映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年08月01日

「恐るべき子供たち Les Enfants Terribles」ジャン=ピエール・メルヴィル

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「恐るべき子供たち」は私にとってはまず萩尾望都のマンガであり、次に画家・東郷青児が訳したジャン・コクトーの小説であり、最近になって映画の存在を知った。
そのためにどうしてもイメージが映画だけというわけにはいかず、それら3つが交錯した形で思い起こされてしまう。
映画監督はジャン・メルヴィルだがコクトー自身がかなりの入れ込みようで製作に参加しているようである。
また映画を観れば萩尾望都のマンガは多分この映画からの影響を多大に受けていると感じられるのでますますイメージは混沌としていく。
今から書くのはそれらが混じりあった感想になってしまう。

映画を観て一番感じたのは今まで日本語で読んでいただけの言葉をフランス語で聞くことの驚きだった。当たり前のことだが主人公達が話すフランス語の響きに酔ってしまったようである。
映画は1948年製作だが演出もイマジネーションもまったく違和感を感じない。
むしろ一つの部屋に気の合う少年少女たちがなんという意味もなく身を置いてそれぞれが自分の世界に入り込んでいる情景は今現在の子供たちのようでもある。

主人公エリザベートと弟のポールは両親を失うが次々と奇跡が訪れる。姉と弟はケンカばかりしておいるが強い繋がりがあり離れられない。ジェラールはエリザベートにアガートはポールに憧れながらも打ち明けきれないまま、4人は不思議な均衡を保ちながら子供の時間を過ごしている。

ポールにはずっと思い続けている一つのイメージがある。同級生のダルジュロスに彼はずっと恋焦がれていたのだ。少年らしい純真さで。
病気で学校に行けなくなったポールと素行の悪さで退学になったダルジュロスは会うこともなくなってしまうが、後に姉エリザベートの友人となったアガートの容姿があまりにもダルジュロスに似ていてポールは知らないうちに彼女を好きになってしまう。

映画を観れば萩尾望都のマンガがその影響を受けて描かれたのは明白だが大きく違うことの一つはダルジュロスの造形だろう。他の3人が映画の登場人物と重なるイメージで描かれているのにダルジュロス=アガートは随分違っている。萩尾氏としては彼(彼女)には不満だったのかもしれない。その二つの役を一人の女優が演じているがやや可愛すぎて大人っぽいポールが憧れる対象としては弱く感じられるからだろうか。少年の時も少女の時も非常に愛らしい印象なのだがマンガでみた強烈なダルジュロスを思い出すと萩尾氏の思い入れがそこに表現されている気がする。

逆に萩尾氏のマンガでは随分短くなってしまっている部分がある(と言っても印象的ではあるのだが)
ラスト近く。心の中だけで互いに思い合っていたポールとアガートは
エリザベートの策略にかかってしまう。エリザベートはアガートとジェラールが結婚するよう仕向けたのだ。
傷ついたポールはダルジュロスからもらった毒薬を飲み自殺しようと図る。
その時、そのことをまだ知らないはずのエリザベートが夢を見る。撞球台の上に横たわるポールの夢だ。
この場面は酷く幻想的なのだが萩尾氏のマンガでは正味1ページほどで簡単に描かれている。それはそれで心に残ってはいたが映画ではまた違った奇妙な雰囲気である。小説でも1ページにしか過ぎないがまた違う感覚に襲われる。同じような出来事を描いているのに3つとも違ったイメージである。

ラストシーン。映画と小説ではエリザベートが倒れるところで終わっているが、マンガではポールがダルジュロスを思う場面である。
やはりここでもダルジュロスのイメージが強く感じられる。冒頭がポールとダルジュロスが参加する学生達の雪合戦から始まり最後の場面も雪合戦をするポールとダルジュロスなのである。登場場面は少ないダルジュロスなのだがポールの中で彼はいつも憧れの存在としてい続けている。ポールがアガートに恋するのはその変形にしか過ぎないのであろうが。エリザベートはポールが持つイメージに嫉妬している。彼の心からそれを追い出すことはできないので。

物語としては単純なほどのこの作品なのだがどうしてこんなに惹かれてしまうのだろう。
初めてこの物語を知った時には同じく少女だった自分も年をとり子供たちではなくなった。
だがエリザベートとポールの部屋でお菓子や飲み物を用意して本を読み漁ったり夢幻に出かけたりすることには憧れる。
そんな時はいつまでも変わらない子供になっているのではないだろうか。

監督・脚本・製作:ジャン=ピエール・メルヴィル 
原作・脚本・ナレーション:ジャン・コクトー 撮影:アンリ・ドカエ 出演:ニコール・ステファーヌ、エドアール・デルミ、ルネ・コジマ、ジャック・ベルナール
1948年フランス


posted by フェイユイ at 23:13| Comment(0) | TrackBack(1) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt:  コクトー原作の小説も有名だが脚本・ナレーションだけで,なぜ自分で映画化せずにメ
Weblog: EURISKO2005
Tracked: 2009-09-09 21:24
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