映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年06月10日

「ディパーテッド」マーティン・スコセッシ

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最も驚いたのはリメイクということなのに描かれていることが全く違う事であった。

これは同じストーリーと言う事では勿論なく同じ設定と言うより同じ企画を立ててみたが人種と宗教が違えば結果はこうも変わる、というようなものだろうか。
「インファナル・アフェア」=「無間道」はタイトルが仏教思想で永劫に続く苦しみを表している。主人公の結末もそのいつまでも続く苦悩の恐ろしさを描いていて秀逸である。
「ディパーテッド」のタイトルは「死者」ということで中味もそのままである。バン!と撃たれたらそれでおしまい。何もなし。永劫に続く苦しみはない代わり何もなし、である。実に明快。
永劫に続く苦悩は怖ろしいが死ぬとそれで終わり、というボストンマフィアの運命も悲しい。どちらがお好みかはそれぞれである。
コステロは富を築いたかもしれないが跡継ぎもいないようだし、ビリーもコリンも必死で頑張ったのに何も残っていない。
いや彼らには子供はいるのかもしれない。二人の共通の女性が彼らのどちらかの子供を宿している。一応、コリンの子供ということになってるがビリーの種かもしれない。子供を堕ろしたかどうかマドリンがはっきりと答えてないのだが、続編が作られるということらしいから多分その子が次の主人公、しかもコリンの子かビリーの子か、ということでまた悩まねばならない(ここ、私の創作ですから)

香港マフィアのサムは冒頭から仏を拝み、仏教思想に彩られた「インファナル」に比べ、ボストンマフィアのコステロはカソリック教会への冒涜も甚だしく、その態度は偽悪的すぎるほどだ。
多分に儀式的な重厚さがあり人間関係も濃厚だった「インファナル」に比べ「ディパーテッド」は宗教を侮蔑し人間関係も殺伐としている。ビリーとコリンが同じ女性と繋がりがあると言うのもロマンチックな要素を壊してしまう。
「ディパーテッド」的世界というのはマフィア(ヤクザ)に対してアジア人(日本人)がイメージする儀式・友情・男女の繋がりというものを破棄しているために同調しにくいにではないだろうか。ましてや「インファナルアフェア」を賛辞する者にとって「ディパーテッド」が同じように面白いということはないだろう。
私自身、これを観ていかにアジア人として感じているか再認識したという所である。チャップマン・トゥがいないのが寂しくてしょうがないし警視とマフィアボスとの友情も必要だったりするのである。

「ディパーテッド」を観て多くの「インファ」ファンが主人公たちのあっけない最期に憤慨してしまうのだが、それが「ディパーテッド」が「死者」というだけで「無間道」に苦しむ「インファナルアフェア」と違うのだからしょうがないのだ。死もファーストフードなのである。

というわけで非常に面白く鑑賞したのであった。
主人公・ビリーとコリンは元作と主・副が入れ替わっているわけだが、登場時間としてもそう元と違わぬ気もした。
何より私はディカプリオよりデイモン贔屓なのである。

ジャック・ニコルソンについては何の問題もなし。この何の風味もない殺伐たるボストンマフィア社会を牛耳るにはあのくらいの凶悪さが必要なんだろうし、老いてなお凄まじいあの形相は他の追随を許さぬものである。私は勿論エリック・ツァンの可愛いく怖い(カワコワ?)ボスぶりが大好きだが、舞台がアメリカなら顔もあーなるのである。性格も破綻するのである。

任侠ものって昔はさ、結構義理人情、愛情友情を謳ってたのに殺伐となってしまったね。
これがアカデミー賞作品賞/監督賞など取ったのもみんなえーだったけど、あれはあそこでコリンが死んだのがよかったんだね。正義の鉄槌です。やっぱ悪を殺したのが受けたんでしょう。
苦しませるなんていうんじゃなく「殺す」これが信条であります。

監督:マーティン・スコセッシ 
出演:レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォルバーグ、マーティン・シーン、レイ・ウィンストン、ヴェラ・ファーミガ、アレック・ボールドウィン
2006年アメリカ

