラビアにて。クラウチバックの任務は内務大臣の要求を聞き、英軍が検討するということだった。
制圧を広げていたパルチザンと手を組む為必要物資を供給するのだがその取り次ぎ役としてクラウチバックは向かったのだった。
通訳はパルチザンの男。内務大臣は語気を荒くして様々の要求を突きつけてくる。特に照明がつかないために電気技師を要求した。
そこへイタリアから大勢のユダヤ人らが列車で送られてきた。イタリアの強制収容所に入れられていた彼らがパルチザンによって解放されユーゴスラビアに連れてこられたのだった。
だが英語の話せる一人の女性がイタリアに戻して欲しい、とクラウチバックに願い出た。クラウチバックは引き受けたのだった。
女性はカニーイ夫人と言い、夫は腕のいい電気技師だった。彼は発電所の修理を任された。
クラウチバックは早速英軍にユダヤ人のイタリア送還を要求した。

やがてここにアメリカ軍がくることになる。豊富な物資を持つアメリカ軍がパルチザンに協力すれば情勢が動く、というわけだ。
アメリカ軍が共産主義に協力しないだろうというガイに新しい上官は「ファシズム打倒の為には何でもありだ」と言うのだった。

アメリカ軍の航空機が到着したかと思うや墜落。中からでてきたのは懐かしい准将であった。
ドイツの小要塞を前に准将は「アメリカ軍を喜ばすデモンストレーションだろ。あの時と同じだ。これが前線に出る最後のチャンスだ」と単独、小要塞に突っ込んでいく。
英軍、アメリカ軍、パルチザンが見守る中、アイパッチの准将は銃を片手に岩地を駆け上り小要塞に近づいた。だが無念、准将はその身に敵の銃弾を受け倒れながらも手榴弾を要塞に投げ込み爆破した。
一部始終を見ていたアメリカ軍は感動。しかも英軍の説明で准将はパルチザンということになりアメリカ兵はパルチザンの手を取って感激を示した。ガイは黙っていた。
このドラマのただ一人の勇者、とも言える准将の英雄的活躍のなんと無残で滑稽に見えてしまうことか。
この場面などは絶対に主人公が行う行為であり、クライマックスとなっていいはずなのだ。なのにガイは見てるだけ。
准将の英雄的行為の空しさがブラックな表現で示される。笑ってしまうのだ。

ほぼ任務は完了した。ガイは手紙を受け取った。ヴァージニアが投下された爆弾で亡くなったのだ。
ガイは空しい気持ちでカニーイ夫人と語り合う。カニーイ夫人は「世界中に戦争を望み、必要として戦っている人がいる。人を殺せば勇敢だと考えている」と言う。ガイは自分もそうだった、と告白する。

夫人が望みガイが軍に要求し続けたことでユダヤ人のイタリア帰還が叶う事になった。だがカニーイ夫妻はガイが好意で渡した雑誌などがアメリカのプロパガンダだという理由で反逆罪とみなされ投獄されたのだ。

ガイ・クラウチバックに残されたのはヴァージニアとトリマーの間の子供だけになった。
何も知らず遊んでいる小さな男の子にガイは「お父さんだよ」と話しかける。小さなその子をガイは抱き上げるのだった。

静かに悲しみと怒りと幸せを感じるドラマだった。常に戦う軍人であろうと願い、正しい道を歩んできたガイだが結局彼は何事も達成し得なかったのだ。
仲間を失い、約束を果せず、愛する人も亡くしてしまった。
彼の手元には愛するヴァージニアの子供(自分の子ではないが)だけがいる。彼は生来の生真面目さでその子供を育てていくのだろう。

クレタ島で英軍であるガイがドイツ兵に遭遇してしまう。ガイとっさに撃つことができない。
それでよかったんだと思う。

監督:ビル・アンダーソン 原作:イーブリン・ウォー 出演:ダニエル・クレイグ、ミーガン・ドッズ、リチャード・コイル、ロバート・パフ、アダム・ゴドリー
2001年イギリス




posted by フェイユイ at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ダニエル・クレイグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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