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2007年08月24日

「ふたりの人魚」ロウ・イエ

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これもまた何度も観返している映画のひとつ。そしてこれも昨日観た「悪い男」と同じように純愛ものだが、こちらの“男”の一途さはストレートでまた悲しい。

ムーダンとメイメイという美しい少女を巡ってマーダー、そして“僕”が絡まりあって構成されていく。
手持ちのカメラ映像と相まって時間、場面、人間達が交差していくのでまるで蘇州河に浮かぶ船に乗っているかのように酔ってしまいそうである。
私ときたらこの映画が好きで好きでしょうがない。なんだか不思議な魔力にとりつかれたかのように感じるのだが、それは冒頭の蘇州河の場面からすでに始まる。

新しい高層ビルを背景にして、古びた建物が取り壊されていく。そしてその前にはもっと貧しい生活を送る人々の家々が立ち並ぶ。蘇州河に浮かぶ船で暮らす人もいる。街を横切る蘇州河にはそれらの人々から投げ出される塵が浮かびまたは沈み川はどんよりと澱んでいる。心を掻き毟るような音楽が河の上を滑る船と共に流れていく。

「蘇州河」というタイトルが現れる瞬間も好きだ。

ムーダンとメイメイを演じた周迅の魅力なしにこの映画はあり得ないだろう。
まだ幼いといえる少女ムーダンが自分の送り迎えをすることになったマーダーから靴の紐を結んでもらった時、その時の彼女の見上げる目がマーダーを好きになった瞬間だったと知らせる。
そしてメイメイの周迅。人魚になるために髪を結いかつらをつけ衣装を着る一連の動きに見入ってしまう。
そしてマーダーを抱きしめた時の彼女の顔が。それまでの幼い表情と違って突然不思議な色香を感じさせる。
笑ってガムを噛みながら街を歩く場面も橋から飛び降りるという彼女もマーダーにもたれかかり夕日を眺める時もなんという“魔”を持つ女性なんだろうか。

ムーダンを失ってマーダーは変になってしまう。
ひたすら愛した少女を探し続けるのだ。
そして出会ったのがバーで人魚の姿になって水槽で泳ぐという仕事をしているメイメイだった。

“僕”とメイメイは恋人同士なのだが狂ったようにムーダンを捜すマーダーによってその関係が崩れてしまう。
そしてマーダーは旅立ち、再びムーダンの面影に出会う。

抜け道のない迷路であり、繰り返される時間である。奇妙な恋物語であるがそれだけがこの映画の面白さではない。
私が導かれたのは、ごみごみとした上海の街並み、そこで生活する人々の光景、バイクで物を運ぶ事が生業のマーダーとビデオで物を写し撮る事を仕事にしている“僕”
激しく降る雨、夜の闇。マーダーとムーダンがバーで黙ったままジュースを飲みながらTVかなんか観てる様子。
取り壊されていく古い建造物。盗んできた大型のモーターサイクル。
そういった色々な物が幻想の世界のもののようで心を惹き付けてしまうのである。

愛し合った恋人達の死を飲み込んでも河の流れは止まることはなく海へと向かう。また繰り返される物語を映しながら。

監督:ロウ・イエ 出演:ジョウ・シュン ジア・ホンシュン ヤオ・アンリェン ナイ・アン
2000年中国/ドイツ


posted by フェイユイ at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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