最期に窓の外の手すりを走っていくネズミの演出って何?
「アメリカはネズミの国だ」って台詞、ディズニーランドのことかな、と思いました。


ラベル:黒社会 警察
posted by フェイユイ at 22:42| Comment(10) | TrackBack(1) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
予告観た限りでは、インファでの『ここはハズしちゃダメでしょ』な場面は
一応あったようなのでどうなんだろう!?
とは思ってましたが…
DVD出たらインファもまた借りて並びで観てみます。
Posted by may at 2007年06月12日 14:19
たしか2月頃吉祥寺の映画館で観たのでした。終映後、とおりすがりの女の子連れが「・・ぁぁ後味の悪い映画だった〜」と一言。私も同感^^;とその時思ったのを思い出しました。
まぁ、マット映画だから観にいったわけです。で、『インファナル・アフェア』も観ていませんし純粋にというか無知にスコセッシ作品を観た、と。以前スコセッシの『アビエイター』も観たけど面白くなかったナァ・・何なんだろううまく言えないのですが、彼の作品には温かみがない?・・面白みが無い、とでもいうべきか。スコセッシの良さは私には感じられないのですよ。。
今回の『ディパーテッド』に関してもとにかく「殺伐」。フェイユイさんの解説でその殺伐の中身がよく理解できました。
マットは、うまくあの役をこなしていたとは思う。感情移入はしすぎずしかし確実な人物表現。でもウ〜ン私としてはつい感情の伴った“カワイイ=人間くさい”マットを期待しちゃう(自分の好きなマットは前にも言ったライアン二等兵みたいに人間の良さを凝縮したようなマットが好きなんで☆)のに対しスコセッシでのそれは期待出来ない。しょうがないです。何の感情も無い(肝心のところで感情が潰されてしまっている男〜そういう風に育った)コリン?なのですものね。でももっとコリンなりの内面の苦悩が描かれると思ってたのですよ。。でも何も無いし(笑)・・苦渋はひたすらビリーが背負っちゃってましたね、派手に〜^^;つまりレオの為の映画なんですよ〜(不満;)そして敢えて云うならレオだって果たしてこのビリーの役で人々に感動を与えられたのか〜?といいたくなります。まぁレオ本人がスコセッシを気に入っているのですから、こちとら何も云う気にならないわけですが^^;
初めて観るスクリーン上のマットとレオの競演。・・私は顔立ち、雰囲気、似てると思いました。やはり二人は因縁のようなものがあいだにあるような気が、私は勝手にしています。。。^^
Posted by フラン at 2007年06月12日 14:51
>mayさんへ

これはDVD鑑賞でありますよー。
確かにできるなら続けて観てみたほうがより面白いかも!
ただし「インファ」3本分のリメイクなのでかなり体力気力要りますねー(笑)
でもやはり3本観たほうがいいのかも、です。
私はやろうかと思ってくじけました^^;
Posted by フェイユイ at 2007年06月12日 16:51
フランさんが「インファ」観てないということなので言っていいのかどうか、ですが、元作ではマット役こそがフランさんのいう内面の苦悩が描かれているのですよー。スコセッシのリメイクがそのままだったらマットが苦しむ姿が見れたわけですが、なぜかすっぱりカットされちゃってレオのみにその苦悩を表現させてるんですね。でも私としては「インファ」でのレオの役(トニー・レオン)の方が素晴らしかった、と思ってるんですけどね。リメイク、と言っても全然違うと思いました。
とにかくスコセッシはレオが好きなわけなんですねー。私にはその愛情表現がよく判らなかったんですが。好きなのにあんな役させるなんて。ビリーって感動的なのかな?

マットとレオが似てる、というのはこの映画では感じなかったんですねー。
でも他ならぬフランさんが言われる事、何かあるのかもしれませんねー。今私には判らなくてもなるほど!と思う時があるかもしれないし、覚えておきます!
Posted by フェイユイ at 2007年06月12日 20:57
取りあえずこちらだけ観ました。
ディカプリオが右のオデコが広い人に罵られてるとこでもう比べるのは諦めました…
潜入してても取り込まれない精神力の強い男だから選ばれたはずなのに
単に育ちが悪いからどうにでもなるからって理由なんてもうガックリ!!orz
後の感想も丸っきり同じでしたね…あと何と言ってもドキドキのスピード感がない!!

それとリメイクを除外して観ても、主役2人は可哀想な位影が薄かった。
ジャック・ニコルソンのシブさに全部持っていかれた感じがしました。

次はインファ3巻通しで観直しです。
Posted by may at 2007年07月08日 17:15
あはは、全く波長が合わなかったみたいですねー。
私は一応「デパ」は「デパ」のよさがあるとは思うんですが。
でも「インファ」が好きな人が同じように「デパ」を好きになることは絶対無理ですよね。
私も結局は「インファ」好きですから、あの香港のあの雰囲気、無間道という恐ろしさ、そういうものに惹き込まれた後で、あのあっさり感はあまりにも物足りないのです!
Posted by フェイユイ at 2007年07月08日 22:33
度々すみません。
ようやくインファも観まして、自分のところにも記事を書こうと思うんですが
殆どフェイユイさんと感想同じなので記事リンクさせて頂こうかと思います…
よろしいでしょうか!?
最近殆どネットから離れ気味でいつになるか判りませんが…(-_-;)
Posted by may at 2007年07月18日 12:39
是非是非〜!!
その時はどうぞリンクしてくださいな!!
お待ちしております!!!
Posted by フェイユイ at 2007年07月18日 20:05
しょうもない記事ですがようやく書きました。TBさせて頂きます…<(_ _)>
Posted by may at 2007年07月21日 17:59
ありがとうございます。拝読させていただきました。

いつもアメリカ映画が他の国の映画をリメイクすると悪口を言いたくなってしまうのですが、その実、心の中では「どうなったんだ?」と楽しみではあるんですよね(笑)
絶対と言っていいほど元のがいいんですが、これは当たり前ですよねー。どの物語もその国の情緒や人々の精神を映す事で成り立ってるのを無理矢理他国に移し変えてはしまえないってことですよね。
「インファ」と「デパ」は特にその違いが顕著だった、ということでしょうねー。
Posted by フェイユイ at 2007年07月21日 20:26
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Excerpt: 実は先日まず【DEPARTED】をレンタルで借りて観まして…ディパーテッド公式 ディパーテッド - goo 映画『ディパーテッド』 特集 関連情報 - インファナル・アフェア - - goo 映画具体..
Weblog: 對不起Baby、のんびり隙間blog
Tracked: 2007-07-21 18:00
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