映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2007年08月22日

「キング 罪の王 」ジェームズ・マーシュ

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酷く気持ちの悪い映画だった。とても面白かった、などと言うつもりはない。

勿論、この映画はそれが目的なのだからそれでいいのだろう。

主人公はもとより父親牧師の言動は奇妙である。再三の買春でできた子供に対して最初は脅迫し、後ではいきなり息子として受け入れる。しかも罪の子と呼びながら。
いなくなった息子を神にゆだねると言ってあきらめてしまう。泣き出す母親の方がまともな感情のはずだ。妻の気持ちを理解せずにエルヴィスを家に迎えるのも変である。
聖職者でありながら鹿狩りに行くのも銃に興味を持っているのも異常ではないのか。

信仰深いはずの彼の家族もとてもそうとは思えないし、愛情も薄い気がする。
兄が殺されたというのに動揺しない妹が不気味である。

そういったものを映し出しながら、愛を求めて狂気の行動をとる主人公と対峙させていく。
どちらも怖ろしいとしか言えない。

ラストは当然こうなるべきものであったと思う。

惨たらしい内容なのにガエルの美しい容貌やウィリアム・ハートの存在感で見せられてしまうのも怖ろしい。

またここでもカインとアベルがモチーフとなっているということで兄弟殺しと父親への愛の渇望が描かれている。
それに妹強姦も加算されてよりおぞましさが増えているわけだ。

懺悔をすれば許されるのか、という根本的な問いかけで物語は幕を閉じる。

罪は誰にあるのか。

心に残ってしまう映画には違いない。

もう一つ気になるのは主人公がメキシコ人であり、演じたのがメキシコ人であるガエルということだ。
この映画の視点が父親側にあったなら理解不能なメキシコ人の犯罪ということになる。
が、視点はメキシコ人のガエルの側にある。アメリカ人である父親の元に行くのは不可能に近い。だからこそエルヴィスはアメリカの軍隊に入ったのだろう。
父親が最初慕ってきた息子を撥ね付けるのも得体の知れないメキシコ人だからだろうし、父親の娘(つまり自分の妹)を抱いてしまうのもメキシコ人だから、と取れなくもない。
他の映画でもアメリカ人のメキシコ人への差別的な目線は感じるわけで、ガエルのように性的魅力のあるメキシコ人が突如出現する恐怖というのはアメリカ人としてあるのかもしれない。
などと考えるとますます嫌な気持ちになる。

それにしてもガエル。やはり魅入ってしまう。さほど好きというわけではないが目を話せない。あの眼差し。気になってしまう。

監督:ジェームズ・マーシュ 出演:ガエル・ガルシア・ベルナル ウィリアム・ハート ペル・ジェームス ローラ・ハーリング ポール・ダノ
2005年アメリカ



ラベル:家族 宗教
posted by フェイユイ at 00:03| Comment(4) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めてガエル君の映画を観ました。
私としてはこの映画、気持ちは悪くはなかったです。ただひたすらの“不毛感”とでもいいますか、哀しい。。全く“愛”という感情を知らない人間・・そんな人がこの世に存在した時に起こり得る犯罪の形?
『太陽がいっぱい』のトムを彷彿としました。
実際の世の中の事件もこの映画の主人公のような心象風景の犯罪者が存在するのだろうな・・と考えさせられました。とにかく主人公、可哀想で可哀想で・・弟が乗り込んできた時夕食を食べてましたがパンに何か挟んで切ったパン、一人でモーテルで食べてて。(T_T)アアこの子はいつもこうして一人で食べてきててそれを寂しいとも感じていなかったのだろうな・・もしかして復讐しながらも、味わったことのない家庭らしきものの味を初めて味わい、幸せも感じていたのでは・・と。
ガエルが愛くるしい&罪悪感がない(それが恐ろしい)ので、哀しさがいや増しました。
弟を沈めた沼の畔でソファや家財道具と一緒にくつろぐ彼・・彼にとってあの場所が一番に心安らぐ自然な場所であったのでしょう。正に、魔界の王。。
Posted by フラン at 2007年10月13日 20:34
フランさんのコメントを読んでいたらまったくその通りで私が勘違いしていたんじゃないか?と思ってしまいました(笑)
とても素晴らしい感想ですね!

フランさんのように感じていたら凄くいい映画と思えたのにどういうものかこれを観た時は気持ち悪かったんですね。
その辺をきちっと説明できてませんね、私の文章は。
買春とか復讐のためのセックスというものに嫌悪感があるのかもしれません(そういうのばっか観てるようなのに、どーゆーこっちゃ)

今思い返してフランさんの言葉と重ねてみてもう一度観てみたくなりました(笑)
トムを彷彿として観てみるといいかもしれません^^;

ところでガエルの映画は初めてなのですか?
うーむ、それはこれから楽しみですね。よかったらどんどん観て下さい。私の記事は殆ど「藍空」にありますが、いい作品がとにかく多いです。お勧めが多すぎなんですが「モーターサイクル・ダイアリーズ」「ブエノスアイレスの夜」「バッド・エデュケーション」「アモーレスペロス」「天国の口、終わりの楽園」ですね(笑)この前見た「恋愛睡眠のすすめ」もよかったです。

まったく、フランさんの言葉ではっとしました。目が覚めたような(笑)
これでまた一つ宿題ができました。楽しい宿題ですが(^^ゞありがとう!!
Posted by フェイユイ at 2007年10月14日 00:03
「藍空」でお見かけしていたガエル君出演映画の数々にやっと最近着手した状況です。興味深い作品がたくさんありますね!鑑賞したらまたフェイユイさんの評を読むのが楽しみです。^^
この作品を受付けなかったという感覚も、きっとフェイユイさんの中に意味があるんでしょうね。私は『太陽がいっぱい』は何回観たかわからない位好きで(傑作と思っている)すが、それにしてもトムの“殺人の動機”が・・無為感とか不毛感?。。ドロン=トムの瞳の中にとてつもない孤独感を感じました。それだからの殺人・・同じものが『キング』のガエルの瞳にも見えたのです。
ガエル君は役者として映画ごとに違った表情をみせてくれるのでしょうね!^^

Posted by フラン at 2007年10月14日 11:15
そうそう。後で思ったのですがフランさんはこれがガエルの初作品、なのでまっさらで観てるんですよね。
私はどうしてもメキシコなど中南米監督のガエルのイメージがあるのでアメリカ作品はなじめなかったのかもしれません。
それにしてもやはりこれは再観してみたくなりました。感想が180度変わっても笑わないでくださいね(笑)
表面だけ見ててガエルの目を見てなかったのかもしれません。
Posted by フェイユイ at 2007年10月14日 13:02
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